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第二十四話「報酬は焼きプリン」


屋台村は、和風の浜焼きのような物から、スパイシーなタイ風に台湾風、国際色豊かというか何でもアリと言うか、色々なお店が並び、迷わせてくれる。

私達は、目についた料理を適当に買って、イートインスペースのテーブルに。


私はイカ、海老、ホタテっぽい貝の海鮮串に、ブイヤベースみたいな海鮮鍋、それから甘辛い油タレをかけた鳥肉の丼物──鶏肉飯鶏肉飯(じーろーはん)

シャルちゃんは、同じ店のニンニクと生姜が効いた豚丼──魯肉飯(るーろーはん)に、串カツ、タコのアヒージョ。


統一感無いけど、美味しければいいのよ!


「そういやシャルちゃんって、何で王都に来てるの?普通に狩りとかなら実家でもいいんじゃ?」


私は海鮮串の海老のぷりぷり感を楽しみながら、なんとなく聞いてみた。

『洗礼の儀』の事がなければ、私はここまで来ていないと思うしねー。


「実は、隣がヴィッセル子爵という方の領地なんですが、そこの三男のキースさんとは許嫁でしたの。それが、婚約破棄されてしまったのですわ‥‥」


串カツの玉葱をかじって溜息をつくシャルちゃん。

婚約破棄令嬢は、シャルちゃんの方だったかー。


「あの方、私が魔物を素手で倒すのを恐いとか言うんですの。でも仕方がないですわよね?」

「あー、うん、生きる為には仕方がないね」

「僕には君のような粗野な人ではなく、花を愛でるような、そんな人が似合うと思うんだ、と」


子爵家なら領地も何か名産でもあったりするんだろうけど、こちとら貧乏男爵だ。家臣もいないし、自分達で何とかしないといけないのだよ。

だから、ご令嬢が素手で魔物を殴り倒すようになっても、仕方がないと言える。

うん、フツーよね。


「成る程そんな事があって領地に居づらかったと」

「あ、それ自体はどうでもいいのですわ。私もつい、十五にもなって母上に添い寝をしてもらわなければ寝付けないマザコンなんてお断りですわ!とこちらから破棄させて頂きましたから」

「あ、そうですか」


シャルちゃんの周囲も変わった人が多いね。


「それで、その母上が「宅のキースちゃんになにするザマス」と出てきまして、うちとの交易で───あ、ヴィッセル子爵領はお茶が名産で、そこから仕入れていますの。それで私の好みのヴィッセル深蒸し茶だけ輸出の制限をしてきましたのよ!ただでさえ、色が出なくなって香りすらなくなるまで我慢しているというのに、あまりの仕打ちですわ」


もう、それは深蒸し茶じゃなくて良くない?


「うちでは大した依頼もありませんし、大きな町に出て冒険者として成功し見返して差し上げようと思いましたのよ。深蒸し茶も飲めますし」

「‥‥‥で、王都でも依頼が取れなくて困窮していたと」

「それは言わないで下さいませ‥‥‥」


シャルちゃんにも色々あるわけで。

私は、残りの鶏肉飯を咀嚼しながら考える。

油ぽいと思いきや、サラサラと軽く最後まで美味しく頂けた。


「それならさ、私とダンジョン潜らない?」

「それは明日からの講習会ご一緒させて頂くと安心ですけど‥‥」

「いや、その後、なんだけど」


私は、私が王都に来た理由を説明する。『洗礼の儀』の事、神造ダンジョンが出来る事、そしてPTメンバーを集めに来た事。


「成る程、そのダンジョン攻略にわたくしの力を借りたいと、そう言う事ですわね」

「シャルちゃん前衛として頼りになるし、ダンジョン攻略は冒険者として箔付けにもなるし、どうかなーって。まあ、一番は気の合う人が良いでしょ?」

「そう言われると、ちょっと照れますわね」


戦力としても、信頼出来そうな仲間としても、私はシャルちゃんを気に入っていたのだ。


「一つ、条件がありますわ」


何だろうと、首を傾げる私に。


「明日のお昼は〈子猫のしっぽ亭〉でデザートに焼きプリンを所望いたしますわ」


こうして、私に一人目の仲間が加わった。



翌朝。今日はダンジョン探索講習会の一日目。

朝食をしっかり頂き、私達はギルドに向かった。

毎朝の恒例の依頼争奪戦を横目に、ギルドの二階に上り、案内板が出ている会議室に入った。


一日目の今日は、お昼を挟んで、ここで夕方まで座学と言うか、ダンジョンの基礎知識なんかを習う。


開始まではもう少し時間があるけど、結構な人数は集まっている。ほぼ銅ランクの駆出しの少年少女達ばかりだが、私と同じく鉄ランクの人もいるようだ。

大体知合い同士で固まっているようで、私達は奥の空いている席に落ちついた。


「ちっちゃい子も来てるね。ダンジョン潜って大丈夫なのかな?」

「あの子、鉄ランクだったよ」

「うそ~。どう見ても年下じゃん」


なんか私達の噂話が耳に入るが、見た目がこれなので仕方がないか。


そうこうしてると、講師らしいローブを着たおじいさんと、アシスタント役なのかギルド職員のお姉さんがやって来た。


「えーと、集まっているみたいですね。皆さん、おはようございます、講習会を始めますので、お静かに」


室内を見渡し、パンパンと手を叩くお姉さん。


「ワシが!王立学院のアドルファス教授じゃ!今日はお主らヒヨッコどもにダンジョンについて、ミッチリと解説してやるから覚悟するがいい!」


おじいさんは、手に持った杖を振り回して、そう言った。なんか、また濃い先生が来たなー。

お読み下さりありがとうございますm(_ _)m

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