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散歩

作者: 小春日和

休日の散歩。

どうしようかな・・・・

 一年で一番寒い季節のことさら寒い日の翌日に機嫌を直したお天道様が大地にその温もりを届けている。

昨日までの厳しい寒さがうその様な麗らかな景色に誘われるように外出を決意した男は外に出た瞬間に

北風に吹かれ、季節がまだ冬であることを確認し冷たい風に少し身を震わせて当たり前の一言を呟いた。

「日差しがあってもやっぱり、冬は冬だよな。」

男は外出を決意はしたが何か目的がある訳では事を少し考えた。

食料は冷蔵庫にあるし、タバコも明日まではある。友人を誘うにしても突然すぎるし休みとは限らない。

散歩をするほど「運動不足では無い」と自分に言い聞かせたが日頃の自分の行動を思い起こしてみると

「やはり運動不足のような気がする」と思い至る。

決意はしたが目的も無く歩き回るほど無駄な時間の過ごし方もと考えると決意が揺らぐことに男は苦笑

した。


「散歩だし目的が無くても良いから近所をぶらぶらしてみるか・・・。」


男は自分に言い聞かせるよな独り言を呟いて歩き出しだ。


時折吹く風に冬の冷たさを感じながら普段とは違う道に足を向けてみようと考えた男の歩みは日常とは

違う道を選ぶように進みだした。


「へぇ~、こんなところに噴水のある公園なんかあったんだ・・・。」

家を出て10分ほど歩いた場所に見たことが無い公園が現れた。いや正確には公園をはじめて認識した。

普段の生活で足を踏み入れたことが無いエリアに行くことによって「初めて」を見つけた事で少しだけ

男はうれしくなっていた。

「そうだ、こちら側をもう少し歩いてみて新しい発見をあと二つ探してみよう。」

男は特に意識する事も無く目的を設定し「初めて」を探してみる「探検」を開始した。


公園を後にした男は普段使う駅とは反対方向に進路を定め歩きだした。

駅の反対方向に普段の生活で足を向けることはまず無い生活に今更ながら気が付き、毎日が決まった生活の繰り返しであることに多少の退屈さ考えているときに二つ目の「初めて」が現れた。


「駅からそう遠くないのに古い家ばかりの町並みだな・・・。」

公園を後にして5分ほど歩いて目に入ったのは一つ昔の住宅地の風景だった。

男が子供の時代、どこにでもあった様な建売の団地になった家々とそれに付随する形の商店が少し有る

だけの町並みが男の目の前に広がっていた。近くにこの手の団地に付き物の公園でもあるのだろうか子供の声が聞こえる。この辺りは駅からさほど離れてはいないのだが再開発の手が未だに届いていないのかは

判らないが男が子供の頃に見ていた風景が懐かしくもあり「初めて」のものにも感じていた。

「今度、実家に久しぶりに帰ってみるか。」

男はもう何年も帰省していない田舎の風景を思い出しながら自分が今、暮らしている場所の無機質さを改めて思い出しさびしい気持ちになった。

少し感傷に浸りながら立ち尽くす男は周囲から少し視線を感じる気がしてきたのは五分ほどその場にたってからだった。

「昼間から男が子供の遊ぶ公園や古い住宅街に立ってると不審者だよな。」

少し気まずい雰囲気を感じ携帯を触りながら道に迷っている風な変なアピールを装いながら男はこの場を後にした。


「さて、最後の一つを見付けるためにどちらに行こうか・・・・」

独り言を呟きながら二つの選択肢を男は自ら用意した。

一つは自宅方向へ足を向けて帰宅しながら探す。

もう一つは自宅からは離れるがこのまま反対方向に歩いて探す。

考えるにしても脇に立っているとは言え天下の公道で思案するのも要らぬ誤解を招きかねない。

男というだけで不審者にされ警察に要らぬ詮索などされるのも真っ平ごめんだと考えているそばから自転車に乗った警察官がやってきている。

巡邏中の警察官は男をさして気にする風も無いように前からやって来るが明らかに男を不審者扱いする視線を感じる。


「・・・・気のせいか。」

警察官は男の横を素通りして行った。

なにも悪いことをしてもいないし探られて困ることも無いのに街中で警察官に遭遇するとなぜドキドキするのか不可解な気持ちになりながら男はあたりを見渡した。

先ほどの住宅街から五分と離れないので「初めて」は見付けられないが歩き出す方向を定めようと二択の中でどちらを選ぶかを考え出す瞬間だった。


「腹が減ったな・・・最後の初めては食堂でも探して昼飯食って帰るか。」

三大欲求の一つに勝てず欲望のまま行動するようで気が引けるなどと考えることも無く男は食事が出来そうな店を探すことにした。


「大きな道沿いなら何かあるだろう。」

安易な考えの下、男は足を踏み出したがそれが間違いであると気がつくのはかなり歩いた後であった。

普段、周辺を歩くことなどしない男は周囲の道路事情に完全に疎かったことに今更ながら後悔した。

大きな道沿いに行くために15分ほど歩いたであろう時に男の目に入った風景は絶望というには大げさで

残念と言う表現では小さすぎた。


「あぁ・・・・そう言う事か・・・帰るか。」

大きな道路は道幅の拡張工事の真っ最中で両サイドに有ったであろう店舗などが軒並み無くなっていた。

その中で工事にかからないラーメン屋を見付けたものの定休日の札が下げられており腹っぺらしの男に追い討ちをかけてさらに気分が沈んでいくこととなった。

「はぁ~コンビニで弁当でも買って帰るか。」

足取りが一気に重くなった男はトボトボともと来た道を力なく歩き帰宅の徒に着いた。

重い気持ちと足を進めながら男はふと三つ目の「初めて」を見つけていない事に気がつき自分の迂闊さ悔いたが、考えを変えれば道路工事を三つ目にしてしまうことも出来ると思い至った。

しかし、男の中で「それ」は少し違う、との思いも少なからずあった。


「今の腹っぺらしの状況から考えたら小さい悩みだよなぁ~。」

男にとって今、優先すべきことは食事であり当初の「初めて」を三つ探すことよりも天秤が「食事」に大きく傾いている事は紛れもない事実であり現実だった。

普段から歩きなれていない道を進むに従い、食事処の目星もなくあてずっぽうに歩いてきたことを今更ながら後悔しはじめた時、男の前に一つの看板が目にとまった。


「絶品・中華~~~」

中華の下の字は古い看板なので擦れて見えないが絶品ときて中華とくれば「料理」の文字がセットだろうと空腹な男の頭は勝手に結論付けた。

「この先200m」の矢印の方向を確かめて男は最後の力を振り絞るかのように力強く歩き出した。


「この辺りのはずなんだけど・・・・看板見落としたかな?」

すでの最初の看板を見付けてから200m以上は矢印のとおりに進んできたがそれらしき店は見当たらない。

人に聞こうにも人通りも無くラーメン屋独特の匂いも風に乗って来ない。

「ふるい看板だったからつぶれてるのかな~。」

男は追加された疲労をことさら悔やんだが呟きとともにでたため息が空腹をさらに増長させていくことに気がついた。

「目的も無く歩くもんじゃないな。俺には散歩は向いてない。自分の事ながら初めて気がついたよ。」

独り言を言って男は空腹を忘れて一人でほくそ笑んだ。

「なんだ、初めての三つ目、見付けた。散歩に向いてないだ。」

また大きなため息をつくなり大きな深呼吸をして男は決意した。

「ラーメン食って帰ろ。駅前まで行けば行ったことのあるラーメン屋があるから大丈夫だろ。」

日差しが少し陰りだしそうな大きな雲が風に乗って流れてくる空模様にうんざりと冬の寒さを感じながら男は遠回りになったラーメン屋への道をトボトボと歩きながら、喫煙所を目指しながら季節を感じる昼下がりを一人で少し楽しんでいた。

「たまには散歩もわるくないな・・・・」


                         完















平凡な毎日に感謝する日が一番幸せ。

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