第四話「女神さまと新造ダンジョン」
あれー、てっきり、そこの三柱の方々だと思ったのに、なんでアルテイシア様の声がするんですかね?
(久しぶりにお話できるのに、随分ねぇ)
そりゃアレに決まってるじゃない。あの称号、なんですかー!今世は恋愛も頑張ろうって決めたとたんに、あれはないですよー。
(所謂、強スキルに付き物でしょ、デメリット。それに今の所困って無いでしょう?)
そりゃ、十歳ですから恋愛なんてまだまだだ‥‥‥いや、マテ。姪っ子の穂花ちゃん、幼稚園で彼氏がーとか言ってなかったか?もしかして、既に称号の効果でニアミスしてる筈のイケメンに出会えてない可能性が!
(そこはまだ発動してなさそうだから大丈夫?まあ、恋愛に関してはルナティックモードだと思って頑張ればいいんじゃないカナ?)
あー、もういいです。恋愛経験値が底辺な私では開幕の弾幕でピチュりそうな難易度調整しないで下さい。もうしばらくは恋愛禁止でいいです。
(ふふーん、そんな事言っていていいのかな?今回の指令にイケメンが関わっていないと誰か言ったかね?)
なん‥‥だと‥‥!
(そろそろあまり時間もないので簡潔に。今回の貴女の任務は、ダンジョンの攻略。町の北に新しく出来る可能性があるの。時期は、そうね‥‥半年以内。今から準備しておく事をおすすめするわ)
つまり、ダンジョンでイケメンに出会いを求めちゃう系?
マジかー、ちょっとテンション上がっちゃう?
なんかミノさんだって倒しちゃうよ?
(じゃ、そういう事でヨロシク~♪)
こうして神聖な神との対話である『洗礼の儀』は終わった。
さて、ダンジョンか。
私は、儀式を終えると、何も無かったような顔で、見物に来た人々にお礼を言いながら帰路に着いた。
なんか軽い感じで終わったが、『新しくダンジョンが出来る』というのは、大事の筈。
ダンジョンというとRPGではお馴染みだが、リアル世界では利権が絡む話になってくるからだ。詳しい話を聞くのを、スッカリ忘れていたが、難易度や出現する魔物によって価値が変わってくる。
クロフォード領からの輸出でも価値がある素材が入手出来るなら、ダンジョン目当てに人が集まり、町も賑わうと思うけど、そこまで価値が無ければ、溢れた魔物によって被害が出る。
とりあえず、猶予はある。半年の間にいくつかの想定で準備しないとだ。先ずは、後で父と相談かな?
「おかえりなさい、あなた。カトレアも無事儀式は終わったみたいね」
「ただいま、ダリヤ」
家に戻ると、入口で母が待っていてくれた。家の前に集まってくれた人も居たので挨拶に出ていたようだ。
父と母は寄り添って軽いスキンシップ。
むー、両親の欧米的なシーンは、いまだに慣れないね。
それから、食堂に。すっかり夕食の準備は出来ていて、テーブルいっぱいに料理が並んでいた。
私の希望通りにトンカツと唐揚げ、兄が釣ってきた鱒っぽい魚と茸のバター蒸し‥‥かな?
それから、トンカツに欠かせないキャベツ‥‥っぽい千切りと、ポテトサラダなど。
うちの食卓も豪華になったねぇ。
改めて誕生日を祝ってもらい、家族──勿論マリアンさんも含む──で楽しい夜を過ごした。
生前はずっと一人だったけど、こうして皆で囲む食卓は良いものだと思った。
「ダンジョン‥‥それが近くに産まれるというのか‥‥」
片付けなどが終わった後、私が受けた啓示を父に相談した。危険性にもよるけど、管理が必要になると人手もいるし、町の設備投資とかも必要かもしれない。
「はい、半年以内には発見されると」
「‥‥まずは調査が必要だね。ギルドに冒険者を集めてもらい、場所の特定、規模を調べないといけない。解った、町の方は任せなさい。カトレアは強いけれど、ダンジョンは危険だ。充分準備をしておくんだよ」
「はい、お願いします」
私が受けたクエストで町の事は丸投げになってしまうのは申し訳ないが、まだ子供の私に出来る事はない。
私は私の準備をしておこう。
ダンジョンで必要な物と言えば?
明りやトラップ対策など幾つか考えられるけど、一番の問題は仲間の存在かなぁ。
日帰りできればいいんだけど、安全を確保出来ない中で休息を取るのにソロはきつい。
お肉目的の狩りは、適当な所で帰ってくればいいけど、数日とかになるとなー。
都合よく便利なオートマッピングとか、結界魔法みたいなスキルとか生えてくれるといいんだけど。
あと転移系とか。あ、でも失敗して「石の中にいる!」とかなったら困るかー。
どうしたものか。
とりあえず、そこら辺は後まわしにして、翌日からは町の北側を回り始めた。
普段回らない辺りでスキル練習と食材探しね。
『ダンジョンは半年以内には発見される』と言っていたけど、既にできちゃってるのか、これからなのかも分からないし、せめて兆候でも発見出来ればいいんだけど。
町出てしばらくは草原が広がるなだらかな丘陵が続く。この辺りに出るのはホーンラビットや、センザンコウみたいなアーマーラットなど。
お肉の確保にはいいけど、こういうのは、他の方が狩ってくれるだろう。私にとっては既に雑魚なのでスルーして、さらに北側へ。
町から離れた所で《竜魔法》で翼を生やして、山の前に広がる森まで一っ飛びだ。
「気分は、ブーストポッド作動、エンジン出力限界までカウントスタート!って感じかなー」
これ便利だけど、まだ安定して使えないんだよねー。高く飛ぶと危ないし、魔力消費も馬鹿に出来ないし。
「さて、今日の狩場はこの辺りかなー」
森の手前の大きな岩がゴロゴロしている場所に
降りる。見れば、大蜥蜴みたいな魔物がそこかしこで日向ぼっこをしていた。
さあ、一狩りしようぜ!
お読み下さりありがとうございますm(_ _)m