決めた
「これに決めたわ。」
私は、直感的に選び、依頼カードをとると、受付に向かう。
「まってよ…大丈夫なの?」
ユリエは、心配そうに私を見るが、私には、自信があった。
私も、同じ経験をしたことがあるのだから。
「大丈夫。この小説…私、見たことあるし、この作者のエッセー好きだったの。行ってくる。」
私は、ユリエにそう言って、受付をすます。
閲覧はオープンとクローズが選べる。
勿論、オープンを選んだ。
良い答えには、ギャラリーが花を投げてくれるから、結構、良い稼ぎになる。
そして、私は、北国の雪山の見える別荘の桜の下にいた。
それは、依頼のあった小説の舞台でもあった。
私を待っていたのは、一人の上品な老女。
彼女もまた、期間限定アバターに変身している。
「こんにちは。商業ギルドからきました。」
全く、探偵にしたなら、探偵事務所にすればよかったのに…
商業ギルドなんて、使いなれないワードに私は混乱した。
「あなたが…ミチコさん、ね。はじめまして。わたくしは、そうですね…トリペッタと名乗りましょうか。」
白髪な女性のアバターは…確かに、西洋人でも通用する…少女漫画風味だった。
「はじめまして。ご依頼の件ですが…、」
「冷やし中華の隠し味。あなたはどう、お考えになったのかしら……。」と、ここで、トリペッタは、首をふった。
「ごめんなさい。ミチコさん…7年待ったの。
その答えは、物語を思い出しながら、おうかがいしたいわ。」
トリペッタは、嬉しそうにそう言った。
と、同時に、私のところにホットワインの贈り物が届く。
それは、花、50本分のアイテムだ。
彼女の説明を聞くご祝儀のようだ。
「え…ホットワイン…良いんですか?本当に?」
私は、嬉しくなる。
『ファイナル』のイベントで貰えるアイテムは、期間中に使いきらないと消えてしまう。が、その分、イベント限定のアイテムは充実している。
日頃なら、決して手に入れられない、有名な絵師の挿し絵をサイト内ではあるが、作品に添加もできるのだ。
ホットワイン一杯では、そこまでは行かないものの、そこそこのアイテムと交換できる。
「ええ、私が話し終わるまで…、暖まってくださいね。」
トリペッタは、そう言って笑った。