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【現実世界恋愛の短編】ハレンチ学園シリーズ

暴力系幼馴染の暴力を全て躱したら号泣されたけど俺はセクハラ行為を決して止めない

作者: マノイ

「死ね!」

「や~だよ~」


 次々と拳が繰り出される度にカラフルな制服のスカートがひらりひらりと舞い踊る。

 少女は小刻みなステップを続けてスピード重視のパンチを幾度も放つが一撃たりとも当たらない。


「ひょいひょい~っとね」

「避けるな!」

「やだよ、当たったら痛いじゃん」


 どれだけ攻められようとも、少年は余裕の笑みを崩さない。

 それどころかあることを狙っていた。


「あっ!」


 あまりにも激しく攻撃をしすぎたからか、少女が躓いてよろめいた。


「危ない!」


 少年は咄嗟に少女の体を支えて事なきを得る。


 むにゅ。


 その手が豊満な双丘を鷲掴みにしていなければの話だが。


「~~~~!」

「う~ん、良い感触」

「揉むなーーーー!死ねええええ!」

「おっとと、危ない危ない」


 そしてまた冒頭に戻る。


 私立晴創館せいそうかん 中央ちゅうおう学園高等部。

 どこぞのギャルゲーかと思える程にカラフルで胸が強調されて巨大なリボンをつけた女子制服が目立つだけの普通の学校。

 この学校に通う立花たちばな 瑞華みずかは幼馴染の たに 修一しゅういちにセクハラされて激怒する毎日を過ごしていた。


――――――――


「ねぇねぇ、さっちん聞いてよ。修一ったら酷いんだから」

「あ~はいはい、ノロケはもうお腹いっぱいよ」

「ノロケじゃないもん!」


 修一に困らされ、そのことを親友に相談して軽くあしらわれるのもまた彼女の日常だった。


「どうせまた胸揉まれた~とかスカートの中覗かれた~とかそんなことでしょ」

「まだスカートの中は覗かれてないよ!」

「あれ、そうだっけ。いつ見られても良いように気を使ってるのに残念だね」

「ちょっ、そんにゃことにゃいから!」


 さっちんは知っているのだ。

 瑞華の鞄の中には替えの下着が沢山入っていることを。


「見られた時に嫌な顔されたらムカつくっていうか、身だしなみに気を遣うのは女子として当然っていうか、それ以上の理由なんか無いもん」

「さいですか、さいですか。まぁしばらくはその心配は無用じゃないかな」

「え?」

「いやだってあんたそんな立派なモノを持ってるんだから、誰だってそっちに吸い込まれるでしょ」

「~~~~!」


 乳袋のせいで強調されているとはいえ、瑞華のソレは女子でさえも思わずガン見してしまうほど立派だった。

 男子がスカートの中という聖域に興味を抱かないのも自然な事だろう。


「というかさ、前から聞きたかったんだけどあの変態の何処が良いの?」

「え?」

「事故を装って堂々と胸揉んでくる変態だよ。幼馴染とはいえ通報したり縁を切った方が良いんじゃない?」


 セクハラ行為を受け続けても、瑞華が修一に想いを寄せる様子に変わりは無い。

 それがさっちんには不思議でならなかった。


「べ、別に私は修一のことなんてなんとも思ってないんだから!」

「はいはい、そういうのは良いから」

「むぅ……」


 つい照れ隠しのツンデレを入れてしまうが、それをスルーすると素直になるのは瑞華の知り合いにバレバレだった。


「確かに修一はセクハラ魔人で変態だけど、あれでも良いところがあるんだよ?」

「そうなの?」

「うん、修一は昔っから私が困ってると助けてくれるんだ。格好良いんだから」


 ゆえに瑞華にとって修一はヒーローであった。

 今でも数々の名場面をリアルに思い出せる。


「ふ~ん、でもそれって打算ありそうだけどな。あいつのことだからセクハラする理由付けとか」

「…………」


 そしてそのリアルな思い出が、ピンクに塗りつぶされようとしていた。


 鎖に繋がれた猛犬に吠えられて身動きが取れなくなった時に庇ってくれたけれど、手を引く前に胸を触らなかっただろうか。

 友達とケンカして泣いていた瑞華を泣き止ませるために抱き締めてくれたけれど、不自然に胸元を強く引き寄せていなかっただろうか。

 怪我をした瑞華をおんぶしてくれたけれど、背中の感触を楽しんでいなかっただろうか。


「そ、そんなことないもん!」


 心当たりがありすぎて動揺する瑞華は必死に想い出を探った。


「事故に遭いそうになった時に身を挺して助けてくれたことがあったんだよ。自分が死ぬかもしれないのに助けてくれたんだよ。あれだけはえっちな気持ちじゃ出来ないもん!」


 逆にこの想い出が無かったならば瑞華の想いがどうなっていたのかが少し気になるところだ。


「あの変態男がねぇ。まぁ瑞華が良いなら良いけどさ」


 さっちんとしては、瑞華が勘違いしていて騙されているのならば強引な手段を使ってでも目を覚まさせようかと思っていたけれど、ギリギリセフトだったので瑞華の想いを優先させた。


「セクハラが無くなれば完璧なのになぁ」


 結局のところ、さっちんが最初に言ったようにノロケでしかなかった。

 最近彼氏と上手くいってないさっちんは、少しばかりイラっとしたので弄ることにした。


「でも谷君って、あんたの胸に興味が無くなったら他の女の子に手を出しそうだよね」

「え!?」

「だってそうでしょ。谷君が好きなのはあんたじゃなくてあんたの胸なんだから」

「ち、違うもん!」


 真っ赤になって焦る瑞華の姿に、してやったりと内心ほくそ笑む。


「違わないよ。だってあんた達、ただの幼馴染で付き合ってないんでしょ。好きな女の子が出来たらそっちに手を出すに決まってるじゃん」

「!?」


 さっちんの言葉に納得してしまったのか、今度は真っ青になってしまう。

 これだから瑞華を弄るのは止められないと、心の中でニヤニヤするさっちんであった。


「さっちんどうしよう!」


 今度は涙目だ。

 流石にここまで来ると罪悪感がムクムクとおっきする。

 そのため弄るのは止めてアドバイスしてあげた。


「簡単なことじゃない。あの変態があんたから離れないようにするの」

「へ?」

「分からない? さっさと付き合えって言ってんのよ」


 こうして泣きつかれるのは何度目か分からない。

 さっちんは辟易していた。

 そしてそれは他のクラスメイト達も同様だ。


 話を盗み聞きしていた何人もの女子がうんうんと同意している。

 おっぱい瑞華とそれぞれの好きな人が結ばれるのを防ぐために、さっさと変態ノーセンキューとくっついて欲しかったから。

 そして男子は逆にそれは困ると血の涙を流していた。


「いや、でも、別に今のままでも付き合ってるようなものだし、修一も私のこと好きだと思うし、今更ねぇ」

「ねぇじゃない! そんなんだからセクハラされるのよ。さっさと付き合ってセックスすれば欲求不満が解消されるんじゃない」

「せ、せ、せっく……ぷしゅぅ」


 煮え切らない態度にイライラが復活してつい言ってしまった。

 だが後悔はしていない。

 むしろずっと言いたかったことが言えてスッキリしていた。


「このままじゃ本当にあの馬鹿、他の女に手を出すよ。それでも良いの?」

「…………いやぁ」

「だったら行動しなさい!」


 と言いつつも、間違いなくそんなことにはならないとさっちんは分かっていた。

 何故なら修一は頑なに瑞華以外に手を出さないからだ。

 それどころか性的な目で他の女子を見る事すらない。


 明らかに瑞華だけを特別扱いしているのだ。

 明らかに瑞華が好き過ぎるのだ。


 そのことに気付いていないのは瑞華だけ。


「ほらほら、さっさと抱かれてきなさい」

「さっちん!」


 話は終わりだとばかりにあっちへ行けと手を振るさっちん。


「(抱かれたからって幸せになるとは限らないけどね、はぁ)」


 都合が悪くなるとすぐ抱いて誤魔化そうとする彼氏のことを思い出し、こっそり溜息をついていた。


――――――――


「危ない!」

「え、きゃあ!」


 乱暴な運転をする車から守るために修一は瑞華を抱きかかえて歩道の端へと移動させた。

 もちろんしっかりとお胸をホールドして。


「馬鹿! 死ね!」

「おおっとっと」


 珍しく瑞華の方から一緒に帰ろうと誘ってくれたのに、修一は良いムードなど作らずいつも通り。

 なお、このやりとりは校門を出てから三回目である。


「どうして修一は私の胸ばっかり揉もうとするの!」

「どうしてって、そこに山があるから?」

「死ね! 変態!」


 だがやはり何度殴ろうとしてもかすりもしない。

 幼いころから繰り返されてきたやりとりであるため見切っているのだ。


「いい加減、避けないで当たりなさいよ!」

「やだよ、痛いし。あ、でもハイキックなら当たっても良いかも」

「え?」

「ほらほら、かもんかもん」

「分かったわ。覚悟しなさい!」


 練習もしていない人がハイキックなど出来るはずもなく、足は修一の胸元付近までしか上がらない。


「やっぱり避けようっと」


 しかも軸足が少しふらついていて、修一が避けようとしたのでこのまま空振りして倒れそうだ。

 そうなると綺麗な足を擦りむいてしまうかもしれない。

 という言い訳で修一は自分を納得させていつもとは違う行動に出た。


「え?」


 避けずに、当たらずに、手で足を掴んだのだ。

 これでゆっくりと足を降ろしてあげればコケることはないだろう。


 もちろんそうはしない。


「おお~絶景絶景」

「きゃああああああああ! 放せ! 馬鹿! いやああああああああ!」


 めくれ上がったスカートを手で抑えて隠そうとするけれど、それが逆に丸見えよりも煽情的に見えてしまう。


 やったね瑞華ちゃん、毎日下着をチェックしてたかいがあったね!


「いつもはこっちに興味無さそうにしてるのに何で!」

「いやだって、スカートの中は自然に覗けないだろ」


 衝突したら何故かスカートの中に頭が突っ込まれている伝説のラッキースケベを体験したいけれど、それは衝突や転倒といった瑞華を怪我させる可能性があるため出来なかったのだ。

 妙なところで紳士である。


「うわああああああああん! うわああああああああん!」


 うわ、やべ、ぎゃん泣きしてる。

 慌てて手を離したが、もう時は遅い。

 あまりの羞恥に耐えられず、しかもその怒りを受け止めて貰えず、瑞華は人目も憚らず泣きじゃくってしまった。


 その幼い子供のような姿と豊満なボディとのギャップにより、修一のエロスな気持ちが膨れ上がっていることに瑞華は気付いていなかった。


「泣くなって、ほら、可愛い顔が台無しだよ」

「どさくさに紛れて胸を揉むな! もおおおお!」


 ハンカチを差し出しながら反対側の手で思わず胸を掴んでしまった。

 ここまでくると最早病気である。


「うわああああああああん!修一に汚されたああああああああ! もう誰もお嫁にもらってくれないよおおおおおおおお!」


「何言ってんだよ、俺が貰うから心配しなくて良いだろ」


「ふぇ?」


 号泣していたのがピタリと止んだ。

 そして修一の言葉の意味を理解するとみるみるうちに全身から蒸気が立ち昇る。


「ぷしゅぅ」


 付き合うどころか突然のプロポーズ。

 激しく動揺しながらも、瑞華はさっちんの言葉を思い出した。


『さっさと付き合ってセックスすれば欲求不満が解消されるんじゃない』

『ほらほら、さっさと抱かれてきなさい』


 修一と両想いならば、これはいずれ避けては通れぬ行為だ。

 しかも修一は瑞華の体を気に入っているので、是非ともしたいと言うだろう。


 瑞華だって嫌なわけではない。

 修一にセクハラされるたびに、その晩は修一のことを想って【自主規制】。


 それならば、このタイミングで素直になってそういうことをすれば、昼間はセクハラが無くなり普通の恋人として幸せな日々を過ごせるのではないだろうか。


「あ、あの。修一!」


――――――――


「ねぇねぇ、さっちん聞いてよ。修一ったら酷いんだから」

「はいはい、今度は何よ」

「はじめてなのに容赦なかったんだよおおおお」

「え、なに、ホントにヤったの?」


 お前が焚きつけたんだろうがとチラっと思ったが、そのおかげで修一と結ばれたので今は無視することにした。


「しかもね、あんなに激しかったのに、セクハラ止めてくれないんだよ!」

「あらそう、良かったじゃない」

「良くないもん!」


 さっちんは、なんとなくそうなるんじゃないかと思っていた。

 男なんて四六時中発情しているようなものだから、落ち着くわけが無いだろうと。

 むしろ極上の体験を知ってしまったからこそ、昼間もより積極的になるだろうなと。


「おお~い、瑞華」

「ほら、旦那様が呼んでるわよ」

まだ・・旦那様じゃないもん!」


 どうせこいつら高校卒業したらすぐ結婚するのだろうが。

 彼氏との仲が更に悪化していたさっちんの心の中は闇に包まれていた。


「何か用?」

「このまえ俺の家に来た時にこれ忘れてったろ」


 修一はポケットから白いハンカチを取り出したのだが、色ボケ中の瑞華にはそれが何故か自分の下着に見えてしまった。


「きゃああああ! なんてものを学校に持って来てるのよ!」


 慌てて奪い取ろうとするもバランスを崩し前につんのめり、例のごとく修一によって体を支えられる。

 その手は当然胸に触れているのだが、今回はそれだけではなかった。


 ちゅっ


「!?」

「!?」


 これまたお約束で事故キスをしてしまったのだ。

 まぁ事故では無いのだが。


「ああ、そういうことね」


 色ボケカップルの茶番を間近で見ていたさっちんはそのことに気が付いた。


「あんたも好きでセクハラされてるんじゃないの」

「な、な、ち、違うもん!」

「だって今、わざとキスしたでしょ。普通はとっさに上向かないよ」

「…………はうぅ」


 滑って後ろにひっくり返ろうとしているならまだしも、今回は前に倒れそうになっていたのだ。

 その場合は自然と顔が下の方を向くはずだ。

 少なくともその状況で上を向くのは不自然だ。


 しかも抱き寄せられた絶妙なタイミングで上を向き、自分から修一に顔を寄せていた。

 まるでキスして欲しいとねだるかのように。


「そうだったのか! 気付かなくてごめん。それじゃあ遠慮なく!」

「違うもん! 揉むなああああああああ!」

「おっとっと、危ないなぁ。ベッドの中ではあんなにしおらしかったのに」

「~~~~! 馬鹿! 死ね!避けるなああああ!」

「あっはっはっは」


 おそらく今までもよろけるフリをしてわざと揉まれていたのだろう。

 結局のところ、ただのバカップルだったというだけのお話。

 そんな二人を見てさっちんはため息をつくのであった。




 私立晴創館せいそうかん 中央ちゅうおう学園高等部。

 どこぞのギャルゲーかと思える程にカラフルで胸が強調されて巨大なリボンをつけた女子制服が目立つだけの普通の学校。

 そんな学校に通いたいと思う女の子は普通では無かった。


 世間はこの学校をハレンチ学園と呼ぶ。

ハレンチ学園シリーズ開始です。


念のため補足しますが、晴創館中央学園の晴の読みを変えて「ハレ」、館中で「ンチ」です。

下ネタ系のお話は全部この学園に責任を押し付けようと思います。

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― 新着の感想 ―
[良い点] まんざらでもないんやろなぁ
[一言] それもこれもすべてハレンチ学園ってやつの仕業なんだ
[一言] 「好きな女の子が出来たらそっちに手を出すに決まってるじゃん」 モブ女A(いや勘弁してよ) モブ女B(瑞華にくっつけといてよ) モブ女C(なんなら言い出しっぺが責任取れよ)
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