第６０話 吹き荒れる運命
地面が大きく揺れ始めた直後、男が口を開いた。
「時間が来たようだ。さらばだ、アマノ・シン。あとは任せたぞ、エルゼフ」
男が木陰に隠れると、そこから巨大な体で堅そうな鎧をした男が現れた。
この揺れのことを何か知っていたのか、あの男は。
俺が思考を巡らせていると、鎧の男が斧を振りかぶってきた。
俺は敵の攻撃を避け、妖力を込めて首の辺りを狙った。
だが、敵の鎧にはほとんど隙間がなく、俺の攻撃は弾かれてしまった。
なおも揺れは続いている。
敵はまたしても俺に向かってきて、斧で攻撃してきた。
俺は敵の攻撃を避け続ける。
相手のこのスピードならおそらく逃げることもできるだろうが、こいつはあの仮面の男の仲間だ。
ならば、これはあの仮面の男の正体を暴くためのチャンスではないだろうか。
地面が揺れ続ける中で俺は思考をまとめると、男の頭に斬りかかった。
妖炎斬をつかい、男の鎧兜を切る。
敵の鎧兜は地面に落ち、敵の顔が露になる。
敵は両生類のような顔をしており、人ではないことが分かる。
見た目としては魔族のような感じがする。
ただ、魔法を使ってこないことを考えると妖怪である可能性もある。
「お前、魔族か？」
「うがああああああああ」
その鎧の男は俺の質問には答えずにまた斧を振りかぶってきた。
これはおそらく、イエスということだろう。
俺は、敵の攻撃を避け、今度は敵の首を狙って妖炎斬を使った。
敵の首が綺麗に焼き切れた。
敵の言葉が分かったわけではなく、曖昧な返答をするところからなんとなく魔族だと思って殺したが、良かったのだろうか。
俺がそう考えていると、揺れが収まった。
もうあの仮面の男に追いつくことはできないだろうが、魔族の仲間だとするならば、世界間の移動ができるのも納得だ。
俺が和合隊にこのことを報告しようかと思っていると、一人の男が俺に話しかけてきた。
「お前、和合隊の者だな？」
それは青い髪をしていて、紺色の服を着ている見覚えのない男だった。
「ああ、そういうお前は誰なんだ」
「お前の技を見たぞ。妖怪の連続殺人事件の犯人もお前だな？」
「何を言ってるんだ。そんなの知らないぞ。それに、こいつは魔族だ」
「その殺し方には共通点がある。知らない振りをしても無駄だ。何より許せないのは、お前が十番隊隊長のジェスタを殺したことだ！」
青い髪の男は俺に斬りかかってきた。
