山桜
その物語の題名は『山桜』
春スキーにやって来るお金持ちの御曹子と、山小屋の管理人の娘の悲恋もの。
山桜が咲き始め、春スキーの頃合いになる頃、東京からスキー部の青年たちが山のホテルで合宿するのだ。
そのリーダーで、美しい青年が、山小屋の娘に恋をする。
この物語の舞台は、戦後間もない昭和らしく、
スノボが無かったり、若者がギターで、童謡みたいな歌を暖炉の前で歌ったりと、突っ込みどころ満載だった。
作者は、真面目に純愛路線で書いていて、そのレトロ感と、奇抜さで注目を集めた話だった。
不幸なことに、主人公が、御曹子に恋をする辺りから、加点が増え、ランキングに載るようになると、からかう人が感想欄に現れ始めた。
はじめは、真面目に感想欄に答えていた作者は、ある日を境に返信をしなくなり…そして、そのまま、フェイドアウトしてしまった。
それが、母親を早くに無くした御曹子が、病気になり、冷やし中華を食べたがって、ヒロインが奮闘するあたりだったのだ。
なぜ…冷やし中華なんだろう?
ツッコミたい気持ちはわかる。
が、年配の…初めての連載で、混乱する作者には、感想欄に溢れる質問や意見はキャパオーバーだったのだと思う。
それとも…冷やし中華の隠し味を探せなかったのか……
少なくとも、冷やし中華のタレの謎だけは私には、答えられる。
私は、長い説明を聞いて、それから、自分に向けられた質問を聞くと、大きく深呼吸をして話始めた。