第四十二話「決戦!お疲れ様慰労会。」
夕方になって、復旧作業を終えた人が宿に戻って来た。各村も一段落といった様子で、あと数日もしないうちにきの救援部隊も解散になる見通しだ。
一番大きな被害は、やはり川沿いにあった村で、一部の家屋は流され、多くが浸水していたようだ。こちらは仮の堤防などが作られたが、村人が戻るのは先になりそうだった。
全てが元通りにはならないけど、あとはグリム領の問題で、私達が手を出す範囲ではないだろう。
「皆集まって来たね。そろそろ料理出そうか」
「はい」
ご主人が酒場の様子を見て準備に入る。私は《空間収納》にしまってある料理を出して、最後の仕上げが必要無いものからテーブルに運んだ。
店内は椅子を片付け、テーブルだけを残し立食パーティー。人が多いので、大皿の料理を好きに食べて頂く形だ。
「おー、料理いっぱい!凄いね」
「運ぶのは手伝いますわ」
「ありがとー。そっちのから、適当にテーブルに出して行ってー」
厨房に顔を出したシャルちゃんとケイトリンさん、それから宿の仕事を終えたご主人の奥さんと娘さんも参加して、メインとデザート類以外を出してしまう。
そうこうしていると、酒場に父と兄、ダグラスさんが姿を現す。向こうの会議も終わったかな?
うわー、すっごい久しぶりだなぁ。父は相変わらずな気がするけど、兄はちょっと逞しくなった?ラテ川の主とまだ戦っているのだろうか。
主釣りとか海川さんとかのうちはいいけど、中にはモササウルスとかメガロドンとか釣る方向には行かないで欲しいかな。
二人は部外者みたいな物なので隅の方で小さくなっている。いや、そこまで存在感を無くさなくていいから。クロフォード領だって、頑張った筈だ。
後でちゃんと聞いておこう。
‥‥とりあえず、皆集まったかな。
最後に、木のコップとグリムのワインを配って、準備は完了だ。
「皆さん、急に決めちゃいましたけど、お集まりありがとうございます!」
私は前に出て、集まった皆を見渡した。
たくさんの料理を前に、シャルちゃん、ケイトリンさん、ガットさん、ミハエルさんは待ちきれ無さそう。
オスカーさん、ダグラスさん、パウロ氏は───影薄かったなあ。《水魔法》も持っていたせいもあって、私とは別の担当だったからね‥‥って、隣の女冒険者さんは何!?なんか良い雰囲気じゃないですか。いつの間に‥‥‥。リア充かー、リア充の仲間入りなのか~~~。
‥‥‥それから冒険者さん達。
「ノルディンからグリムまで大変な作業が続きましたが、皆が頑張って、無事グリムに救援物資を届ける事ができました。私達だけでなく、ノルディンに残って物資の手配をしてくれた方、領軍の兵士さん達も含め、全員が力を合わせたから、グリムの復旧作業もなんとか終わりそうです」
本当は兵士さん達も呼びたいんだけど、今はノルディン方面の街道整備でグリムに居ないそうです。
「私達だけ褒章を頂いて申し訳ないんですが」
「二人共頑張ってたぞー!」
「貰っとけ、貰っとけ!」
そんな言葉に、ホッとするのと、照れるのが半々くらい。
「あまり長くなっては料理も冷めてしまいますね。皆、お疲れ様でした!今夜は楽しんで下さい!」
「「「「乾杯!!!」」」
コップを掲げて、お疲れ様会のはじまりです。
皆、楽しんでくれたらいいな。
私はお酒は控えて────図らずしもイザークさんに醜態を晒したグリムのワインだし───葡萄のジュースだけど、飲んで食べて、お別れ前の一時を惜しむ。
「カトレア、お疲れ様。楽しませてもらってるよ」
「カトレアが捕って来てくれた肉もあと少しでなー、久しぶりに、ご馳走だ」
メインの前に少し時間があるので、父と兄に挨拶。
兄さんも魚ばかりでなく、ホーンラビットくらい狩ればいいと思いますよ?
ここで詳しくクロフォード側の事を聞けた。
豪雨の影響は、あちら側は少なくて、救援依頼があった翌日には、物資を集めグリムに向かったようです。勿論、クロフォードでは大量にとは言えなく量だったけれど、私達が到着するまでの数日を支えてくれていた訳だ。
物資を届けた後は万一に備え、クロフォード領で避難民の受入れ準備に追われていたようだ。幸い、天候も回復して、そこまでの事態にならなかったが。
建てていた仮設宿舎は、領内の開発でも使えるので、引き続き建設中。
「今日の会議はどうだったのですか?」
「ああ、グリム側で街道の整備と、商店に宿を何軒か出して貰える事になったよ。あちらはワインを売りたいだろうしね」
クロフォード領が賑わえば、当然道中のグリムにも人は訪れるし、こちらでお酒の販売も見込める。
とりあえず宿などはお任せして、うちは他の事業を進める訳だ。
「そろそろ頃合いかな」
お疲れ様会は盛り上がっているようだが、料理も少なくなって来ているし、ついにメインディッシュの出番ですね!
「ご主人ー、鉄皿はいけますか?」
「ああ準備万端だ。そろそろ行こうか」
厨房に戻って、ステーキ用の鉄皿を焼いていてくれたご主人に確認。
私は《空間収納》から焼いたお肉を出して切っていく。それをご主人が鉄皿に盛り付けると、じゅうっと食慾をそそる音と薫りが広がった。
奥さんと娘さん運んで貰う。
さあ、我が軍の決戦兵器よ、食いしん坊達を蹂躙するのだ!!!
「なんだ、これは!!」
「うーまーいーぞー!」
「こんな凄いの、初めてです~~」
厨房の外から聞こえる喚声に、私とご主人は、やってやったぜと笑顔になった。
さあ、残りをどんどんきっちゃうぞー!
お読み下さりありがとうございますm(_ _)m