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私には家族がいない。

初めまして。Ayaです。

私は、明晰夢が得意で毎日のように夢を見ます。

夢っておもしろいですよね。

「ありえないから〜」てものから「え、正夢になりそう!」てものまで。

夢をいつか小説にできたらなってずっと考えていました。

普段は映像女優を目指しているので、表現をすることがお仕事です。

小説を描くことも表現をすることですよね。

初めて描くので至らない点があるかもしれないですが

私のちょっぴり切なくて、でもとても愛のある温かい夢のお話に

ぜひ最後までお付き合いください。


私には、家族がいないーーー


私は、生まれたときから施設で育てられた。

そして、5歳のときにある家に引き取られた。

私が10歳の時、その家には女の子が生まれた。

そう、私だけ血が繋がっていなかった。

私は、引き取られたという事実を子どもながらに理解していたので

その事に悲しむことはなかった。

本当の母親や父親の記憶があれば、また違っていたのかもしれない。

5歳からその女の子が生まれるまでの約5年間は、とても可愛がられていた。

でも、それが幸せなのかはわからなかった。

当たり前の“幸せな家族”がわからないからだ。

唯一この家族と血の繋がっているその子は、生まれつき身体が少し弱かった。

命に別状はないけれど、両親はほぼ彼女に付きっきりだった。


彼女が、5歳になろうとしていた。

私は15歳。彼女が生まれてからは、学校の送り迎えがなくなった。

でも、仕方がない。別に悲しくもなかった。

だって、彼女は生まれつき身体が弱いから。

やっと生まれた本当の自分たちの子ども。

私が引き取られた理由は聞いていないけれど

きっとずっと子どもができなかったのだと思う。

やっとの思いでできた子どもは、身体が弱い。

その悲しみに比べれば

少し相手にされないことくらいなんてことはなかった。


食事はちゃんと用意してくれるし、暴力とかそういうのもない。

ただ、会話がないそれだけのこと。


中学生になった私は、いつも通り自分で起きて

テーブルに用意されていた朝食を食べて、準備をして学校に向かう。


「お姉ちゃん、いってらっしゃい」

「いってきます」


彼女とだけ、一言交わして。

そんな日々がこれからも続くと思った。

引き取ってくれた両親も、その両親と血の繋がった彼女ももちろん大切で

私の家族に変わりはなかった。


でも、やっぱりどこか居心地の悪さを感じていた。

身体が大きくなっていくにつれて、孤独感も大きくなっていった。


でも、それを両親や彼女に言うことはなかった。

言ってしまったら、何もかもが終わってしまうと思ったからだ。


彼女が小学生になった。私は、高校生。

相変わらず彼女の身体はとても弱く、咳が止まらない日もあった。

医師から、空気のいい街に住んだ方が良いと言われたらしい。

両親はすぐに引っ越しの手続きを進めた。

私は、引っ越しをするからすぐに準備をしてくれとだけ頼まれた。

友人とのお別れを悲しむ時間さえ、与えられなかった。


そして、引っ越してきた街はもと居た場所よりも遥か遠くの田舎街。

何も知らないこの街で、これから何が起こるのだろう。


高校の手続きがまだ終わっていないため、私は毎日暇だった。


この街の空気は本当によくて、彼女の症状はとても落ち着いた。


私は、彼女の症状が落ち着けば、昔みたいに両親が可愛がってくれる

のではないかと、少しだけ期待していた。

しかし、そんなことはなかった。


夕食中、会話に入れていないのは私だけだった。

両親と彼女は、仲良く3人で夕食の時間を楽しんでいた。

まるで、私だけがこの家にいないみたいだった。

でも、こんなのは慣れっこだ。大したことはない。


「うるさい!!!」

あれ、叫んだりなんかしちゃって、私どうしたの?


「お姉ちゃん、どうしたの?」

「ごめんなさい・・何でもないです」


「お姉ちゃん、思春期かもね。びっくりしたね〜

しーちゃん大丈夫だった?」

父が言った。私は、涙を必死に堪えた。


「ごめんなさい。ごめんなさい・・」

私は、涙が溢れないうちに隠すように自分の部屋へと逃げた。


本当は、誰かに来てほしかった。

母親でも父親でもどっちでもいい、慰めてほしかった。

でも、結局誰も来てはくれなかった。


次の日、昼間くらいに起きてリビングに向かうと

いつも通りテーブルには朝食が置かれていた。

でも食べる気にはなれず、私は外に出かけた。


本当にこの街は田舎だ。

辺りは緑だらけで、畑がたくさん並んでいる。

引っ越してからは高校に通っていないので、外に出ることはなかった。

適当に散歩をしていると、ある河川敷に辿り着いた。

私は、とりあえず座って川を眺めながらぼーっとしていた。


2時間ほど過ぎただろうか。

私は、家にいない時間の幸せさに気が付いた。


私は生まれた瞬間ときから一人。

これからも一人で生きていくのだと、そう思った。


「何してるの?」


そんなことを考えていると、同い年くらいの男の子が声をかけてきた。


「え、いや、何もしていないです」


「学校は?学校の時間じゃない?」

「学校は・・行っていなくて・・」

「うっそ、俺も!一緒だね」


確かに、その男の子は私と同い年くらいのはずなのに

私と同じでこんな時間に、しかも制服すら着ていなかった。

そして、片手には買い物袋が握られていた。


「どうして学校行っていないんですか?」


「俺、両親いないんだ。お金もないし、自分で働いて生活してる」


驚いた。こんなにも私と同じ状況だったこの人に。


「・・そうなんですね。一人暮らしですか?

自分一人で生活するのって大変じゃないですか?

働いているって何をしているんですか?寂しくないですか?」


気付いたら私は、相手の気持ちも考えずに無神経なことを聞いてしまった。

男の子は、驚いた顔で固まっていた。


「あ、あ、あの・・その・・ごめんなさい」

「ううん、少し驚いたけどね。えっと・・」


男の子は、全て包み隠さずに話してくれた。


小さい頃に事故でご両親を亡くし

行く宛もなく私と同じように施設で育った。

男の子は、ずっと施設が嫌いで中学校を卒業すると同時に施設を出た。

しかし、高校へ行くお金がなく、諦めてアルバイトで生活をしている。


今は夕食の買い物帰りで、学校にも行かずにずっとぼーっとしている

私を見かけて、気になって声をかけたという。

そして、歳は私の一つ上だった。


「そろそろ帰らないと、日が暮れるよ」


私は、思いやりもなく人の心の中に土足で踏み込んでしまったのにも

関わらず、男の子は怒らずに全てを素直に私に話してくれた。


そして、学校に行っていないということに普通の家庭ではないと

悟ったのか、男の子は一切私のことを聞いてはこなかった。

きっと、私から話すまでは聞かないようにしていたのかもしれない。


男の子は、家の近くまで送ってくれた。


「また、あの河川敷で話してもいいですか?」

「うん、もちろん。今度、よかったら夕飯食べにおいでよ」

「え、いいんですか?」

「いつでも。あと、歳一つしか変わらないし敬語じゃなくてもいいからね」

「う・・うん。わかった。私、ひなた」

「俺は、祥平」


家に帰宅すると、先ほどまでの幸せな時間は、もうどこにもなかった。

本当は、何をしていたのとか心配するでしょとか何でもいい

一言くらい言ってほしかった。

でも現実は、おかえりの一言さえもなかった。


そして、嫌いな夕食の時間。

いらないと言おうと思ったけれど、私は生憎今日一日ご飯を口に

していなかったため、お腹が空いていた。


こんなにも苦しい気持ちになるのなら

一層の事虐待でもしてくれればいいのにと思った。

私だけ食事を出してくれないとか、暴力とか。

でも、食事は出してくれるし、手をあげられたことなど一度もなかった。


両親は、私をどう思っているのだろうか。


相変わらず、私だけが3人の仲良さそうな会話に入ることができなかった。


次の日、私はまたあの河川敷に行った。

そうすれば、またあの男の子に会えると思った。

でも、2時間経っても3時間経っても男の子は現れなかった。


結局、その日に男の子が河川敷に来ることはなかった。


それから毎日、私は河川敷で男の子を待ち続けた。


「もう会えないのかなあ・・」

私は、もう諦めかけていた。


あれから1週間が経とうとしていた。

私は、いつになったら高校に通えるのだろう。


でも、きっと高校に通い始めたらあの男の子にはもう会えない。


複雑な気持ちになった。


今日も河川敷へと向かった。

日の暮れが、私にきっともう会えないのかもしれないと思わせるようだった。


「何してるの?」


あの時もそうだった。

そうやって優しい声で聞いてくれた。


「ひなたー?」

「え?」


気が付くと、隣にはあの男の子が座っていた。


私は、なぜだか涙が溢れていた。


「あ、これは・・ごめんなさい・・」


男の子は、何も言わずに泣き止むまで頭を撫でてくれた。


「今日、夕飯食べていく?」

そして、男の子は笑顔でそう言った。

私の答えは、もう決まっていた。


「うん!!!」


今日は、両手いっぱいの買い物袋。

もしかしたら、初めから私を誘ってくれようとしていたのかもしれない。

それにしても、こんなにも多くの食材には驚いた。

まるで、幸せな家族の夕食の始まりを思わせるようだった。


私は、半分持つと言ったけれど、重いから大丈夫だと男の子は言った。


私は、帰りがさらに遅くなれば、さすがに両親も心配してくれる

のではないかと期待もしていた。


男の子の家は、私の家からはかなり離れた場所にあった。

アパートで、とても広いとはいえない家。

一人暮らしってこういう感じなのだと思った。


男の子は、帰宅するなり夕食の支度に取り掛かった。

「何か手伝うよ」

「ひなたはいいよ。テレビでも観てて」


同じ高校生とは思えない手つきで、夕食がどんどん出来上がっていく。

1時間も満たないうちに完成に近づき、料理がテーブルに運ばれてくる。

テーブルに並ばれた豪華な食事に感動して、私は固まっていた。


「どうした?」

「ううん。すごいなあって。同じ高校生とは思えないよ・・」

「はは。大したことないよ。

まあ、でもずっと高校行かずに仕事と家事だけをやってきたからね」


テーブルを見ていると、私たちは2人のはずなのに

皿と箸は3つずつ並んでいた。不思議に思い男の子に


「ねえ、どうしてお皿とお箸・・」


ピンポーン


そう私が聞き終える前に、玄関の鐘が鳴った。


「お、グッとタイミング!はーい!」

と男の子は、玄関に向かった。


「ただいまー!しょーちゃん!」

「りょーちゃん、おかえり!」


玄関から、ランドセルを背負った男の子が現れた。


「あれー新しい家族?」

その男の子は、私の方を指差して言った。


「りょーちゃん、違うよ。それと、人のことを指差しちゃだめでしょ」


「あの、えっと・・」

私は、何が何だかわからず混乱していた。


「あ、ごめん!言ってなかったよね。この子は遼汰りょうた

5歳で小学生になったばかり。本当の弟のように想ってる。

ここには、りょーちゃんと2人で暮らしてる」

「・・そうなんだ」


急なことで驚いたけれど、みんな同じで両親がいないのだと

何だか心強かった。


それから、3人で食事をした。私も、会話の中に入れている。

とても幸せな時間だった。


あの家族に本当の子どもが生まれるまでは

私もこんな風に両親と楽しく会話をしながら食事をしていた。


きっと、彼女が生まれてからはあの家に私の居場所はなくなった。


彼女は、私をお姉ちゃんだと言ってくれる。

私は、正直彼女を妹だと思ったことは一度もない。

でも、恨んでもいない。


私を5歳の時から育ててくれた両親に、やっとできた唯一の家族。

彼女がいなければ、両親は”両親”にはなれていなかったのだから。


久しぶりの幸せな時間。

気が付いたら、また私の目からは涙が溢れ出ていた。


「お姉ちゃん、どうしたの?」

「ご、ごめんね。ご飯がすっごく美味しくて・・」

「だって、しょーちゃん。しょーちゃんの作るご飯はすごいね!

魔法でもかけたの?」

「かけたよ〜!りょーちゃんとひなたお姉ちゃんがいつまでも

ずっと元気でいられますようにって」

「ありがとう・・」

「うん」


祥平くんは、私の頭をまた優しく撫でてくれた。


夕食が済み、少し3人でゲームをした後、私は帰ることにした。


「嫌だ〜嫌だよ〜お姉ちゃんとずっと一緒にいたい!嫌だ嫌だ!」

遼汰くんは、私が帰るとわかった途端に泣き出してしまった。


「お姉ちゃん、また来てくれるよ。りょーちゃん、泣かないよ?

お姉ちゃん、帰れなくて困っちゃうでしょ?」


祥平くんが、説得をしてくれている。

少し経つと、遼汰くんは疲れて寝てしまった。


祥平くんは、家まで送ってくれた。

帰り道、私は祥平くんに全てを話した。

両親がいないこと、5歳の時に引き取られて家族ができたこと。

そして、その5年後に両親の本当の子どもが生まれたこと。

今とても寂しい思いをしていること。

聞かれていないのに、自然と祥平くんに話している自分がいた。


祥平くんは、やっぱり私から話をするまでずっと待っていてくれたらしい。


「また、辛い時はいつでもうちにおいで。

ほら、りょーちゃんもひなたのこと好きみたいだし」

「ありがとう。こんなにも必要とされるのなんて初めてで・・すっごく嬉しい。

お母さんたちは、きっとただ子どもがほしかっただけなんだと思う」

「言いたいこと言ってみたら?もし、それで本当に辛くなったら

ひなた、りょーちゃん、俺で本物よりももっともっと深い家族に

なろうよ・・なんちゃって。はは」


祥平くん、ありがとう。


家の玄関を開ける。時刻は、夜の10時を回っていた。

怒られたい。怒られれば、私も家族なのだと実感できる。

期待を膨らませながら、リビングに向かう。


「ただいまー・・」


「ああ、帰ったの。みんなもう寝てるよ。私も今から寝るところだから。

夕飯あるけど、食べないなら片付けといて」

そう言って、母は寝室へと向かおうとした。


「・・お母さん!」

私は、思わず引き止めてしまった。


「何?今日も朝早かったから眠いの」


「あ・・えっと・・明日、お昼ご飯いらないです」

「そっ」


母は、そそくさと寝室へ入って行ってしまった。


「はは・・なんだこれ」


私の淡い期待は、一瞬にして崩れ去った。

もう、この家に私の居場所はない。祥平くんに会いたい。

祥平くんと遼汰くんといつまでも仲良く生きていきたい。


私は、気が付いたら外へと走っていた。

ただひたすらに走り、息が苦しくなる。

どうして、私はあの両親に引き取られたのだろう。何のために。

やっぱり、ただ子どもがほしかっただけで、それは私じゃなくても

誰でもよかったんだ。


ここまでお付き合いいただき、ありがとうございます。

嬉しい限りです。

まだまだ続きがありますので、よければ最後まで読んでみてください。

お気軽に感想もお待ちしております。

よろしくお願いします。

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