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殺戮勇者の使い方  作者: 文字塚
ナルティア家と王女殿下の秘密
44/59

第44話 城内の戦い2

 ある程度説明を終えたのか、オーランはこの戦いの様相と意図を語り出した。


「敵方、彼らの目的標的はシスティーナ様とレイモン様になります。そうせいと我々がお薦めしたからになりますが」


 ちょっと待ってオーランさん、どういうつもりかしら。


「言うて我が国の最高責任者かっこ予定とその弟君ですから、とっ捕まえてさらってしまえば大金星。魔王様からそれはそれは大変ご大層な褒美を頂戴するのかもしれません。知らんけど」


 うん、会ったこともないから私にも全然分からないわ。


「ああ忘れてました。ミネルヴァさんには手を出すなと言ってあります」

「そうなの?」


 どうしてだろう。


「こちらの目的はあくまで忠誠心を確認すること。皆さんに張り切って頑張っていただくのに、南方の超一流魔法使いが出張ったら一瞬で片が付いてしまう。それは困ります」


 ほう、彼女そんなに強いんだ。後で親友になるよう命令書を出しておこう。国を捨てた私には友達もいないし。


「ああすみませんまだありました。サキュバスさんですが、これはこちらの協力要請に応えてくれたものです」

「そうでしたか。ずっと人間離れした飛び方してますね……」


 黒髪をたなびかせ清楚系サキュバスは宙を舞う、というか普通に飛んでいる。ドレス姿が闇夜のアルタニア城に映えまくってる。人間じゃないよあれ絶対。いやまあ詳しい定義は分からないのだけれど、このままだと私が人間じゃない認定されてしまう。そんな懸念をオーランはまたも察知したようだ。


「ご心配なく。ただの風魔法です」

「そうでしたか。無知でごめんなさい」

「まあ精霊魔法かもしれませんので、後でご本人に確かめてみましょう」


 さらりと言うけれど、やっぱり直接話し合うことになるわよね。私を慕う者か……私の影武者物サキュバスさん凄く活躍してて、宙に浮いては敵をおちょくっている。凄いぞサキュバス。今からお礼の品と親友証明書を用意しないと。感心しているとずっと黙っていたレイモンが口を開いた。


「ところで居館の正面玄関近くにいる、変わった格好をした人は何者ですか?」

「うん?」


 オーランは一言零し指摘された人物を探している。居館の正門はここからでは視認し辛い。どれだろうと目を凝らしていると、


「あ、おい勇者あれお前の知り合いだろう。戦場の無法者じゃないか」


 オーランが困り顔を浮かべた。私もようやく見つけ妙な格好した大柄な人物を認めることが出来た。変な格好。声をかけられた勇者は不承不承やってきてそれを確認した。


「ああ……あいつ何やってんだ。呼んでないし邪魔すんなよ。仕方ない止めに行くぞ」

「止めに行くって、何者なの?」


 私の疑問に、


「敵味方見境なく蘇生魔法を使いまくる戦場の荒らし野郎だ。戦場の無法者と呼ばれているがサキュバスと同じ系統だな。やってることが異様過ぎて悪魔扱いされる不遇な奴だ」


 なんでそんなことするの……改めて思い知るけど知らないことが多過ぎる。

 勇者が地上に行くというので私達も追随する。

 道中勇者が更に説明してくれた。


「あれは異世界日本の袈裟って呼ばれてる仏僧の装束だ。仏は知ってるだろ」

「知ってることは知っているわ。おとぎ話とか古代文明の存在と思っていたけど」

「あっちじゃ仏教は現役バリバリの一大勢力だ。真似事しやがって、転生者と接触したな」


 ああ、異世界日本の悪い影響がここにも。なんだか仏教とやらも流行りそうな予感がする。私も勉強ぐらいはするべきなのかしら。いや、まだ異端認定食らうわけにはいかない。と、それはともかく階段を下りながら勇者とオーランに確かめる。


「あなた言ったわよね、戦争の時間だって。でもこれのどこが本物の戦争なの?」


 この問いを聞いた勇者は鼻を鳴らし嘲笑い、オーランが簡潔に答えた。


「勇者達がいません」


 そのたったの一言に全てが集約されていた。確かにと納得するしかない。見たまま、文字通りだ……全ての疑問が氷解していく感覚を覚えつつ階下を目指す。

 私達は一旦二階で待機。勇者は先に地上に降り立ち、一人戦場の無法者こと「カガミ・カガミカ」さんに近づき説得を始めた。「やめてくれ」とか「いらんことすんな」とか、説得とは思えない言葉を使っているが。どうやら伝わったらしく、カガミカさんは勇者と共にこちらにやってきた。大柄、袈裟姿の男性カガミカさんは人間と言われればそうだし、違うと言われたらそうかもしれないと思える不思議な空気をまとっていた。彼は我々を前に口を開く。


「拙僧、また見境なく人助けてしまいました。拙僧いかんせん死んだ人間だけは助けてしまうのです。拙僧まだまだ修行中の身。どうか大目に見ていただきたい」


 ちなみに勇者曰くカガミカさんの蘇生魔法の成功率は十分の一程度で、同じく十分の一程度はゾンビ、アンデッド化してしまうらしい。それ人助けじゃないよね? 大目に見れないわよね?

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