第三十三話「お好み焼きは、お好みで。」
王都編は終わります。
残りの二日間は、慌ただしくも充実な日を過ごした。朝からは、日帰り出来る討伐依頼を受けて狩り。帰って来て、頼んでおいた胸当てを受け取りに行ったり、お土産を探しながら観光がてら町を散策と美味しいお店を探したり。また食材探しをしてみたり。
あと、すっかり忘れていたシャルちゃんの分の馬車の予約。お客さんは私以外、一人だけだったようで、何とかなった。危ない危ない。
資金も結構稼げたと思う。共通費(主に食材費)として報酬の一割は別に管理する事にしたが、一人辺り金貨十枚くらいは貯金になったかな?
三ヶ月分と考えると、そう多い額ではないけど、依頼も受けるし大丈夫だよね?ユースは《収納》持ちだから狩り出来れば素材分も稼げるし。
とりあえず、クロフォードまでの馬車で金貨二枚はかかるので、ちゃんと残しておくよーに!
最後の夜は、しばらくお別れになるので皆で郊外に。再びユースの家から鉄板をお借りして、今日はお好み焼きパーティーだ!
関西とか広島風とかこだわりのある人もいるだろうけど、ここは異世界、小麦粉とお好きな具材で焼けばオッケーでしょう。
定番の豚バラ、キャベツ、長ネギ、玉葱、イカにタコ、海老、チーズ、キムチ、蟹とベーコン、焼きそば、うどん、明太子、思い付くまま《空間収納》から出していく。トッピング用の鰹節に青海苔にー。
生地も小麦粉と卵に、長芋を入れた物、お豆腐でヘルシーな物、と幾つか作って、お好きにどーぞ。
「うちの領地では、出汁をかけて食べたりもしますわね」
「ふーん、明石焼きみたいな感じかなぁ‥‥‥って、ああ、何でもアリよね!」
シャルちゃんの意見に某メーカーのお好み焼きソースっぽい甘めのソース以外にも色々と作ろう。
うん、お好み焼きに拘らず、鉄板で焼く粉ものなら何でも良いよねー。ご所望の醤油出汁と味醂でそれっぽいタレを。チヂミ風に、醤油とラー油と砂糖のタレ。生地もちょっと違うし、またボールを増やす。
「トマトにアボカドにチーズー」
「それはピザっぽくてアリだな」
「ご飯と納豆とかも美味しいよ!」
「これが炭水化物と炭水化物の、夢のコラボレーションかー」
「ああ、具が多くてまとまらないですわ~」
適当に入れるから当たり外れがあったりと、色々カオスになったけど、ワイワイと賑やかで。こういうのは楽しいよね。
最後はデザートにクレープを作りました。
結成して数日だけど、ちゃんとPTになれたかな。
「オスカーさん、お久しぶりです」
「はい、おはようございます。今回もよろしくお願いしますね。無事お仲間も見つかった見たいですね」
翌朝、中央広場で馬車を待っていると、オスカーさんがやって来た。馬車を引く馬も前回の黒毛と白色毛の子みたいで、安心感がある。
私の隣のシャルちゃんと、朝早くからアーク達三人も見送りに来てくれている。
「じゃあ、皆、頑張ってね!」
「わたくしだって、負けませんわよ。先に鉄ランクになって待ってますわ」
「ああ、俺たちだって!」
馬車に乗り込み、別れの挨拶。
しばらくお別れだけど、ダンジョンが出来る三ヶ月後までは修業パートだ。
「三ヶ月後に!!」
「クロフォード領で!!」
手を振る彼等が小さくなっていく。
私達も大きく手を振り替えした。
もっと強くなって会おう!3D2Yみたいな感じ?
「いやぁ、皆、若いね」
「あははは、お恥ずかしいかぎりです」
そう言ったのは、お客さん扱いの商業ギルドの職員さん。五十代くらいの男性で、結構偉い人かも?恰幅の良い温和そうなおじさまだ。
「年を取るとなかなか素直に別れを惜しんだり出来ないもんだ」
「冒険者してると、余計にかもな」
こちらは護衛のお二人。二人共三十代くらいで、マッチョ系の重戦士タイプかな。一人は黒色の角刈り頭で斧使い、もう一人は長い金髪を後で無造作に縛った大剣使いだ。
「カトレア・クロフォードです。道中よろしくお願いします」
「シャルロッティ・エストですわ」
「私はダグラスです。カトレアさんの事はオスカーから聞いているよ。道中楽しみにしてますよ」
「俺はガット、こっちはミハエルだ。ランクは銀
。嬢ちゃん達の事は、冒険者ギルドでも聞いてるぜ。あの〈紅蓮花〉に誘われたってな」
職員さんがダグラスさん、斧使いがガットさん、大剣使いがミハエルさん、ね。クロフォード出てから、人の名前覚えるのが多くなったなー。
「いえ、恐縮です‥‥‥」
実力というより、あれは胃袋を掴んだ的な勧誘な気がするんだよなぁー。特にカンナさんの。
それにしても、今回は男性多いし、ガッツリ系のご飯多目がいいかなー。ダグラスさんはそこそこの年だけど、なんか健啖家っぽそうだし。
王都からの帰還は、また新メンバーで始まった。
そろそろ春も終わり、アーシェン王国は雨の季節を迎える。
お読み下さりありがとうございますm(_ _)m