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第九話「何故キャンプ飯は美味しそうなのか?」

サブタイ詐欺かもしれません。


クロフォード発ノルディン経由王都アーシェン行き、出発ですー。


馬車は十人くらいが座れる感じで、二頭立ての中型くらいの幌馬車。白毛と黒毛の対称的な二頭が、頑張って引いている。


御者の中年男性はオスカーさん、それから護衛の冒険者二人組でアネットさんとイザークさん。今は外の御者台にオスカーさん、アネットさんが出ていて、イザークさんは一番後で静かに後方を警戒している。


お客さんは、私とマイス&フレーゼのブラウン夫妻だけ。夫妻は王都ではなく途中下車でノルディンまでみたい。

まあ、定期便ができた所で、まだ王都に行く用事がある人は居ないよね。


ブラウン夫妻はクロフォードの町の人で顔見知りなので自然と二人と会話になる。

二人はマイスさんがノルディンの出で、帰省するのにせっかくなのでと、今回の馬車を利用してみたって所のようだ。


この前の『洗礼の儀』やここ最近の町の様子などの雑談をしながらの馬車の旅はのんびりと快適───ではなく、やっぱりお尻は痛くなりました。

知ってはいたけど、完全に忘れてたよ。


二度とほど小休止を挟んで、お昼過ぎ、馬車は最初の休憩所に着いた。

休憩所といっても雨を凌げる程度の東屋と石を積んだだけの小さい竃があるだけだ。それでも、所々にこうした場所があれば旅は楽になるだろう。


オスカーさんは馬に水を与え、手入れをして労い、アネットさんとイザークさんは、一度周囲を確認しに行った。


お昼ご飯は各自で適当に‥‥というのが乗合馬車では普通らしいんだけど、折角竃もあるので、この間に簡単にスープを作る事にした。

《空間収納》から狩りの時に拾ってストックしている小枝を出して、《生活魔法》で火を起こす。小鍋に水をこれまた魔法で注いで火にかけて。

具材は玉ねぎ、ベーコン、人参くらいでいいか。まな板とナイフも取り出し、切って鍋に。使った道具は浄化をかけてっと。

後はクロフォード家謹製チキンスープ入れて、塩胡椒で味を整える。


ファンタジー物ではお高い香辛料だが、アーシェン南部に産地があって、お気軽に使えたりします。

なるほど、そんな辺境国から輸入するから、大陸各国では「胡椒一粒が金一粒」になっちゃうのか。


「へー、凄いものだね」

「わっ!」


味見をしていると、後ろから声を掛けられて驚いた。いつの間にかアネットさんが覗き込んでいたからだ。


「い、いつの間に‥‥」

「アタシは斥候役だからね、気配消すのは得意だよ。なかなか美味しそうじゃない」


アネットさんは結構露出高い系で、上はタンクトップに革の胸当てと肩当て。下はぴったりした革のパンツ、腰に剣帯。下げているのは二振りの剣───よりは細身で長さも半端っぽい気が──小太刀?

もしや御庭番で小太刀二刀流とか?


「私も冒険者なので、野外で簡単な物なら、それなりには。‥‥‥うん、こんなものかな」


胸元の印章を示して、鍋に少し塩胡椒を足して。


「宮廷料理じゃないんだから、旅先で手早くかつ美味しい物を簡単に作れるのは才能よ。《収納》スキルもあるみたいだし、その年で鉄ランクは優秀よ」

「ありがとうございます」


誉めてくれるアネットさんだが、彼女が付けているのは金ランク。一流の証だ。彼女こそ二十歳くらいでそれは優秀だね。


「携帯食だけでは淋しいですし、皆さんどうぞ」


木のカップに人数分取り分けて、各々に配る。

空になった鍋も浄化して収納し、私も携帯食として作ったグラノーラバーもどきを取り出した。


‥‥マリアンさんに作ってもらった料理が熱々でストックしているけど、ここは自重しておこう。


「温かい物を食べられるのは有り難いね」

「素朴な感じでもチキンスープがいい味ね」


オスカーさんはホッと息を吐き、アネットさんが前世の某メーカーの調味料を目指しマリアンさんと作ったスープの元を誉めてくれる。

ブラウン夫妻も満足そう。


「‥‥‥む、うまいな‥‥‥」


そして、イザークさん小声で呟いていたのが印象だった。


最初は離れて座っていた皆だったけど、スープのおかげで少し距離が近くなったかな?


王都までは一週間もあるし、楽しい旅になればいいな。



しばらくゆっくりと食後の休憩を取って再出発。


クロフォード領を離れて、見える景色も少しずつ変わってきた。この辺りはもうグリム子爵領になる。


アーシェン王国は、面積こそ違うが日本の房総半島のような形。北側がレイゲンタットの山々が横たわり、蓋をしている感じ。

クロフォード領はレイゲンタットの南側の中央、日本でいうと成田くらいの位置で、私達は南西に向かっている。ノルディンは千葉、王都アーシェンは木更津の位置だと思ってくれれば、なんとなく位置関係は分かるかなー。


グリム領は、東西が山地で葡萄畑で有名な土地。

実りの季節ではないのだが、フランスのブリュゴーニュを思わせる。


本日はここで一泊予定。日が傾き、赤く染まり始めた頃、馬車は領都グリムに到着した。

お読み下さりありがとうございますm(_ _)m

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