第二十話「お嬢様、襲来。」
「キィーーーー、このギルドの〈姫〉は、わたくしですのよ!ポッと出の小娘が何して下さいますの!」
主人公が冒険者ギルドに行くと、柄の悪い冒険者に絡まれるというお約束。あれの原点って西部劇とかだと思うんだけど、どうなんでしょう?
はい、絶賛、なんか金髪ドリルツインテールのお嬢様に絡まれてます。素で「キー」とか言う人は初めて見たよ。
そんなオタサーの姫みたいのは慎んでお断りしたい所存なのですがー。
「えーと、つまり?」
「こうなったら‥‥‥、勝負ですわ!」
ビシッとこちらを指差して、お嬢様は宣言する。
─────ダレカタスケテ。
「流石に大きいねー」
皆と別れた私は、門──あそこはグライド門というらしい──を真っ直ぐ歩き中央区に来ている。
王都は五つのブロックに別れていて、グライド門の辺りが北区。ここは商店や問屋が多い。
港があるのが西区。港の倉庫と漁業関係。
南区は、住宅街。南門──サヴァード門がある通りは宿とお店もあるけど。
東は貴族街で、お屋敷が建ち並ぶ。ここに富裕層と貴族の子供が通う、アーシェン王立学院もある。その先が王城シルバリオ。
城向こうは軍関係の施設と軍港だ。
中央区は、まん中は広い公園で、行政とギルド関係が多い地区だ。
冒険者ギルドは五階建もある本館と、奥には倉庫だろうか──流石、王都のギルドは大きかった。
まあ、前世の近所のショッピングセンターより小さいけどさ!
さて、私の目的は一緒にダンジョンアタックをしてくれる仲間を探す事だが、そこら辺の人に「私をダンジョンに連れてって」なんて言う訳にはいかないので、PTメンバー募集板みたいのがあるのか聞いてみようかと思う。
「まあ、とりあえず行ってみるしかないよね」
ここで眺めていても仕方がない。
私はギルドの入り口を潜った。
広いエントランス、右奥はテーブルなどがあって、休憩所か待ち合わせになんかに使うのかな。
正面に大きな掲示板。依頼の紙を貼ったりするあれが、どどんと立っている。
受付のカウンターがその奥に幾つも並んでいる。
「すみませーん、ちょっとお聞きしたいんですが」
とりあえず近くのカウンターのお姉さんに声を掛ける。
「あら、可愛い子ね。どうしたの?」
「PTメンバーを探したいんですけど、募集とかしている所とか分かるものとか、紹介もらえたりとか、あるのかなと‥‥‥」
「まあ、大変!PTの人とはぐれちゃったのね。大丈夫、一緒に探してあげるわ」
あれ、何か勘違いされてる?お姉さんは、立ち上がって、周りの人に声を掛ける。
「この子とご一緒のPTの方いらっしゃいませんかー?」
「何?迷子?」
「どうしたの?」
「まー、可愛い子ね、お菓子食べる?」
「ちょっと撫でていいかなー」
あわわわ、迷子とかじゃないから!
皆さん暇なのか、お姉さん達が集まって来てしまい、ちらほらいた冒険者も何事かと覗き込んでくる。
お昼を大分過ぎた時間。今から依頼を受けて出掛ける人は余りいないし、帰って来るには早いから、所謂アイドルタイムという時間ではあるけど。
クロフォードのエリンさんは冒険者になる前から知っていたし、ノルディンではイザークさんが居てくれたのは、やっぱり大きいんだろうなー。
「ち、違います!迷子じゃないですから!」
それから一通り説明。クロフォードのダンジョンの話、そのダンジョン探索をするために一緒に行ってくれる仲間を探している事。
何故か私はカウンターの中に入れられ、最初のお姉さんの膝に乗せられて、クッキーを食べている。
「そうねー、とりあえず講習会が明後日にあるから、出てみるといいんじゃないかしら?」
ダンジョン探索の為の講習会があるらしい。
二日間行われて、初日は座学、二日目は実際に軽く潜っての実習で、探索に当たっての注意点を教えてくれる。昔、ダンジョンでの死亡事例が多すぎて困った事から始められた講習で、現在は受けないと探索許可が貰えないそうだ。
「講習受けないとダンジョン探索は禁止だし、そこに来る子達はダンジョンに行きたい。高ランクの人はこないけど、誘いやすいと思うわ」
成る程。行く気がないなら講習受けになんていかないし、初心者なら固定組んでない場合も多いだろうし。どっちにしても、講習受けないといけないみたいだし、この機会に受けておくべきか。
頂いた紅茶を飲む。結構良いお茶らしくて、良い香りが鼻を抜ける。
そんな時だった。
バンっと勢いよく入り口が開き、奴が襲来した。
「シャルロッティ・エスト、只今戻りましたわ!」
そして、冒頭の騒ぎである。
このギルドの受付のお姉さん方は、可愛い子が好きで、そんな子が来るとお菓子をあげたり構っているようで、最近は彼女がその位置を独占していた。
故に、知らない私が甘やかされているのを見て、勝負を挑んできた、らしい。
「いや、そんなに甘やかされたいのか」
「ええ!とっても!わたくし、甘やかされるために存在するのですから!」
‥‥‥なんかダメな人だった。
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