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殺戮勇者の使い方  作者: 文字塚
1章 殺戮勇者とアルタニア
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第7話 暴君を締め出して何が悪い

 答えとは?

 ああ、アルタニアを差し上げたいという話ね。そのつもりで来た、けれど経緯が分からない。なぜ彼は戦争を起こし奪った国を譲ろうというのか。

 やはり傀儡(かいらい)を必要としている。

 今その点を指摘して果たしていいものだろうか。

 無策過ぎる。

 これではまるで姉弟の逃避行だ。


「おい、まさかここまで来て断るつもりじゃねーよな」

「もちろん。けれど血に塗れた王国を簒奪(さんだつ)して、一体どういうつもり。私達に何を求めているの」


 凛として応じたつもりだ。

 これでも王族、血統書なら大抵勝てる。

 偉そうな奴は大体親戚だ。


「うん……そうね……」


 勇者が口ごもった。今よ、ここがレイモンに無礼を働いた復讐の好機!


「戦争を起こすに相応しい理由があってのことかしら。でなければ……」

「でなければ?」

「話しになりません」


 ボカしてしまった。受け取れないとは怖くて言えない。


「なるほど言い分ごもっとも」

「そうでしょう。無益な戦、なぜあなたは起こしたのです」


 レイモンに害が及ばぬよう少し前に出る。この子だけは絶対傷つけさせない。言葉でもだ。


「無益じゃねーけど」

「あなたはそう言うでしょう。ですがラウルでも有益と言った者はいません」

「そりゃ利益供与者だからだ」


 どういう意味? 妙に堂々としている。


「誰が誰に利益を供与していたのです」

「お互い様かな。奴隷を売りさばいて武器を買う」


 奴隷? この国はまだそんなことをしていた?


「馬鹿なことを仰って。そんな話聞いたことありません」


 話にならないと手を振ってみせた。勇者は口の端を曲げている。


「外国だもんな。そりゃ知らない」

「証拠はあるんですか」

「山ほど」


 勇者は一枚の紙を手に取り、ひらひらと揺らせている。奴隷売買の内情が記されていると言いたいのだろう。だが、


「そんなものいくらでも偽造出来ます」

「外にいるぜ。ここは王の城だが首都はあっち側。西にある。怨嗟(えんさ)が聞きたきゃ案内してやる」


 正気なの。本気で言っている?


「待って」

「この城にも解放した奴隷と農奴、搾取され続けた民衆はいるぜ」

「ちょっと待って」

「奴らの怨嗟がなきゃんなことしてねーよ」

「ちょっと待ってってば!」


 つい大声を出してしまった。はしたなくもみっともない。

 レイモンがそれを見て口を挟んだ。


「民衆の解放が目的だったんですか」

「そうでもない。使わせてもらっただけだ。このままじゃ勝てない」


 違うの? てっきり解放者を気取って……いや気取ってはいる。いるが目的はそうでないと今はっきり言った。


「真の目的はいずこにやあらん」

「時代がかった言い回しだねえ」

「答えなさい」

「魔王をぶち殺す為だ」

「どうしてアルタニアが滅びなければいけないの?」

「役に立たないからだ。新生アルタニアは君らが仕切れ」


 核心を突いてきた。魔王討伐の為、考えはしたがどうしても繋がらない。


「国を滅ぼすことを正当化出来るとそう言うのですね」

「しつこいな。こういう国は一回やり直した方がいい」

「仕切れと言われても、実働部隊がありませんっ!」


 私達には少数の護衛と侍女しかいないのだ。それも都市国家で待たせている。今は三人、つまりクロウしかいない。


「いるよ。この国には優秀な人材がいる」

「誰がついて来るんですか……」


 いきなりやってきた余所者に誰が従うというのか。それが分からなければ答えになっていない。


「罪人をさぱっと始末すりゃ、わざわざやって来てくれたと納得するさ」

「罪人とは?」

「元の統治者共だ」


 王族じゃない。分かっていたけれど、それはそっちで殺ってよ!


「嫌よ、王族殺しなんて真っ平ごめん」

「そう言うな、何事も形式が大事なんだ」

「ふざけないで。残党がまだ残っているんでしょう? おちおち夜も眠れないわ」

「ならご実家の方が安心して眠れるのかね」


 もしかしてレイモンが話してしまっている。私達がどれだけ肩身の狭い思いをしてきたか。

 思わずレイモンを見つめるとかぶりを振っていた。


「何が言いたいの」

「仕切れと言いたい」

「出来たら苦労しないわ」

「出来るさ。人も物も金も仕組みも用意してやる」

「正統性が、ない」

「ある」

「どこに?」

「君の家系は元々こちらの出だ」


 勇者の突然の言は、衝撃を受けるには充分だった。


「母方の遠い祖先になるが血は繋がってるらしい。今の王族に殺されて逃亡したのは随分前だ」

「そんな話聞いたことないわ!」

「しないだろう。元々の血脈なんて、そっちの王家からすれば邪魔なケースもある。まあでも嘘じゃない。ちなみにこっちの人間は知ってるぜ」


 ……あれ、これ勝ち目出てきたんじゃないのかしら。

 一瞬何もしていないのに、凱旋したような気分になったのは何かの幻覚なんでしょうか。

 私、分かりません。 

・単独交渉。歴史的にみれば結構あるから凄い。

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― 新着の感想 ―
[一言] 賛否が分かれる作風でしたが楽しめました。 このスタイルを貫いてください!
2023/01/17 03:07 退会済み
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