これから一緒に生きる人2
意気揚々と両親にカミリを報告しに行くと、勝手に用意されていたお見合いが、ぱあになったと散々文句を言われてしまった。
それどころか高い金を払って魔法学校に入学させたのに、コネのひとつもつくらなかったなどと散々聞き飽きた昔の愚痴まで言われて気が滅入る。
親なんだから、学費ぐらい出したぐらいでぐだぐだいわなくてもいいだろうに。
ちゃんと学園で学んだことで、診療所をやれている。
認めるのは嫌だけど、第二王子からもらった給料で診療所も自分で建てた。
自立はしている。
もういい加減認めてほしい。
……。
本当は、もっと直接言えばいいのに、強く言えない自分がいた。
情けないことになんだかんだと言いながら、診療所は、両親の家からそれほど遠くはない場所にたてている。
結局最後は助けてもらおうと甘えているから。
「ごめんなさい」
私は帰りの道でカミリに謝った。
私と一緒にさんざん文句を言われていたのに、カミリは普段と変わりがない。
「いや、いいよ。別に、まあ、マホマの為にお見合い用意してたんだから、いい親御さんじゃないか」
「そうかしら……」
私を学園に入学させたのだって、王都の貴族とコネクションを持ちたかっただけなのだから、お見合いも、自分のコネクションのためだろう。
「そういや俺、貴族かときかれて、思わず違うと答えたけど、よく考えたら、俺、今でも魔王軍幹部なんだよな」
「そうなの?」
カミリが仕えていた魔王女様は死んでしまたのは、聞いていた。
「王女から、解任するなんて話は来てないから多分、給料も毎月入ってるし」
「王女とも面識あるの?」
「なにいってるんだよ。最初にこの町助けに来たときだって、王女の指示だぞ」
「そうだったわね」
貴族なんかより王女とコネクションを持てる方が有意義だろう。
父に仕事はなにかと聞かれて、カミリは傭兵と答えていた。
経歴なんて特に伝えなかったので、
傭兵が王女と知り合いだなんて普通思わない。
「それに、オヤジさん、多分俺の会社の取引先だな」
「会社? 取引先? 何の話」
「ああ、俺副業で社長やってる」
「社長が副業ってどういうことなの」
そんなパワーワード聞いたことがない。
「カミリネットワークっていう会社で魔物から取った素材を流通させてる」
「私もたまに使っている……」
カミリと名前が入っていても、つながりがあるなんて露とも思わなかった。
そんなことしているなんて知らなかったから。
壊れても同じものを買い替えて身につけているから忘れていたが、よく考えるとあった時から武器は金ピカの一級品。
たしか国から支給されたわけではなく、自分で用意したと言っていた。
相当お金持ちでなければ買えるようなものではなかった。
「教えてやったらオヤジさん機嫌よくなるんじゃないのか。マホマのオヤジさんなら安く卸してあげてもいいし」
「もう、知らない。一生教えてあげない」
父なんて、ずっと知らないところで損ばかりしておけばいい。
貴族でも何でもないただの成金なのに、あんな態度なのがいけないのよ。
カミリは初めて会ったあのころから、ずっと偉そうな雰囲気が微塵もない。
ぱっと見は田舎者の冒険者のままなのに、
世界を股にかける社長で、魔王軍幹部と肩書がとんでもないことになっている。
初めて会ったときは、ただ腕っぷしが強かっただけなのに。
今では随分たくましくなっている。
肉体以外もいろいろと。
私は隣に並んで釣り合いはとれているのだろうか。