第8話 イノムント
見かけに惑わされたが、どうやらこのインプは敵らしい。
俺は剣を握りしめ、敵に向かって切りかかる。
「やれやれ、血の気が盛んですねえ!カオスウェーブ!」
イノムントは隠し持っていた自分の背丈ほどの杖を取り出し、魔法を詠唱した。
空中で身動きがとれなかった俺は、黒い衝撃派を剣で受けて後ろに飛ばされた。
「ハンズバインド!」
イノムントから紫色の大きな手がこちらに向かって飛んでくる。
俺は横に避けたが、その紫色の手は追尾してきた。
俺は、無視してイノムントの方へ走った。
「カオスウェーブ!」
イノムントが最初と同じ魔法を詠唱した。
俺は今度は体制を低くして攻撃をかわしながら敵に近づき、横に飛びながら剣を振り下ろした。
俺は剣に込めた魔力を炎に変え、火炎斬を放つ。
剣を振り下ろす途中で、バリアのようなものに当たったが、そのまま破ることに成功した。
俺の剣が、敵の首を切り裂いた。
敵の頭部は飛んでいき、胴体部分は前に倒れた。
「シンさん、お怪我はありませんか!?」
アカリが声を出しながら駆け寄ってきた。
「まさか魔族まで倒してしまうなんて!さすがです」
「魔法を詠唱して使ってくるから、戦いやすかったよ。敵の前に発生したバリアは何なのか分かる?」
「あれはおそらく魔力障壁です。武器に込めるのとはまた違う魔力の使い方ですね。シンさんの火炎斬の威力には耐えきれなかったようですが」
魔力の使い方にはいろいろあるようだ。
俺たちがゆっくりと会話をしていると、突然足元に大穴が開いた。
「シンさん、危ない!!」
アカリがこちらに飛びついてきて、二人とも大穴に飲み込まれていく。
「シンくん!!アカリ!!」
キースの声が遠くに聞こえると同時に穴は閉じた。
◇
その頃、シンたちの戦いの現場では、イノムントの頭部が転がり続けていた。
「これはアンビリバボー!ワタクシの魔力障壁をいとも容易く叩き割ってしまうとは!」
イノムントの頭部がしゃべると、首より下の部分から、胴体が生え始めた。
目まぐるしい速度で胴体は成長し、どこからか取り出したローブを羽織る。
「これは、なかなかの有力候補ですねえ、また様子を見に来るとしますか!」
イノムントは、シンたちが大穴に飲み込まれたことを、この時点ではまだ知らないのであった……。