2話ダンジョン
屋敷の長い通路を明智は急いで進む。
果たして、屋敷の中は、既に、女主に書き換えられていた。
ここは、インターネットの仮想都市。
屋敷を迷路に変えるなんて、簡単なものなのだ。
とはいえ、観音開きのドアが続き、お約束とばかりに丸い石が転がってくるのは、トップゲーマーの明智も閉口するが。
屋敷に住む、女主は、魔術師ではない。
汎用の迷路を作り上げるのが精一杯だ。
明智は、30分もしないうちに、どこかでやっただろうクラシカルな迷宮攻略に慣れ、すぐさま鏡の間から、女主のいる秘密の通路を見つけ出す。
私相手に…大した時間稼ぎにもなりませんでしょうに。
明智は、暗いトンネルを切ない気持ちで進む。
ここは、ストーリーを作ったり、それを見たりする想像の都、ヘルモポリス。
ここでは物語やコメントが通貨の役割をしている。
ヘルモポリスに登録すると、IDと魔法の石板を手に出来る。
そこで書いた物語を売り買いできる…そんな設定だ。
が、金と素人が絡んでくると、金儲けを目的とした未完が増える。
そうなると、物語を買いに来る旅人が減り、問題になる。
読者の中から、最終回を読む権利が叫ばれ、1つの法律が決定する。
課金を目的とした作品は、7年、未完で放置、連絡が取れなくなると、この世界での二次作作成の著作権が一部、フリーになる。
勿論、これは拒否する事も可能だ。
が、大半は、これに同意して作品を書く。
なぜなら、そうした方が読者が安心して課金してくれるし、著作権が無くなるわけではないからだ。
そして、年に一度、ヘルモポリスに一週間だけ、特別に読者に選ばれて本になる物語が生まれる。
今年の世話役は、明智と女主の二人であった。
それが、こんな事になるとは。
明智は、地下のモンスターを撃ち殺し、女主の待つ、神殿に向かった。