第十六話「vs盗賊団①」
森からは更に同様に馬に乗った男たちが現れる。
その数は全部で十人になった。
「盗賊‥‥ですかね」
オスカーさんは馬車のスピードを少し落とし確認するように呟く。
遠目なのではっきりはしないが、統一性の無い格好、大きな荷物も無さそうだし、商人の可能性も低い。まあ、盗賊だよね。
やっぱり出ちゃったかー。
出来れば何事もなく、グルメ旅行で終わって欲しかったんだけど。
「でも、ちょっと変よね」
「ああ」
アネットさんに皆、首肯く。
襲撃するなら、姿は隠して森でするだろう。わざわざ出てきて、逃げられる可能性を上げる必要はない。
「ただの脳筋バカっていうパターンとか」
「そんな訳ないだろう」
「勿論、冗談よ。討伐隊、いるかもしれないわね」
拠点を討伐隊に襲われて、逃げてきた所に私達と鉢合わせたって線かなー。
なんにしても、ここで反転しても機動力は向こうが上。やるしかない、か。
「相手の実力は分からないけど、やれる?」
対人戦は訓練くらいしかした事はない。
でも冒険者を選んだ時、こういう事は覚悟した。
「悪党に人権はない」、有名な魔導師の人も言ってたけど、襲って来るなら、やるだけだ。
「『やれます』」
ここまで旅は楽しかった。イザークさんも、アネットさんも、オスカーさんも、ブラウン夫妻も良い人で楽しい思い出ばかりだ。
ここで誰かが倒れたりしたら、それは悲しい思い出に変わるだろう。それがスキルを隠しておきたかったという理由なら尚更だ。
しばらく馬車を進めて、盗賊達の手前で降りて、彼等と対峙する。
顔で判断しちゃいけないかもだけど、全員がいかにも盗賊です、みたいな悪人顔だ。
「わざわざそっちから来てくれるとはな。商人と護衛か?おい、女は人質に使えるが男は殺せ」
盗賊だと隠すつもりもなく、リーダーらしい大男が部下に指示する。
人質────どうやら推測は当たりらしい。
時間を稼げれば、討伐隊が来てくれるかもしれないが、本当にいるかも分からないものを当てには出来ない。
剣を抜いて、ゆっくり距離を詰めてくる。相手は馬上、こちらが不利だが、先ずは奇襲だ。
「先、行きます」
「OK、やっちゃいなさい」
私に策があると、アネットさんは首肯く。
「先手必勝!〈火竜の吐息〉!」
「うわっ、なんだ!?」
牽制の弱めのブレスを広範囲に。盗賊達が怯んだ所に、私は翼を出して空中に。そして剣に魔力を込め、斬り込んだ。
同時にアネットさんとイザークさんが走る。
オスカーさんは自衛くらいは出来ますよとの事なので、馬車と共に後方だ。
「なんだ、あの女は」
「余所見などしている余裕はないぞ」
混乱しているリーダーにイザークさんの見えない、一閃。足を切られ、馬から落とされる。
「お頭!」
「はーい、あなたの相手は私よ」
アネットさんは、その隣、副官っぽい髭顔の男に切りかかる。それを何とか防ぎ男が剣を振り下ろすが、ゆらりとアネットさんの姿は消え、次の瞬間には側方に。放った一撃が男を落とす。
「こいつら、〈銀光〉と〈幻光〉か!」
なにそれ、アネットさん達の二つ名?厨二心が擽られるじゃない。
「数はこっちが上だ囲め!」
三人の下っ端が私に集り、同時に剣を繰り出してくる‥‥‥が、それは《全周囲防御》に止められる。
「なにッ!」
「当たった所で、どうとでもないのだよ!」
練習してきた《土魔法》、土の槍が地面か突き出て下っ端達を襲う。内、一人が落馬。
それからは混乱が収まった盗賊と乱戦になる。
剣と体術においては駆出しの私は、下っ端といえど互角なので、回避は考えず《全周囲防御》で受けきる。それよりも、とにかく攻撃に専念。
《竜魔法》の自重しないにしても、爪はなー‥‥‥あれだとR15まっしぐらになりそうなんで、というか、あんまりリョナ映像は見たくない。
盗賊リーダーは、盗賊のクセにかなり強いようで、イザークさんが押さえている。私が下っ端に手間取っている間にアネットさんが一人づつ確実に数を減らしてくれている。
「やるな、〈銀光〉」
「盗賊にしては、腕が立つようだが、惜しいな」
イザークさんの剣を受け傷はあるものの、リーダーは健在。掬う様に剣を切り上げ、イザークさんは半歩下がって回避。続けて来る袈裟斬りの軌道を剣で流し、踏み込んで綺麗な回し蹴りを叩き込む。
咄嗟に逆方向に飛びダメージを抑え、リーダーは倒れない。
「これでも、元は〈銀〉だ、只じゃやられんよ」
「俺は〈金〉だ」
何かバトル漫画のライバル対決みたいになってきてます。あの大男が後で仲間入りしたりするのはいらないので、あまりキャラを出さないで欲しいです。
‥‥と、余所見はしてられない。こっちに集まって来てくれてるので良いけど、オスカーさんの所には行かせられないからね。
相手は一人増えて四人。しっかり連係して攻撃を緩めず、私のスタミナ切れを狙ってくる。
えーい、鬱陶しい!私だって〈一人機動要塞〉とゲームじゃ呼ばれてたんだ!
「さあ、踊ってあげるわ!」
お読み下さりありがとうございますm(_ _)m