表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/24

01、 羽のついたルビーのネックレス


 近くの街から5キロほど離れた草原で、ゴブリンの大群に囲まれている。そのゴブリンの中に今回のクエストの対象である『羽のついたルビーのネックレス』を付けているゴブリンがいることを確認した。



「ルコ、こいつらで間違いないからお願い」

「かしこまりました。少々お待ち下さい」



 俺の言葉に頷いたルコは、右手を上げてゆっくり払うように動かした。その瞬間、右手の動きに合わせてゴブリン達が声も出さずに倒れていく。

 倒れたゴブリンに近づいて、目当てのものである『羽のついたルビーのネックレス』を取るとそのままルコのもとに戻った。



「今回はアイテムの回収だけだから、こいつらはこのままでいいか。どれくらいで起きるんだろう?」

「はい。個体差はあるでしょうが早い者だと30分ほどで意識が戻るでしょう。この付近には強いモンスターもおりませんから、その程度でしたら問題ないかと思われます」

「じゃあ戻るか。そろそろ時間になるし」



 俺がそう言うと「承知しました」というルコの返事を聞いた直後には、すでに街の門付近の林に転移していた。

 周りに人がいないことを確認し、林から出て門へ向かう。そこにはこの2ヶ月で見慣れた門番が立っていた。



「よう、兄ちゃん。探し物は見つかったか?」

「はい。無事にゴブリンから回収してきました」

「相棒の扱い方も、クエストこなして大分掴んできたって感じか?そっちの兄ちゃんも、もっとモンスター倒して強くなれよ!」



 そう言って俺の肩をバシバシ叩いてルコを見ている門番は、ルコからなんの反応もないことを気にもせずに門を開けてくれた

 俺たちはそのまま一番近いギルドへ向かう。この街はちょっと大きいこともあって3箇所のギルトがあるが、クエスト完了の報告はどこに出しても受理される。

 途中、防具屋の前で集まっている人達を見かけたが「新イベが討伐かもしれない…」なんて言葉が聞こえて、そういえば来週から新しいイベントが始まることを思い出した。



「来週からのイベント、なんだと思う?」

「そうですね。前回が特定のアイテム回収だったので討伐も考えられますが、時期的に季節イベントも考えられます」

「あ〜、確かにもうすぐゴールデンウィークだしなぁ。季節イベントって言いつつ、時期はランダムで年4回開催ってのもどうなんだろ。10年もやってるからネタがなくなったのかなぁ」

「それは私では判断できません。過去のゴールデンウィークに行われる季節イベントの場合、街を巡るものや普段行くことができない場所でのものが多かったかと思います」



 そうなるとイベントに参加するならこの街から出ないといけなくなるのか…。ちょっと不安な気持ちになる。

 ルコが強いのはわかっているのだが、まだ始めて2ヶ月の俺は新人である。ベテラン勢の強さもわからないしイベント自体、前回のアイテム回収が初めてだった俺が、なにかやらかしてしまうかもしれない不安の中でうまくできるかわからない。

 そんなことを考えている間にギルド【檸檬】に到着した。ちなみにこの街にある残る2つのギルド名は【熊】と【糖分】だ。予想がつく人もいるかもしれないが、街の名前は【蜂蜜】である。

 変な名前だと思っていたけど、この街自体が黄色をメインにしているからか今では違和感はない。目に痛くない配色というのもあるが、慣れもある。あと、他の街や国だって似たような感じだと聞いたのもあるからかもしれない。

 ギルドに入って真っ直ぐ受付カウンターに向かうと、何人か座っている中に眼鏡をかけた黒髪のお姉さんがいた。このお姉さんも門番同様、この2ヶ月で何度も会っているので俺の中での警戒心はほぼない。



「お疲れ様です。クエスト完了の報告ですか?」

「はい。これなんですが、依頼品である『羽のついたルビーのネックレス』で合ってますか?」

「確認します。……間違いないようなので報酬のお渡しになります。ご確認ください」

「ありがとうございます。今日はもう帰ろうと思っているんで報酬は口座の方に入れてもらっていいですか?」

「了解しました。それではこのままログアウトの準備をしますね」



 そう言ってお姉さんはパソコンのような物でカタカタと何かを入力した。今日はクエストを受ける前に買い物もしたから、なんだかんだで3時間ほどログインしていた。

 日によってはもっと長時間することもあるが、今日はこの後予定もあるしあまり待たずにログアウト出来ればいいなぁと入力が終わるのを待つ。



「タイミングが良かったみたいですね。すぐログアウトできますよ」

「良かった!じゃあルコ、今日はここまでだ。お疲れ様」

「お疲れ様です、海人様。またいつでもお呼びください」



 俺に向かって一礼したあと、シュッとどこかへ消えたルコを見送り、お姉さんの「それでは、またお待ちしております」という言葉を聞いたと思ったら、視界が真っ暗になった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ