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プロローグ「異世界に行ったらチートで無双のテンプレをしてみたい 」


 大陸南部に突き出た半島にアーシェン王国という国がある。

国の北部は、世界で最も高い一万メルクの高さを誇るレイゲンタットを主峰とする峰々が連なり、その交通の悪さから『南の最果て』『存在すら忘れられた国』などと言われ、大国が覇を争うこの時代においてはかやの外、そんな国である。


レイゲンタットから流れる大河が豊かな土壌を産み、寒流と暖流が交わる南の海は良質な漁場が多い。

温暖な気候もあって住み良い国ではあるのだが、一方で魔法や技術の発展は遅れているため、この国までやってくる数少ない商人が扱うのも保存が利く乾物などがほとんどだ。


そんな田舎の国のさらに辺境、レイゲンタット山々のすぐ南にクロフォード男爵領がある。


「のどかねー」


季節は春。まだ種を蒔くには少し早く、のんびりとした空気が町を包んでいる。


私の名前はカトレア・クロフォード。家名から分かるだろうけど、領主の男爵令嬢ね。本日めでたく十歳になりました。

身長は多分低い方、髪は銀に近い金。大きめな瞳は深い蒼。

()()の私から見て、自分で言うのもあれだけど、所謂美少女だ。


私はギルドに向かって、領都とは名ばかりの町を歩きながら呟いた。

『街並み』という言葉は建物が並んで作る景観を差すんだと思うけど、この町ときたら一つ一つが大きく離れ、間には畑とかあったりする。うん、逆だ。畑の中にポツポツと建物が存在する、が正しい。


人口は千人くらい。ほとんどは農業に従事している。

一応、『この辺り』が町の中心で、私の家───男爵家の屋敷と、一軒しかない商店に、食堂兼酒場が二軒、ギルドなどがある。

ほぼ自給自足のような暮らしをしているので、貨幣も大して出回っていなし、食堂だって銅貨ではなく食材を持ち込んでの支払いもOK。税は麦や米などで納め、男爵家の方でまとめ王都に売り財貨に替えているが、この国は他所に行っても似たようなもので、作物は総じて安く、男爵家は裕福とは言えない暮らしだ。

なので、令嬢の私も徒歩で移動だし、護衛なんてのも普段は付かない。男爵なんて言っても生活水準は庶民的なのよ。


クロフォード家家訓『働かざる者、スープは具無し』。


お父さんは、森に薪集めに。お母さんは料理などの家事。

お兄ちゃんは、川に釣りに行き、私は狩り。


全く優雅とは遠いのがクロフォード家なのだ。

人口は少ないので、領の運営も忙しいのは主に収穫期くらいで、他所から人もほとんど来ないし、住民は知りあいばかりで犯罪も無く、普段は領主の家も自給自足なのだった。


ま、私はこの生活は気に入ってはいるんだけどね。元庶民としては、社交界なんて怖くて近付きたくない。


「こんにちは、エリンさん」

「あら、もう戻ってきたの?」


年季の入った石造りの三階建てのここがギルド。男爵家よりこっちの方が広いんじゃないかなと思う。

本来はこういった組合はいくつかに分かれているんだけど、クロフォード領仕様で、ここでは冒険者ギルドと商人ギルドとかが合同で駐在している感じ。

何しろ冒険者の飯種になりそうな問題が少なく、彼等がこの町にくる理由がない。たまにレイゲンタットの奥に向かうような高ランクの冒険者が来る事もあるが、大陸で最も危険なんていう場所に行く物好きは少ない。

そんな訳で人も物も動きが少ない男爵領では冒険者も商人も少ないのだ。

私はその数少ない冒険者の一人という訳だ。


受け付けのエリンさんは二十代前半くらいかな、おっとりとした隣のお姉ちゃんって感じの人。(まあ文字通り男爵家とここはお隣みたいなものだが)頭には猫っぽい耳があり、魅惑のモフモフである。そして着痩せするので目立たないが、実は結構なプロポーションらしい。


「うん、今日は夜お祝いですしねー。まあ、その食材を主役本人が狩り行ってるのはどーかと思いますが」


文句を言うと、私の実力を知ってるエリンさんは苦笑い。


そんなやり取りをしていると、奥から、がっしりとした体格の五十手前くらいのジャンおじさんが出てくる。ギルドで獲物などの解体なんかを任されているベテランだ。

こちらは腕力自慢の竜人で肌の所々にが鱗になっている。


うん、ファンタジー。


「おう、お嬢、今日は北の山だったか?」

「うん、流石にこの辺りとは獲物が違うね。結構大変でした」

「大変でしたで済まねーよ、普通は」


本日の成果を《空間収納(ストレージ)》から、ずるっと出す。うん、いつも思うけど、どういう仕組みなんだろう?


三メルク近い巨大猪のタイラントボアに、こちらは四メルクくらいで胴周りが私以上もある蛇のジャイアントスネーク、それからオマケに一角兎ことホーンラビットだ。

タイラントボアとジャイアントスネークは駆け出しの冒険者では危険なレベル5クラスの魔物で、ホイホイと狩ってくる私に溜息を吐いている。


今日はお祝いなので、自重はしません‼

トンカツと唐揚げが食べたかったからね!


「まあ、いつも通り解体お願いします。今日は半分くらい頂いていきます。あとは食堂にお裾分けで」

「後で届けておくよ。しかし、外なら結構な額になるだがなぁ」


いくら良い獲物でも生肉は鮮度の問題、牙なども輸送費が掛かるため、王都や外国には売り物にはならないのだ。

私の場合、家で消費する分を受け取り、残りは少量ならギルドの人に、多ければ食堂で使ってもらうのが常だ。お野菜とか頂くので領民のみんなに還元しようって事で。


男爵家で一番下、その上女の子の私が何故一番大変そうな狩りをやっているのか?

簡単だ。私が異世界からの転生者で、チートなスキルで無双が出来るからである。

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