第64話 魔法使いへの風当たり
俺たちが王都を脱出した翌朝。
俺たちは、宿の外で出発の準備をしていた。
「俺、思ったんだけどアキラとアカリは今からでも王都に戻った方がいいんじゃないのか?カガン島なら俺一人でも向かえるし」
「今更戻ってもきっと許してもらえないよ。それにアカリとは、インベルで魔法で何かを疑われたときのことをよく話していたんだ」
「そうなんですよ。私は零番隊の隊長を止める時にもう魔法を使ってしまいましたし、アイルス出身者同士、旅は道連れですよ」
「二人とも、ありがとう。二人がいればこれからのことも前向きに進められる気がする」
俺たちは、カガン島を目指して出発した。
カガン島までは何の障害もないので、朝のうちにナラクの橋にたどり着くことができた。
俺たちは馬から降りて橋を渡る準備をする。
「橋の渡り方なんだけど、まずは霊視して狐を探して、見つけたらただひたすらにその狐について行けばいいんだ。ここからは話はせずに、後ろを振り返らずに渡らなければならない」
二人は頷き、俺たちは歩を進めることにした。
馬から降りて、馬も連れて歩いていく。
俺たちがナラクの橋に入ってしばらくすると、早速狐が出てきてくれた。
俺たちはその狐についていき、狐のペースで先へと進んだ。
前にカガン島から渡ってきた時のように、いろんな妖怪が姿を現したり、声がしたりするが、すべてを無視する。
『人間だな、直ちに立ち去れ!』
前に渡った時に身につけていた仮面がないため、人間であることが何らかの存在に見抜かれてしまい、強く怒鳴られるが、それでも俺たちは進み続ける。
その後も様々な存在に邪魔をされ続けたが、なんとか狐を見失わずに渡り切ることができた。
俺は狐にお礼を言って、アキラたちと共にハクアの小屋を目指そうとした、その時。
「ナラクの橋が騒がしいと思って来てみれば。よう、久しぶりだな。人間」
ベニカガとアオカガが姿を現した。
「シンくん、知り合い?」
「悪いけど今日は相手をしている暇はないんだ。それに今戦えば多分俺たちの方が強いぞ」
「確かに人数の上では貴様らの方が多いな。よし」
ベニカガはそう言うと大きく息を吸い込んだ。
「お前ら!出てこい!!」
ベニカガが叫ぶと、周りの木々から様々な妖怪が続々と集まり始めた。
鎧を着た猿の妖怪、石のような見た目の妖怪、黒い布に包まれた妖怪。
「俺たちは狐の妖怪のハクアに会いに来ただけだ。何にもしないから通してくれ」
「そうは言ったってあんた、魔族の技を使うんだろ。ベニカガから聞いたぞ」
「魔族の仲間かもしれないお前たちをこの島に入れるわけにはいかんのだ」
「最近は魔族があちらこちらで悪さをしておる。よってお主らを通すわけにはいかん」
妖怪たちは通してくれそうもなく、俺が馬を降りようとしたその時。
見慣れた青白い火が俺たちの前に現れるのだった。