第84話 予想外の合流
-アキラ視点-
僕は遠くで何かが爆発するような音と振動を感じ取ったため、シュウたちが戦闘を始めたのだと気づいていた。
そのため、僕は人魚姫を連れて牢屋から移動していた。
人魚姫は下半身を人間のように変えることができたが、今まではそのことを隠していたようだ。
腰に巻いていた布を蹴って歩きづらそうにしていた人魚姫は、突然廊下を走り出した。
「私の仲間がすぐ近くまで来ています。早く合流しましょう」
なぜ人魚姫に他の妖怪が近くにいることが分かったのか僕には分からなかったが、人魚姫の走るその先にはシンたちの姿があった。
「人魚姫様!よくぞご無事で」
人魚姫にコッジと見知らぬ妖怪が駆け寄る。
「二人とも、ここに来るまで大変だったことでしょう。よく私の元までたどり着いてくれました」
僕も遅れてシンたちの元へ追いつく。
「まさかアキラが人魚姫を連れているとは思わなかったぞ。それに、どうやってこんなところまで来たんだ?」
「いろいろあってね。でも、シンくんたちだってここまで来てるじゃん。そこの妖怪は人魚姫の護衛の方かな?」
「これは失礼した。オレはビトリ、人魚姫様の護衛の一人だ」
「ビトリの妖術で人魚姫の居場所が分かったんだ。ほら、そこに浮いてるだろ」
僕はシンに言われて初めて人魚姫の方を霊視して見た。
そこにはトビウオの姿をした霊が浮かんでいた。
どうやらこれのおかげで人魚姫は仲間が近くにいることに気づいたようだ。
ビトリのことは分かったが、もう一人僕の知らない人物がいた。
それは白髪で眼鏡をかけ、杖をついた老人で、シンたちの前を歩いていたことからここまで案内してきた人物であることが窺える。
「勝手に侵入してしまい申し訳ありませんでした。あなたはこの建物の関係者ですよね?」
「ああ、儂はダルゾンだ。事情は聞いたよ。それについては詳しく話したいのだが、まずは戦いを止めなくてはならんのでね。先を急ごう」
ダルゾンと名乗ったその男は足早に歩き始める。
戦いというのはシュウたちのことだろうと僕は察しがついた。
僕たちはすぐに大広間までたどり着いたが、大広間の入り口で何やらダルゾンは壁の中の操作をしていた。
その後、ダルゾンは大広間へと入り、僕たちも後に続いた。
「そこまでだ!戦いは終わりにしてもらおう」
ダルゾンの声に部屋にいた三人はこちらを向き、戦闘は終了した。
「地雷は解除してある。皆の者、こちらに集まるのだ」
銃騎士長と呼ばれていた男はすぐにこちらに向かってきたが、アカリとシュウはその様子を見た後で歩き始めた。
「ここも随分と荒れてしまったな。場所を移すとしよう」
そう言うとダルゾンはまた移動し始めた。
その移動中に僕たちはシュウとアカリに事情を説明した。
シンたちがこの建物に入った後はすぐにダルゾンが出てきて、仲間がいるのではないかと聞いてきたらしい。
仲間がいると答えたシンたちはその後すぐに大広間に案内されたようだ。