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第百七話 「今から始める人必見、ゲーム開始後にやるべき金策とかの動画があれば良いのに」



「寝たみたいですね」


お腹がいっぱいになってウトウトしていたデイジーは、いつの間にか横になって寝息を立てていた。

シシリーがくすりと笑ってテントに運んで行く。


放り出す訳にもいかず、追加でお肉を焼いたりご飯を炊いたり。お陰で私達もちょっと食べ過ぎたかも。


食休みの話題はやはり彼女の事。

彼女だけなら自立できるように鍛えるなり、仕事を見つけてあげれば良いのだが、同様の者が何人もいると思われる。また今後も増える可能性もあった。


「まあ俺がなんとか出来る問題じゃないだろうが、なんとかしてやりたいな……」


そんなシシリーを見送りながらユースがぽつりと呟く。

ユースとアークは王都でも実家があったので、そこまで苦労はしてなかった。それでも底辺の冒険者の苦労は見てきたし依頼が取れないのは身に染みている。王都外出身のシシリーやシャルちゃんは勿論だ。


私は家は貧乏貴族ではあったものの、チートがあったから狩りには困らず、食べる事に関してはそこまで困った状況ではなかったから問題は無かった───というか現金があまり必要じゃない自給自足生活だったからね。


雇用問題はどこの世界でも一緒で難しい。

専門の技術や知識経験がある人はまだ良い。勿論それを身に付ける努力やお金と時間は必要だったのだろうけど。

問題はその機会に恵まれなかった人だ。これから学ぶにも時間やお金が作れない生きるのに精一杯の人達は、その沼からは抜け出すのは難しいのだ。


「アーマーラットが近場に少ないのは痛いですわね……」

「食用で狩るのも楽だからな。冒険者に成り立ての頃は俺もそれで稼いだよ」


………ぎくり。


「でも珍しいですね。強い魔物のいない人里近くには大抵群れが暮らしているのですが」

「だよな」

「う、うん手頃な魔物がいれば良いんだけどね」


ゲーム開始後、いきなり相手は格上というラノベのゲーム初心者プレイヤーがなんかやっちゃいました系の状態ですかね?

うん、普通は死に戻り案件だわ。初期位置が超危険地帯とかでサバイバルよりはマシかもだけど、リアルでこれはまずい気がする。

いや、当時は住民も少ないからお肉の需要があまり無くて、畑にも被害が出る程いっぱいいたんだよ。それでお肉の納品ではなく討伐依頼があったんだ。ダンジョン需要で人は集まるかもなーとは思ってたけど、まさか仕事に溢れた駆け出し冒険者が増えるとは思わなかったよ。


一応、仕事が無くもないし領都から離れれば危険度の低い獲物も多数いるので最悪ではないが、初心者の受入れという点では良くない状況だ。

うん、稼げるのは古参向けコンテンツばかりで新規が金策出来ず高難易度クエストに必要な装備を用意出来ない。故に辞めてしまう……オンゲならば衰退する一方の大問題だよね。


「駆け出し冒険者の支援か……やっぱり手っ取り早く稼げる依頼か?」

「低価格で泊まれる宿や食堂もあると良いですわね」

「稼ぎが少なくても生活費が抑えられれば余裕が出ますね」


初心者支援………稼げる簡単なデイリークエストとか、一定レベルまで転移無料とかバフが貰えるとか取得経験値アップ、デスペナ無し、低レベルだけ使える回復アイテム配布、対人(PK)から除外とかあったが、リアルでこれは出来ないか。


「簡単に稼げるってのも問題なんだよね」

「いや稼げるのは悪くないだろ?」

「例えば、アーマーラットを狩って駆け出しなら高価買取りって事したら、それ以外からは文句が出ます。駆け出し用として優先的に受けれる簡単な依頼として出すという手もあるけど……駆け出しの定義には困るんじゃないかなぁ」

「ああ。銅ランクなら優遇されるというなら、あえて鉄に上がらない人もいるかも知れないですね。そんな人を強制的に昇格してしまうのもどうかと思いますし」


優遇措置をするとそれを悪用する輩も出る。それが適用される範囲に留まって出る気が無いとかも含めて。前世でもこの手の問題はいっぱいあった。そして本気でそれが必要な人は除外され救済されないとかね。


「ふわぁー、あの子の寝顔見たらあたしも眠くなってきちゃった。今日はそろそろ休まない?」


そうこうしているとシシリーが戻ってくる。


「そうだな………ま、直ぐには解決する問題でもないしな。シシリー、眠いなら夜番は俺と交代するか?」

「ん……大丈夫。後でゆっくり休ませてもらうから」


野外では基本シシリー、ユース、アーク、最後に朝食準備を兼ねてシャルちゃんと私が見張り番という形。途中で起きて夜番は大変なので男性陣が就いてくれている。

ちょっと考えたい事もあるしと苦笑いをするシシリーを残して、私達もテントに入った。



夜明け前。

アークと交代して私とシャルちゃんは朝食準備だ。夕御飯は和風だったし、どうしよっかと尋ねると。


「夜は食べ過ぎでしたし、出来れば軽い物で」


──との事。うん、確かにちょっと胃もたれしてる気がするね。


そんな訳で朝食は中華粥に決定。ご飯は昨晩の残りはあるけど、お昼用にと再びシャルちゃんにお願いして私は下拵え。


具材は鳥胸肉に青葱、あとは薬味か。

鳥肉は小さめひと口大に切って青葱を刻む。薬味用に長葱を小口切り、生姜は細切り。それから生姜とニンニクを擦りおろす。

お鍋に水とご飯、鳥ガラ出汁と擦りおろし生姜とニンニクを入れてお粥になるまで煮る。この間に長葱と細切り生姜、白胡麻、ゴマ油を醤油で味付け薬味を作る。

お粥になったら鳥肉を入れて火が通ったらお塩で調整。あとは盛付け。薬味を乗せて青葱をぱらりと降れば完成だ。

あと、お粥だけも寂しいので作り置きのじゃが芋と人参の煮物も少し。こちらはマリアンさん作だ。


シャルちゃんが深蒸し茶を煎れて、私が炊き上がったご飯でお昼用おにぎりを作り終え陽が昇り始めた頃、皆が起きてくる。

きちっと身嗜みを整えたアーク、寝癖頭のユースはいつもの事だけど、割と寝起きの良いシシリーは今日は生欠伸をしている。


「おはよー」

「おはよう。シシリーまだ眠そうだね」

「あはは、なんか色々考えてたらあまり寝れなくってさ。後で……ちょっといいかな?」

お読み下さりありがとうございます。

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