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第十一話「スキルシステムの謎に迫る。」


グリムを出ると、街道は西に向かう。

次の大きな町はノルディン。グリムの山々からゆるゆると下り、街道は海に伸びて行くのだ。

クロフォード、グリムは標高も高い地域なので、進むにつれ、夏の気配が近付くような気がします。


道中、特に問題もなく、二日目の夕方というには少し早い時間に、広葉樹の森の中にあるアサヒナ湖の畔にある休憩所にたどり着いた。

この外周十六メルローの湖は、その昔この辺りの主だった巨熊(ギガントグリズリー)の魔物を、旅の魔導師が倒し、その際魔導師が放った魔法で空いた穴に水が貯まったものらしく、アサヒナは魔導師の名前らしい。


それ、アルテイシア様の言っていた例のやらかした転生者だよね。何やってるの朝比奈さん‥‥


今日はここで夜を明かす。

馬を放してから、オスカーさんが《収納(インベントリ)》スキルで天幕を取り出し、皆で組み立てる。

普通の御者かと思っていたが、《収納》──しかも結構容量も大きい──持ちだったとは。


この世界でも《収納》スキルは結構希少で、その上、空間拡張系の所謂アイテムボックスとか袋とかは製法が失われているらしく、一般人には手が出ない代物なのだそうだ。

私──と、おそらく他の転生者も──が持っている《空間収納》と違いは多分状態保存の有無だが、そもそも収納方法が違う別物なのでは?‥‥と思ってる。

《収納》は亜空間を作り、その中に収納していて、《空間収納》は情報として収納していて、収納されている時は存在が「無くなって」いるのではないかと思ったりだけど、まあ、深く考えない事にした。


男女別に二つの拠点が出来た所で、手分けして夜営の準備。

私とフレーゼさんは料理担当、オスカーさんとマイスさんはトイレなどに使う穴を掘ったり。

アネットさんとイザークさんは近辺の確認をしながら薪集め。


食材はオスカーさんが出していってくれた、豚肉と何種類かの野菜もあるけど、メニューはおまかせされたので、フレーゼさんと相談だ。


「日が落ちると寒くなりますし、暖まる物がいいですよね?汁物とか、メインはどうしましょう」

「汁物でー、豚肉でー、暖まる‥‥」


「「とん汁!」」


二人の声が揃った所で、ご飯を炊いて、汁物はとん汁。それならばと前世でお世話になった、早くて安くて美味しいアレの店の豚肉バージョン!

私は味噌汁をとん汁にしてもらう派なのだよ。


フレーゼさんに人参とかじゃがいもとかのカットを任せて、私はお米を炊く。

ちゃんと浸水させた方がいいと思うけど、水を多めでいけばちゃんと炊けます。洗ったお米を、今回は土鍋にいれて、水は1.5倍足す。強火で一気に炊き上げ、吹き零れてきたら弱火に調整。後はじっくり二十分ほど。(お好みで水の量と時間の調整をしてね)


「お野菜切れましたー」

「はーい。‥‥‥あー、竃足りないか」


簡易な竃は二つしかないし、ひとつは使用中。


「あ、これくらいのなら私作れるかな、《土魔法》持っているので」

「おお、流石です!」


フレーゼさんが「えーい」と可愛く手を翳すと、地面が隆起して形を変える。ちょっと試行錯誤して、微調整すれば、結構しっかりした竃が出来上がった。


《土魔法》はあんな感じかー、。

《生活魔法》でもやってるけど、魔力を土属性で練ってから、地面を変形させるイメージで‥‥‥


[《土魔法》スキルを習得しました]


ええー!久しぶりにメッセージ来ましたよ!?

見れば、ちゃんと竃がもう一つ完成している。


「カトレアさん、《土魔法》使えたんですか?」

「‥‥‥‥今、覚えました」

「へ?」


‥‥‥とりあえず、夕飯作ろうか。



日が落ちてきて、アネットさん姉弟も帰ってきた。

薪と、ついでに、湖で虹鱒っぽい魚もゲットしてきてくれた。これは朝食で焼き魚が食べれますね。


今日の夕飯のお品書き!

甘めに煮込んだ豚丼に、心も暖まるとん汁。勿論、お好みでバターと唐辛子もありますぞ。

あと、グリムで買った、しゃきしゃきラディッシュとクレソンのサラダ。

‥‥‥うん、美味しそう。


「「「「「「いただきます!!」」」」」」


《生活魔法》で出した光球と、顔を出した月明かりの下で今日も美味しいご飯を皆で囲む。美味しい物を食べれば、一日の疲れも吹き飛ぶさ。

うん、こういうのが嬉しい。



夕飯の片付けも済んで、そろそろ就寝。

宿ではないので、見張り番が必要だ。お客様のブラウン夫妻はお休みしてもらい、私は参加しようかと思ったけど、子供は寝るように言われてしまった。


最初はオスカーさん、次にイザークさん、最後がアネットさんの三交代に決まり、オスカーさんを残して天幕に入る。


それにしても、スキル簡単に覚えたけど、これが転生者特典?でも、今まで簡単にはいかなかったし。


あ、もしや、敵の技を食らって覚えるラーニングのパターン?見せて貰って、実践すればオッケーっていう感じ。

そして、そうなら、よくある料理スキルみたいな物にはスキルが存在しない、と。


料理はスキルが無くても作れる。

スキルがあると「美味しいものが作れる」という物ではなく、なくたって美味しいものは作れるし、そもそも「美味しい」なんて人それぞれだ。

ゲーム中の満腹度回復+何%とかの効果が上がるという物ならスキルもいるだろうけど。

こういう作品によってはセンススキルなんて呼ばれるスキルは、この世界にはない。そう考えるとマリアンさんとかに料理教えてもらっても覚えないよね。

《剣魔法》と《生活魔法》は本を読んで練習して「普通」に覚えたって事なのね。


うん、謎は全て解けた、Q.E.D.!

お読み下さりありがとうございますm(_ _)m

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