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第二十二話「シャルちゃんとクエスト」


「カトレアさん、起きて下さいましっ!ギルドに行くのが遅くなりますわ!」


朝の一の鐘が鳴って、私は目を覚ました。

清潔な毛布とシーツ。ここの所、夜営が多かったし数日振りのベットは柔らかく、快適だった。

お値段一泊銀貨十枚枚にしては良い宿だ。部屋はちょっと狭いけど。


「朝ですわよー、急がないと依頼が~~」


うん、扉の向こうでシャルロッティ───シャルちゃんが(長いのでこう呼ぶ事になった)騒いでるので、起きますか。


「はいはい、起きてるわよ。そんな急がなくて大丈夫だから」

「貴方は朝の争奪戦を見ていないから、そんな事言えるんですわ。それはもう‥‥」


《空間収納》から櫛と手鏡を取り出して身嗜みを簡単に整える。寝間着代わりの短衣を脱いで、いつものワンピースに。

ようやく私が姿を見せると、シャルちゃんは、ホッと一息。


「とりあえず、朝ご飯ー。何が出るかなぁ」

「また、悠長な‥‥‥知りませんわよ」


ご飯はしっかり食べないと。成長する分もあるからね!‥‥‥してるよね?

メニューはカリカリに焼いたバゲットに、ふわふわのスクランブルエッグ、キャベツとベーコンの塩バタースープ。

ごちそうさまでした。



冒険者ギルドに着いたのは2つ目の鐘が鳴って、しばらくの後。

駆出しの少年少女が、ぞろぞろと依頼を受けて出てくる脇を抜けて、私達は掲示板の前に。


「ああ、やっぱり大した依頼は残ってませんわ」


銅ランクの依頼で残っていたのは、地下水路の掃除(臭い汚いキツい割に一日で銀貨八枚)と、食堂の皿洗い(お昼のみで銀貨二枚)だけだった。

ガックリしているシャルちゃんだが、私はひょいと一枚の依頼書を剥がして。


「これにするかなー。近場だし」


受付のお姉さんに挨拶して、依頼書と確認の為の印章を渡す。


「これ、お願いします」

「はい、アーマークラブ討伐ですね。えーと、一人で良いのかな?」

「シャルちゃん───シャルロッティとペアです」


私が彼女を示すと、あわててカウンターにやって来るシャルちゃん。


「これ鉄ランクですわよ」

「うん、鉄ランク」


私は返してもらった印章を指す。


「貴方、鉄ランクでしたの!?」

「いや、ずっと印章着けてたじゃん」


別に隠してなかったと思うんだけど。


「ですがアーマークラブは危険度4で銅ランクですと‥‥‥ツインランサードレイク単独討伐って‥‥‥え、これ、間違ってませんよね?」


お姉さんの方は、魔道具に表示された私の討伐履歴を見て驚いている。

ああ、ノルディンで解体に出したから履歴に入っちゃったのかー。


「あー、はい。間違いないです‥‥」

「スゴいのねー、貴方。金ランクでも危険度7は、厳しいわよ」

「なんですの、それはーーーーー!」


シャルちゃん、叫びすぎ。



ともあれ、無事依頼を受けれた。

アーマークラブは港の、さらに南に行った辺りにテリトリーがあるらしい。魔物は逼迫しなければ、自分の領域からは滅多に出てこないので、案外危険な魔物も町の近くにいたりする。

今回は、その間引きで、ある程度減らしたいという討伐依頼だ。間引きを定期的に行って、溢れたりしないようにしてるのだ。

目的地までは二時間くらいなので、夕方には帰れそうかなー。


「お、いるいる」


件の浜辺に到着。そこかしこに蟹はいた。

見た目は、ニメルク程のシオマネキみたい。左のハサミだけ大きく、アーマーというだけあって厚い装甲のような甲羅に覆われた防御重視のタイプっぽい。


一応、依頼では三匹以上でという事なので、結構狩っていっても良さそうかなぁ。

討伐証明部位はハサミ。蟹って爪肉が美味しいので、そこを提出するのは痛いなー。


「さて、日帰り出来そうだから、この依頼にしたけど、シャルちゃん、アレいけそう?」

「危険度4でしたわね。そのくらいは、実家で狩ってましたわ」

「どっちかと言うと、あの甲羅を抜けるかどうかだと思うんだけど」


シャルちゃんも辺境出身、ギルドのポイントよりも、ご飯が優先で格上とも戦ってるだろうとは思ったけど、予想以上だね。

ただ、装備が両腕のガントレットと、胸や腰周りなどが鉄で補強されたドレスアーマーのみ。


「わたくしのスキルは拳系。打撃特化ですが、ああいった固い敵にも対応策はありますわ」


シャルちゃん接近戦型かー。怪しげな魔法使って高笑いする系かと思ってたけど。

「まあ、見てて下さいまし」と前に出る。


「〈再装填(リロード)〉!‥‥‥行きますわよ!」


パンっと胸の前で手を合わせると、ガントレットに赤い光が宿る。《剣魔法》か似たスキルかな?

そして、蟹に向けてダッシュ。気付いた蟹はハサミを振り上げ迎え撃つ。


「しゃらくさい、ですわ!」


初撃の右ストレートをハサミで防がれ、続けて放った左フックも反対のハサミがガード。

蟹は一瞬止まったシャルちゃんを振り払い、しかしそれを台にして側転し、シャルちゃんは内に入り込む。


「食らいなさいませ!」


そして、蟹の頭に拳が打ち込まれ、一瞬の後、次いでドンッと装填した魔力が追撃を加える。

シャルちゃんは、速さと力で圧倒するボクサーではなく、力の方向付けと作用点を意識する、発勁とかみたいな?詳しくは知らないが、そんなタイプっぽい。


続けて左の拳が炸裂し、蟹は倒れる。


「ざっとこんなものですわ!」


こりゃ、負けてられないね!

お読み下さりありがとうございますm(_ _)m

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