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第92話 謎の接触

 別の世界に行っていたという私の言葉に驚いた様子は見せなかったが、ベルラースは紅茶を一口飲んでから言葉を発した。



「そうか。まさか君が天地の落とし穴にね。確かに君の消息の絶ち方は不自然だった。しかしその可能性は考えていなかったよ」



 ベルラースは読んでいた本を閉じ、立ち上がってさらに語り続ける。



「なぜなら、天地の落とし穴でたどり着く行き先というのはこの世界に限定されているものだと思っていたからだ。君の体験は特殊な状況を意味する」



 天地の守護者は元々天地の落とし穴の研究のために作られた組織だと聞いている。



 そのため、天地の落とし穴の経験者、特に私のような特殊な場合だと詳しい情報を得たがるのだ。



 それが、私が正直に話そうか迷った訳であるが、私は自分の目的も主張しておくことにした。



「それで、天地の守護者内では何か動きはあるのですか?特に、魔王や勇者に関して」



 私が天地の落とし穴に入った理由、それはとある噂に由来する。



 それは、天地の落とし穴は必要なタイミングで勇者を出現させるために発生するのだということと、魔王への対抗手段として発生するということだ。



 しかし、天地の守護者には欠陥があるということを私は知っている。



 だからこそ、私以外の仲間については情報を流すわけにはいかないのだ。



「そうだな。まず、天地の守護者で起こった出来事で大きなものがあるんだ。それから話すとしよう」



 天地の守護者はかなり閉鎖的な組織であるため、内部に入らなければ情報は得にくい。



 天地の落とし穴で別の世界に行っていたという私に、情報源としての価値を見出したはずのベルラースは正直に話してくれるはず。



 私は、ベルラースの次の言葉を待った。



 次にベルラースが発した言葉は、衝撃的なものだった。



「魔族から接触があった。彼らは天地の守護者の研究の情報が欲しかったようだ」



「そんな。しかしそれでは、勇者を見つけ出すという目的も魔族は知っていたのですか」



「そこなんだが、少し疑問が残っていてね。彼らによると、勇者はもう発見したと。それも別の世界でね」



「別の世界で、ですか。それなら天地の落とし穴にはどういう意味があるというのですか」



「それは分からない。だが彼らが言うには魔王が復活したのちに天地の落とし穴についての情報を渡してほしいというのだ」



「そんなことが起きていたんですね。それで、組織の方針は?」



「大体二つに分かれているよ。魔族の言っていることを本当だとして、魔王復活後の組織の権威を得るために魔族に協力すべきだという者たちと、魔族を信用せず、勇者を探すべきだという者たちにね」



 魔族の傾向として、人間と対等な関係を築くとは思えない。



 しかし、天地の守護者の持つ情報は、確かに魔族としても貴重なのかもしれない。



 そう考えた者が、魔族に協力することを検討しているのだろうと私は思った。



「それで、どう思っているんですか。ベルラースさんは」



「私は元より起きた事象しか信じないのでね。しかし、別の大陸が出現した今、変化の時だというのは間違いないだろう」



「確かにそうかもしれませんが、魔族は信用できないのでは?天地の落とし穴についても、正確な事を魔族が知っているとは限りませんし」



「そうだな。確かに魔族を信用できるかは難しい話だ。しかし、彼らの話には続きがあるのだよ」



 ベルラースの意味深な言葉に、私は様々な想像をしたが、彼が言おうとしていることは分からなかった。



「続きということは、魔王復活後の話ということですよね。それは一体何なのですか」



「それはまだ話せない。しかし、君が鍵を握っているのではないかと、私は今思っているのだよ」

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