第十七話「vs盗賊団②」
私は《土魔法》で二メルクにもなる岩の大剣を作り出し、それに《剣魔法》による軽量化と魔力付与を重ね掛け、振り回す、魔法剣を編み出した。
なんかこう地面から引摺り出す感じで!
「〈巌山刀・政宗〉!!いざ尋常に勝負ー!」
小さい女の子が、巨大武器を振り回すロマン兵器、剣術は稚拙でも、大質量は受けきれまい!
ドカンと、派手に下っ端の防御ごと吹き飛ばして、まず一人!
アネットさんが既に副官っぽいのと、下っ端二人を倒しているので、あと5つとボスキャラ!
下っ端一人がオスカーさんに向かうが、《収納》から槍を取り出し迎え撃つ。
何気に多才だなぁ、あの人。
アネットさんはそちらに向かっていた残りの一人を、二刀の連撃で打ち倒し、オスカーさんに向かう。
あっちは大丈夫そうだ。
「大人しく、刀の錆びになりなさい!」
「刀じゃねーだろ、それは!」
あー、うん。どこから見ても岩の棒です。
本当はこの岩が割れて刀が現れる予定だったんだよ!まだ《土魔法》の熟練度が足りないわー。
とりあえず、撲殺だー!ぶんぶん振り回して下っ端を牽制するが、一人が後に回り込んでくる。
「それなら、必殺〈しっぽパンチ〉!」
斬りかかってきた下っ端を《竜魔法》で尻尾を生やして、後を薙ぎ払う!
予想外の攻撃に、下っ端は吹き飛ばされて地面を転がる。爪ほどじゃなかったけど、結構派手に飛んだなぁ。
「こいつ、竜人なのか?」
「いや、翼や尻尾がまである竜人なんて見たことないぞ‥‥」
《竜魔法》は人前じゃ初公開なんだ、勘違いしてくれるなら有り難い。
イザークさんの方は、リーダーが何か紫色のオーラのようなものに包まれていた。《剣魔法》に近いスキルでこちらは防御系らしく、イザークさんが押しているが、ダメージの通りが悪そうだ。
「‥‥‥ッチ」
「こいつは攻撃を一定量吸収してくるんだ、そう簡単には抜けないぜ!」
あ、やっぱりリーダー脳筋系か。それは結構重要な情報じゃないか?
イザークさんは基本スキルは使っていない。私は《剣魔法》辺りでマシマシしないといけないが、所謂PS───プレイヤースキルだけで圧倒しているのだ。
そして、それはスキルがない訳ではなく。
「そうか。ならば、コイツを受けてみるがいい」
それは蓄積型のスキル。攻撃や時間経過によって貯まるゲージが貯まると使える格闘ゲームの超必殺技の様なもの。
「〈神氣解放〉」
カチリと胸元だ剣を捧げキーワードを唱えると、足元から蒼い魔力が吹き上がる。盗賊リーダーのような
纏うにではなく、魔力の奔流が身を包んでいた。
某戦闘民族がスーパーな変身をした感じ。
「───往くぞ」
グッと身を屈めてた後の一瞬、時が止まったかと思った。そこから、一気に加速。リーダーはそれに合わせて剣を振り上げるが、遅い。
イザークさんが振り下ろした剣が届く。膨大な魔力がそこに叩き込まれ、視界が蒼く染まる。
リーダーは数十メルクも飛ばされ、地を転がり、ようやく止まった。
「グ‥‥‥かはっ」
「生きているか、盗賊などではなく全うな道もあっただろう」
「こっちにも都合ってもんが‥‥あるんだよ」
またなにかフラグっぽい会話がー。
リーダーが倒され、残りの下っ端も降伏した。
重傷なのはリーダーくらいで、あとは命に別状はないだろう。やる覚悟はしたけど、やっぱり誰も死ななくて良かったと思ってしまうのは甘いだろうか。
こんな事もあろうかと(いや実際は夜営とかに使うかと)持っていたロープで盗賊達を縛りあげた頃、ようやく森がざわめき討伐隊らしい人達がやってきた。
「協力感謝する。褒賞も出るだろう、王都に着いたら守備隊のまで来て欲しい」
盗賊達を引き渡し、こちらの事情を話すと、隊長らしい中年のおじさんはそう言って、彼等を引き立てていった。
やはり森に拠点があって、そこを叩いたがリーダーなど十名が包囲を破って脱出したらしい。
「それにしても、あれがカトレアちゃんのとっておきなのかな?」
討伐隊を見送って、ようやく一息。
アネットさんに尋ねられた。デスヨネー。
「そうですね。まだ完全版じゃありませんけど」
「あれは《魔法》でしょうか?」
「《竜魔法》、です。見た通り変身系の魔法ですね。まあ、詳しい事は禁則事項です♪」
‥‥‥称号《喪女》とか説明したくないんです。
そこは冒険者同士の暗黙の了解で、深くは聞かれなかったけれど。
とりあえず、イベント戦は終了。
お疲れ様でしたーーー!
「ね、イザークさん、大丈夫だったでしょ?」
「そうだな」
イザークさんの私を見る瞳は以前の、優しいものに戻っていました。
お読み下さりありがとうございますm(_ _)m
次回で一章終わりな感じです。
まだまだ続くよー。




