第76話 アジトとの繋がり
僕は敵の来る方を見ているため回転した壁に気づいていないシュウの肩を叩いて現れた入り口を指差した。
敵が曲がり角を曲がってこちらに向かってくる直前だったため、僕たちは何も考えずに回転した壁の中へと入った。
僕たちが入ると、壁は一回転して元の位置に戻り、仕掛けを完全に隠すようにはまった。
壁の中は灯りが無く、真っ暗で何も見えない。
僕は光魔法を手のひらに発現させて辺りを照らした。
「隠し通路か。よく見つけたな」
「たまたま仕掛けに手が当たって作動しただけだよ。それにしてもしっかりとした隠し通路だね」
隠し通路の床にはアジトとは違い石が敷き詰められている。
アンダールートのイメージとは一変して貴族が住まう街のような雰囲気だ。
しかし、そんな造りをしておきながら灯りは一つもない。
おそらくは、アンダールートのメンバーでさえもあまり利用しない通路なのではないのだろうか。
「ここまで来ると人魚姫を見つけ出せる可能性も高くなってきた気がする。だから僕の妖刀身隠の能力を二人に説明しておくよ」
「手の上で光っているのは刀の能力ではないのか?」
「これは光属性の魔法だよ。ファンディオ出身者固有の能力だね」
「そうか。では妖刀の能力というのは何だ」
「刀は常に能力で見えないようにしているんだけど、刀を抜かないとその真の能力は使えないんだ。それで、その能力は僕の姿を完全に消すことができる」
「奇襲や暗殺に向いている能力だな。使いどころを誤れば無意味になってしまいそうだが」
「そうかもしれない。それで、もし人魚姫を見つけることがあれば敵と戦うためにこの能力を使うかもしれないから頭に入れておいて」
「分かりました。その時は私もサポートします。できればこのまま人魚姫を見つけ出したいですね」
僕たちはそのまま隠し通路を進んでいった。
隠し通路にはいくつか分かれ道があったが、いずれもそのどちらかの道は行き止まりになっていた。
おそらくは僕たちが入ったような入り口が他にもあるのだろう。
そういう意味では、アジト内の移動をする際の近道にも使えるのかもしれないが、こんな大掛かりな通路をそんな目的では造らないだろう。
それに、この通路はやはりどこかへ続いているような感じがする。
やがて隠し通路への入り口へと続く分かれ道は見られなくなり、一本道が長い距離続いていた。
僕たちはかなり歩き、これはアジトではないどこかへ繋がっているようだと話をしていると、出口とみられる扉があった。
扉は鉄製で、頑丈なようだが鍵は付いていないため、開けることができた。
扉の向こうは個室になっていた。
「頑丈な扉で入り口が塞がれていた。その割には、怪しいくらいに何もないですね」
「この隠し通路に入った時みたいに仕掛けがあるのかもしれない。探してみよう」
僕たちは、この小部屋を隈なく調べ始めた。
「アキラさん、光魔法でこの辺りを照らしてください。この部分だけ色が褪せていないんです」
僕が光魔法で照らすと、そこには四角い凹みがあった。
僕がその凹みを押すと、横にある壁が動き始めた。




