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夢見る僕と非道の姫  作者: 名録史郎
第一章 僕と姫
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部活動ハーレム系

 放課後僕らは部室に集まり、部活動を始めた。


 いい感じのホワイトボードが余っていたので、僕はそれに本日のお題を書く。


「今日は、ハーレムものについて考察していきたいと思う」


 トウヤが呆れた顔をした。


「お前はよく自分の彼女の前でそんな話できるよな」


「もちろん、ののかが世界一魅力的だよ」


「わたしも悠久が一番だよ」

 僕とののかは見つめあって自分たちの世界に入り込む。


「だからって人の前でイチャイチャするのやめてくれないかな」

 僕は二人の世界から戻ってきて、トウヤに言った。


「あくまで、小説の技法としての話だし、以外かもしれないけど、ハーレムものは女性にも大人気だよ」


「イケメンいっぱい出てくる奴のことか?」


「逆ハーレムモノも人気だね。でも、今言ったのは、1人の男がいっぱいの女性にモテる話のジャンルのことだよ」


「女性がそんな話好きなわけないだろ」


「そう思うだろ。でも実際は、少女漫画でかなり多い。もちろん女性むけなので、一人称は女性視点になるので、メインヒロインの視点で描かれる。どういう話になるかというと、『私の彼はいろんな女性にモッテモテでも本当に好きなのは私だけなの』ってパターンが多い」


「それは多いかも」


 ののかも同意してくれる。


「男性向けハーレムは『なんかよくわからないけど、特殊な能力に目覚めてモテモテになっちゃった。困っちゃうな』パターンが多いかな。どちらの場合も共感できるように主人公が普通だったり、非モテだったりするのが多いかな」


「非モテなのにハーレムって矛盾してないか」


「共感する方が優先だからね。世の中の男性は大体非モテだから」


「悠久、お前自分が彼女持ちだからって酷いこというなよ。お前が主人公だったら、だれもお前に共感しないからな」


「悠久先輩はハーレム系の主人公にも向きませんね」

 そういわれると、昨日の夢の件が少し心に痛む。

 僕が向いている主人公はないかもしれない。


「ともかく小説で、女性が出てこないってことはまずないし、女性が魅力的でなければ、小説も読む気が失せるだろう。魅力的な女性を書く練習として、ハーレム系はいいよ」


「そういわれると毛嫌いするのも、よくない気がしてきたけどよ。やっぱり書き方がわかんないだけど」


「男性陣は、男性ハーレムもの、女性陣は、女性ハーレムものを書いてみようか。まずは登場人物から先に考えた方がいいかな、キャラを考える際には、属性を意識するといいよ」


「炎とか水とか草とか?」


「何言ってるんだ? どっかのモンスターじゃないんだから。女の子の属性といえば、妹とか姉とか、あとはそうだな、幼なじみとか」


「幼なじみって最高だよね」

 ののかが恍惚とした表情で、しっとりと言った。


「そうだね」

 僕も同意する。


「だから、お前らちょこちょこのろけをはさむなって」


 僕は咳払いをして、話を元に戻した。


「転校生とか、外国人、アイドルとかもいいと思うよ」


「悠久、切り替え早いな」


「それに体型など体の特徴を組合せる、巨乳、貧乳、高身長、低身長、ふくよか、ぽっちゃり、スレンダー、金髪、茶髪、黒髪、さらに雰囲気を加える、清楚、天然、ツンデレ、高飛車、一人称も大事だね。私、あたし、僕、うち自分の名前呼び」


「組合せ、多いな」


「もちろんメインの組合せだけでもみたことないのもあると思うから、オリジナリティ出せると思う。あとは特殊なものが好きとか嫌いとか、実は彼女には秘密があってなんてものを盛り込んでいくと深みがでてきていいとおもうよ。まずは自分の好みの女性を思い浮かべて書いてみるといい」


 そう僕がいうと、トウヤはちらりとレミちゃんを見た。

 お前は本当にわかりやすいな。


 でもまあ、モデルが近くにいるのはいいことだ。

 とはいえ、ハーレムものなのだから、一人だけではいけない。


「とりあえず、十人ぐらい考えてみようか」


「いや多いだろ。ホラー系みたいな怖い理由言わないだろうな」


「ハーレム系の場合は、人数が多いとあたり判定が大きくなるって効果があるよ」


「当たり判定?」


「ストライクゾーンとかとも言うよ。例えば最近の女性アイドルグループはやたら人数が多いだろ? あれは、1人でも推しになってもらえればチーム全体を応援してもらえるからね。例えば1人につきファンが100人いる30人のグループならグループ全体ではファンは3000人になるよね。物語も一緒でヒロインが1人だけだとヒロインが気に入らないと読んでもらえないけどハーレム物なら誰か1人が気に入ってもらえると読んでもらえるというわけ」


「まあ、俺は硬派だからハーレム物なんて読まないけどな」


「そういうむっつりスケベに使える高等テクニックがあって」


「むっつり言うなよ」


「メインテーマを別のものにしておくんだよ。よくあるのはバトルものかな」


「無視するなよ。で、どうやってハーレムものとバトルものを組合せるんだよ」


「さっきのに少し足して『なんかよくわからないけど、特殊な能力に目覚めて女の子をいっぱい助けてモテモテになっちゃった。困っちゃうな』って形にして、むっつり向けには『特殊能力に目覚めて戦うバトル物だよ。その過程でたまたま女の子いっぱい助けちゃたらモテモテになって困っちゃうな』とカモフラージュするとむっつりの罪悪感が減るってわけ、さらに一番万人うけしそうな子をメインに据えて純愛にもっていけたら女性にも人気でるかもしれないね」


「完全に俺が好きな最近のアニメそれだ。ハーレムモノなんて欲望の赴くままに書けば簡単だって思っていたけど奥が深いんだな」


「ヒロイン側ができたら主人公も考えないといけないよね。男向けハーレムの主人公はヘタレがいいよ」


「なんで?」


「決断力があったら、普通にエロいことするだろ」


「確かに。それだとジャンルがかわるな」


「その通り、ただの官能小説になっちゃうね」


「ハーレム物の読者はかわいい女の子がみたいだけで、かわいい女の子が汚れるところがみたいわけではないので、手出ししない主人公というのが必須になるのでヘタレって設定はかなり楽でいいよ」

レミちゃんが手を挙げた。


「先輩、女性むけの男性キャラはどうかけばいいですか」


「こちらはかなりハイスペックにしたほうがいい。容姿端麗、頭脳明晰だね。ただこちらもエロいシーンにならないように、誠実さを全面に押し出しておきたいね」


「だったら男向けも誠実だったらヘタレじゃなくてもいいんじゃないか」


「容姿端麗で頭脳明晰な奴がモテモテだったらトウヤはどうおもう?」


「腹立たしい」


「つまりそういうことだよ。例外はいっぱいあるから、まあ、あくまで基本くらいに思っておいて」


「なるほどなぁ。とりあえず、設定考えていくと姉と妹がいる三兄弟のまんなか、幼なじみっと主人公はヘタレで……モテる特殊能力って例えばなに?」


「そうだね。例えば、怪しげなきのみを食べたら、魅了するフェロモンがでるようになったとか、祠を壊したら、女の子にモテる呪いにかかったとか」


「呪いなのかそれ? モテるんだからいいことじゃないか」


「主人公にとってはモテたくもないのにモテてしまうというスタイル」


「なるほど。他は?」


「定番はキューピッドの矢に当たってしまったとか」


「よく聞くな。初心者の俺でもかきやすそう。それにしよう」


 トウヤは鉛筆を握りしめて書き出した。


「キューピッドって本当は男の神なんだけど、女の天使が使ったことにして、ヒロインの1人にするのもいいよ。人外って属性も人気があるからね天使以外にもサキュバスとか吸血鬼とか」


「そうだな。じゃあ、女悪魔も足してみるか」


「いいね」


 コツをつかんだのか、トウヤも筆が乗ってきている。

 トウヤは自分の意志でハーレム系の小説を書こうとはならなかっただろうから、書かされているということもプラスに働いているのだろう。

 ののかとレミちゃんもお互いイケメンの設定を書いたノートを交換して楽しそうに読んでいる。

 なんだか部活してるなって感じがする。


「書いていると楽しくなってくるな」


「そうだろう」

 僕はトウヤの言葉にうなずいて見せる。


「それにこれだけの人数を書けば、俺の好みもわからないだろう」


「うーん?」

 それは、ばればれだけどなあと思いながら、親友だから黙っといてあげることにした。

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