第二十六話「ダンジョン探索講習会二日目①」
講習会二日目。
私達はギルド前に集合していた。目的の〈小鬼の迷宮》は南海街道を少し行った辺りから東に向かった所にある、自然発生型のダンジョン。
引率の銀ランクの冒険者PT(昨日のお兄さんもPTの一人)と職員さんを加え、三台の馬車で出発。
途中、簡単な説明を受ける。
ダンジョンは最初は全員で進むが、途中、三方向に分かれ奥で再び合流する造りになっている為、受講者は三組に分かれ、基本手出しはしないが、そこに銀ランクが一人付くという形になったらしい。
今回は、その合流地点まで行って引き返すという流れで実習を行うという事だった。
街道を外れ、森に入る。馬車は二時間ほど掛けて、森の中の広場に着いた。ちょっとした塚のようなものがあって、そこにぽっかり開いた穴がダンジョンの入り口だった。近くに小屋が建てられ、兵士が警備をしている。
「シャルロッティ・エストですわ。武器はこの拳、前衛ですわね」
「カトレア・クロフォードです。《剣魔法》と《土魔法》を使います。防御スキルもあるので、盾役行けます。よろしくお願いします」
「シシリーよ、よろしくね。私は弓使い!」
「ユースです。《火魔法》を使います」
「アークライド・ミュゼルです。僕は《水魔法》です。前衛の方と組めて助かりますね。今日はよろしくお願いします」
組分けで合流したのが、三人PTの少年二人と少女。‥‥と言っても、成人はしてそうなので年上だけど。十六、七くらいかな。
いずれも銅ランク、装備は使い込まれているみたいだから、冒険者としてはそれなりにやって来て、そろそろダンジョン行ってみたいなって感じなのかな。
「カトレアさん、昨日は凄かったですね。お詳しくて、驚きました」
「いえ、実家で小さい頃に本を読んでいた中にダンジョン関係があっただけですよ」
三人内では彼が中心なのだろうか、アークライド君が話掛けてくる。
前世の記憶を取り戻してから、この世界を知るためにも、腐っても男爵家で実家に所蔵されていたものや、ギルドに置いてあった本や資料は読み漁った。
「王都には、やはり新しく出来るダンジョンの事でいらしてるのですか?」
「はい、その準備ですかね?アークライドさん達のような人達がたくさん向かって頂けると、クロフォード家としては嬉しいですけど」
「あ、アークで良いですよ、仲間内ではそう呼ばれてますから」
そんな雑談で交流を深めていると、同行者の女性がやって来た。
「挨拶は済んだようですね。私は〈紅蓮花〉の神官カンナです。同行と言っても、こちらには鉄ランクのお嬢さんがいらっしゃるので、本当に付いていくだけになりそうですが」
「「「「「よろしくお願いします」」」」」
銀ランクの同行者は、長い黒髪の神官さん。〈紅蓮花〉は王都中心に活動しているPTだけど、前世の有名なアニソンを思い出すなー。
さて、そうこうしている内に出発になった。
警備の兵士さんに頭を下げて、(本当にはここで印章の確認をする)ダンジョンに入る。
入り口はただの穴に見えたけど、中は洞窟ではなくて、人工の迷宮‥‥‥そう、古き良き古典RPGのようにブロックで区切られたような3Dダンジョンだったよ。
なんかテンション上がっちゃうね、方眼紙とペンと定規の準備はしてあるかな?
まず、このダンジョンは50×50の正方形で、入り口は北西の端。そこからまっすぐ南に12ブロック進むと、通路は東に折れ3ブロック進む。
すると3×3の最初の部屋だ。各方向の真中に通路が続いていて‥‥‥なに、面倒くさい?うん、オートマッピングに慣れたらそうだよねー。
うん、まあ、最初の分岐までやって来ました。
ぞろぞろと大人数だったけど、ここからが本番。私達は南ルートで奥に向かった。
前に私とシシリー。中央はカンナさんとアーク。後の警戒を含め、シャルちゃんとユースという隊列で進んでいく。
道中は分かれ道もなく、ひたすら通路は続いていて、少々退屈だったので聞いてみた。
「ここは、やっぱりゴブリンばかりなんですか?」
「そうですね。他は虫型の魔物も居ますが、主にゴブリンが主体です。下の階層に行くと上位種に変わるので、最初は二、三階くらいまででがいいですね」
カンナさん達〈紅蓮花〉はこのダンジョンの主とも言われ、地下30階まで到達しているらしい。そこまで行くと強力な大鬼も出現する。ひたすら鬼退治は大変だー。
「あ、この先、何かいそう。 多分ゴブリン」
斥候役をしていたシシリーが立ち止まる。
「まずは、私が。それから三人は援護をお願いします。シャルちゃんは‥‥‥ちょっと様子見で」
「わたくしだって戦いたいですわ」
「いや、シャルちゃんだと手加減できなさそーだし‥‥‥」
シャルちゃんが《再装填》とか使って、ゴブリンが爆散して酷い事になる未来しか見えないんだよ。
あと、早めに三人の実力も見てみたいしね。
お読み下さりありがとうございますm(_ _)m