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第九十九話「終幕、真ボス降臨」」



「単純な体当りなんて当たらないわよ!」


急降下して来る皇帝白冠鳥・雌。私は加速して所謂宙返り───回転を加え高度を取る。そこから下に逃がした雌を追って錐揉みしながら急降下(ナイフエッジ・スピン)


落ちてくる皇帝白冠鳥と私に、落下点にいた子達がバタバタ走って逃げようとするが間に合わずに巻き込まれ吹き飛ばされた。


「きゅいぃ!」


いや、あんた達結構丈夫だな。可愛いペンギンっぽいけど危険度2に位置するだけはあるわ。


皇帝白冠鳥・雌はそこから更にジャンプ。弾丸の様に私に迫るが、翼を拡げ横滑りする軌道でそれを避ける。ダンジョン内とかでやられるときつそうな攻撃だけど屋外じゃ逃げ場は幾らでもあるからね。

大きく旋回し《挑発》を二羽に掛け、ヘイト維持も忘れない。


「きゅいきゅいきゅいー♪」

「ああ、モフモフですわー」


皆の方はというと。

シャルちゃんはすっかり白冠鳥に埋まっている。あれじゃ、流石に前には進めないか。モフモフに包まれてそれは幸せそうだ。

ユースは相変わらずというか、乗っかってる数が増えている。完全に押し潰されて背中に乗った白冠鳥が踊っている様に見えるのは気のせいだろうか。

そしてシシリー………こっちは幼生体をモフモフしてダメな人になっている。


「た………頼むから退いてくれ……」

「可愛い…このモフモフ具合い……最高……」


卵探しは忘れないでー。

まあ、私もモフモフに囲まれたら自信は無いけど。この子達、ある意味過去最大の強敵だよ!


あちらに比べこっちの皇帝夫妻は───いや、可愛いと言えなくは無いんだけど。ビックサイズのぬいぐるみというか着ぐるみ?目付きが悪いのも、それはそれでアリではある。

一旦私への攻撃は中止して、仲良く?並んでこっちを見上げているが、諦めてくれた訳では無さそうだ。


「ぎゅいぎゅい!」

「ぎゅぅ」

「ぎゅいいい!!」


雌が何かを言って、首を振る雄をバシンと羽で叩く。雄は「ぎゅぅぅー」と情けない声を上げる。

うん、何言ってるか分からないけど、旦那は奥さんのお尻に敷かれているのは分かったよ。


「ぎゅい!」

「ああ、うん、頑張れお父さん」


進み出る雄。どこか哀愁が漂っている様に見えるのは気のせいか。

一声鳴くと、ぐっと身を沈め───私に向かってジャンプ!しかし、上空にいる私に届く程のものでは無さそうで徐々に失速していく。

うん、頑張ったよ。人間基準なら十分人外レベルの跳躍力だしね。


「ぎゅいいい!」


そこに後ろから雌が跳んでくる。


そして──────空中で雄を、蹴ったぁぁ!!!?

弾かれた雄は一気に加速、油断していた私は慌てて水平飛行から上体を一気に起こし失速、横滑りさせて辛うじて回避。

おおう、古のサッカー漫画の某兄弟の必殺技みたいな事までしてくるとは。やるな皇帝白冠鳥。


更にその影に隠れ遅れて雌が突っ込んでくる。

流石にこれは失速してる状態から立て直して回避は無理そうで、逆に雌に向かって加速。


「やあああ!」

「ぎゅいっ!?」


小さい───小柄な私が向かって来るとは思わなかったのか、驚きの声を上げる雌。

どおん、と衝突をして双方が弾き飛ばされる。


「生憎、私は避け盾じゃないのよ」


空中で体勢を取り戻し、下を見れば地面に激突して目を回す雌に、戦意を無くした雄が細い声で鳴いて心配そうに寄り添っている。


ふう、こっちはなんとかなったっぽいかな?

本体の素材やお肉が目当てじゃないから倒すとまずいのは分かるけど、単純な討伐依頼の方がやっぱり楽だよね。ゲームでも捕獲エリアに追い込むクエストとかあったけど、誘導するのが大変で報酬は通常ドロップにちょっと色が付く程度だったから誰もちゃんとやらなくなってたし。


「見つけました!」

「おお、良い感じのが二つも!」


あっちへこっちへと大騒ぎの白冠鳥の群れを掻き分け、アークが発見の声を上げ、ひょいひょいと近付いたケイトリンさんが大きな卵を掲げて見せた。

白と茶色の斑模様、直径30メルミ(30センチ)程もあるだろうか。ダチョウの卵もそのくらいだったっけ?玉子焼きなら何人前になるかなぁ?


「それじゃ、さっさと撤収よ!」


ゲットした卵を大事そうに《収納》に入れて、ケイトリンさん。


「はうー、可愛いよー。お持ち帰り~」

「飼えないんだから放してやろうぜ」


なんか危ない人の様な台詞を言って未練がましくモフモフしてるシシリーの手を、なんとか白冠鳥から抜け出したらしいユースが引っ張る。


「そうですわ、濃厚プリンが待ってますわ!」


なおシャルちゃんは飼えないモフモフよりプリンが勝った模様。



「ぎゅい」


地上に降りると、皇帝白冠鳥夫妻が立ちはだかる。

まだヤル気なのか?後は撤収なんでゆっくり相手はしてられないけど。

身構えると、一声鳴いて巣の方に戻っていく。


「どうやら認められたらしいわね」


なんかドヤ顔で言うケイトリンさん。

襲って来るのは、あれか。群れにやって来たハグレ者に対する格付けみたいな感じの奴。

ふと見れば、他の白冠鳥も遠巻きに集まってくる。


「きゅいきゅい♪」

「つまり………カトレアさんが群れのボスになったと……?」

「すごいね!つまりモフモフし放題!?」


いや………うーん、ボスとか言われても困るんだけど。モフモフが寄ってくるのは嬉しいけどさー。

そして、そこ、転がってアピールをするな!

相手が居ないとは言っても、鳥はご遠慮します。


お読み下さりありがとうございます。

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