第97話 未知の大陸
俺たちは一瞬の間に足元に発生した大穴に落ちた。
その瞬間から、他のみんなの姿は見えなくなる。
そして、その直後に俺はどこかの上空にいることに気づいた。
なんと気まぐれな天地の落とし穴だろうか。
俺たちは共に戦うということを決意し、再出発しようとしていたというのに。
しかし、俺の考えでは天地の落とし穴の発生には必ず意味がある。
その意味を考える上ではまず俺がどこにいるのかを知っておきたい。
俺は周りを見渡して、周辺の様子を観察した。
遠くには集落のように見える場所があるが、それ以外は山や森が広がっており、緑豊かな土地だというのが分かる。
俺がハクアの千里眼の術で見せてもらった大陸の様子から判断すると、ここは五大陸の中央に位置する大陸ではないだろうか。
俺がそう思っていると、俺の周りを、大きな生き物が回りながら降りていった。
この生き物もハクアの千里眼で見たが、それは南に位置する大陸だったはずだ。
空を飛べるということを考えると、すでに大陸間を移動してきたという可能性もある。
何にせよ、俺を襲う様子はないようで俺は安心した。
俺は、その生き物が降りていった近くに着地する。
俺が顔を上げると、そこにはさっきの生き物の隣に立つ一人の少女がいて、こちらをじっと見つめていた。
水色の髪が顔の横で束ねられ、黄緑色の瞳は少女のミステリアスな雰囲気を増長させる。
俺は、この少女に何か怪しまれているような気がして、自分から話しかけることにした。
「やあ、俺はアマノ・シン。その生き物を連れているところを見ると、君はここより南の大陸から来たんだよな?」
少女は、無言のままコクリと頷く。
「その大陸は何て言うんだ?実は俺は今いる大陸の名前すら知らないんだけど」
この少女の雰囲気から、俺の質問に答えてくれるか不安だったが、少女は静かに口を開いた。
「私が来たのはミシャルタ大陸のミシャルタ共和国。ここはカルダン大陸のカルダン連邦」
「そうなのか。わざわざ教えてくれてありがとう。それで、君の名前は」
俺が少女に名前を聞こうとした時、少女は俺の言葉を遮ってきた。
「どうやってここに来たの?上から降ってきたけど」
この少女の疑問は最もなものだった。
それが理由で、俺を警戒しているかもしれないので、俺は正直に答えることにした。
「知っているかどうか分からないけど、天地の落とし穴っていう珍しい現象があるんだ。それで俺の意思とは関係なくここに来ちゃったってわけ」
「そう。あなたが嘘をついているとは思わないけど、ちょっとおでこを貸して」
少女はそう言いながら俺に近づいてきた。
この少女は謎に包まれているが、敵意があるようには思えない。
俺は少女の言ったように前髪をかき上げて額を前に出す。
少女は、俺の額に額をくっつけてきたのだった。