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アサシン・ブラック

僕が王女様のために暗殺者になった話

作者: 仲仁へび



 魔法の粉と光りゴケが入ったランプが、部屋を照らしている。


 深夜、僕の部屋にやってきた幼馴染の王女様は目に一杯涙をためていた。


 一体何があったのかと問いかけると。


「ヨルン、どうしよう。私、こんな事になるとは思っていなくって」

「大丈夫です、王女様。僕が何とかしますから落ち着いてください」


 とても僕の口からは出せない事が起きたらしい。


 字の文には書き起こせない感じだ。


 僕は血が出るほど拳を握りしめた。


 どうして彼女がこんな目に合わなければならないんだ。







 そうだ、暗殺者になろう。


 人がそんな決意をするときは、どんな時だと思う?


 人に嫌がらせさせられた時?


 それとも人生のどん底に落ちて皆〇ねとか思ってる時?


 それともそれしか才能がない時?


 いや、違う。


 僕の知り合いが理不尽な目にあっている時だ。


 僕には幼馴染の王女様がいる。


 その王女様は人が良くて、天然で、どこか放っておけない性格をしていた。


 だから、よく面倒を見ているうちに仲良くなってしまったのだ。


 けれど、そんな王女様に問題が起きたらしい。


 王女様は人が良いから、良くない人間に騙される事があるのだ。


 それで、今の様に涙を浮かべながら僕に相談してくる。






 僕は、専用の黒衣に着替えて、部隊の仲間達を集めた。


 動く理由は十分だから、今日は一人で活動しなくてよさそうだな。


「王女の心に傷をつけた罪は、その身で償ってもらおうか」


 僕は綿密な作戦を立てて、ターゲットがいる目的地へ急いだ。







 豪華な豪邸。


 趣味の悪い装飾品。


 無駄に長い廊下を駆けて、足音を殺しながらターゲットがいる目的地へ。


 侵入者向けのトラップはすでに全部解除済み。


 人物侵入の感知魔法はすでに無効化。


 放置されているのは、解除するまでもなく分かりやすいトラップだけだった。


 やがて、僕達はその場所へとたどり着く。


 扉をあけて部屋の中へ入ると、その人間がのん気にベッドの上で眠りこけていた。


 こいつはやってはならない事をした。


 王女の使用人に毒を盛るなんて。


 僕は暗殺用のナイフを手に取る。


 こいつの調査はすでにすませてある。


 表向きには良い顔をしているが、裏では腹黒い事ばかりしている。


 改心なんて見込めない悪党だ。


 だから。


「死んでからあの世で罪を償え」


 僕はそのナイフを振り下ろした。







 任務を終わらせた後、僕は暗殺者になろうと決意した日の事を思い出す。


 毒をもられて倒れた僕。


 真っ青になってかけつけてきた王女様の顔。


 天井を写す視界。


 忘れたくても忘れられない思い出だ。


 王女様はあれ以来友達を作ろうとしていない。


 トラウマを克服できないからだ。


 王女様はいい人なのに。


 きっと普通なら多くの友人に恵まれていただろうに。


 だから僕はそんな王女様が、普通に生きられるように暗殺者になったのだ。


 後悔なんてしていない。


「今日は雨か。隠ぺい工作の手間が省けるな」


 光魔法の込められた街灯が裏通りを照らしている。

 そこにぽつぽつと水の雫がついた。


 空を見上げるとちょうど、土砂降りの雨が降り注ぐところだった。



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