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第73話 街に蔓延る組織

 俺はハクアとコッジと共に市場の女店主に俺たちが今いる国について聞いていた。



 どうやらここはギンガル帝国という国の帝都アデスティアという都市らしい。



 港に着いた時の港の広さと船の多さから、なんとなくこの都市の大きさについて予想していたが、沿岸部にあるこの都市が帝都だとは思わなかった。



 しかし言われてみれば女店主が宮殿だという街の方に見える大きな建物には時計塔もあり、この都市でも一際目立つその高さから重要な建物だと分かる。



 ギンガル帝国は漁業と造船業が盛んな国で、大陸の周囲に散らばる島々との貿易も盛んに行われている。



 そのため、ギンガル大陸に沿って東に船で移動するのは物資の補給上は難しくないだろうということだった。



 俺はここで問題となっているアンダールートなる組織について尋ねてみた。



 すると、女店主は急に小さい声になってこう言った。



「アンダールートはこの街を仕切っている連中だよ。あんた、悪いことは言わないからアンダールートについて聞くのはやめときな」



「でも、連中は悪いことにも手を染めてるんじゃないんスか?」



「あいつらがすることについて語るのはあたしらの間じゃタブー視されてるのさ。どんなことをしてるかなんて考えちゃあならないんだよ」



「そんな組織をギンガル帝国の政府はどういう風に扱っておるのじゃ?帝国としても放っておくわけにはいかんじゃろう」



「アンダールートはかなり力を持った組織でね。帝国としてもなかなか手が出せないでいるみたいよ。それに、アンダールートの利益はある程度政府にも還元されてるって話も聞いたことがあるわ」



 人魚姫を誘拐した組織はこの国で好き放題やっている大規模な組織で、誰もその組織に逆らおうとはしないらしい。



 人魚姫を早く助けたいからか、コッジはさらに女店主に質問をしようとしていたので、俺たちはコッジを抑えた。



「あたしが知ってることはそれだけだよ。さあ、もう行った行った」



 俺たちは追い出されるように女店主の店を後にした。



 それからもいくつかの店で必要な物資を買いながら聞き込みを続けた。



 しかし、アンダールートのメンバーの人数が多いからか、その情報にはばらつきがあった。



 高利貸しをしているやら街で営む店だけでなく市場でも場所代を請求するといった話に加え、街で人を襲い、盗みを働いているという噂まであった。



 このアンダールートという組織の存在が大きいのかもしれないが、この国はランデリア王国に比べて治安が悪いように思う。



 それに、話を聞いているとこの街はかなり広いということが分かってきた。



 内陸部に行くほど住む人は減るらしいが、遠くになれば人魚姫を捜すのは難しくなってくるだろう。



 俺は、コッジに他の仲間はどうしているのか聞いてみた。



「コッジ、他にも妖怪の仲間が人魚姫を捜してるって言ってたよな。今どういう状況なのか分からないのか?」



「それは分からないッスね。でも何か分かれば連絡があるはずッスよ。それに、きっとあいつらなら手がかりを見つけてくれるはずッス」



「大した自信じゃのう。何か特殊な力でも持っておるのか?」



「そうなんスよ。仲間の一人でリーダーのビトリはトビウオの妖怪で、いくつかの妖術を使えるんス」



「いくつかの妖術を使えるのであれば頼もしいな。その妖術は人魚姫を捜すのに役立つのか?」



「ビトリはトビウオの霊を作り出せるんス。その霊が、人魚姫を捜すのと、オイラへの連絡手段になるんス」



「なかなか貴重な妖術を持っておるのう。その妖怪が頼みの綱かもしれんな」



「そうも言ってられないッスよ。オイラが潜入に失敗した時点でこっちは遅れてるんス。だから、早く聞き込みを再開するッスよ」



 俺たちは話をしながら物資を船まで運んでいた。



 コッジの仲間に任せきるわけにもいかないので、俺たちはその後街の方へ向かうことにした。

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