第50話 真の実力者
霊眼解放という妖術の中の秘術を使ったジーネストはハクキューに攻撃を仕掛ける。
ジーネストは両手を使ってハクキューに攻撃するが、ハクキューは回避に専念しているためほとんどの攻撃が命中しない。
ハクキューは後ろに下がるだけでなく左右にも動き、追い詰められないようにしている。
上半身を左右に傾けて攻撃をかわしたり、フットワークを使って動いてかわしたりしている。
こうして見ると、動く際に足先に妖力を込めて動きを俊敏にしていることが多い。
試合開始時の動きもそうだが、これは参考になる妖力の使い方だ。
その後もジーネストの攻撃は続き、ハクキューは防戦一方となるのかと思いきや、ハクキューも攻めに出た。
ジーネストの連撃をかいくぐり、左へかわしたところで腹に右手で攻撃した。
しかし、ジーネストは攻撃を耐え、右手でハクキューの右腕を掴む。
さらに最初と同じパターンのようにハクキューの体を空中に上げてから引き寄せて左手で攻撃した。
ただし今回は、ハクキューは空中で見事にジーネストの攻撃を避ける。
しかも掴まれている腕の部分を妖力でガードしているのが分かる。
ハクキューはジーネストの右腕に蹴りを入れて腕を振りほどき、距離をとった。
握りしめによる攻撃も妖力でガードしているために今回はダメージを負っていないようだ。
それでも、霊眼解放がある限りはなかなか攻撃が通らないように見える。
「なあ、霊眼解放の持続時間ってどれくらいなんだ?」
「人にもよるんだろうけど、三十分くらいだって聞いたことがある」
「三十分!?なんだよそれ、チートじゃないか」
攻撃を受けずに腕を掴まれた場合でも妖力でガードしなければならない。
そんな状況が三十分も続くのはさすがのハクキューでもきついのではないか。
「でも、この勝負だとどうなるかは分からないね」
アキラが意味深長な一言を言ったが、ジーネストは続けて攻撃に入る。
ハクキューは再び回避に専念している。
さっき攻撃を仕掛けた際に腕を掴まれたように、攻撃を仕掛けると一瞬隙が生まれてしまうから、もうハクキューは仕掛けないのではないのだろうか。
俺がそう思っていると、ハクキューは果敢にもまたカウンター攻撃を仕掛けた。
さっきと同じように攻撃を左にかわし、右手で腹部を殴る。
妖力を込めた拳と腹部がぶつかり合う。
しかし、今回はジーネストが怯んでしまった。
その隙をハクキューは見逃さず、蹴り上げをジーネストの顎に命中させる。
ジーネストがさらによろけたところに、今度は回し蹴りを頭に命中させた。
そこでジーネストはダウンし、カウントが始まる。
だが、もうジーネストが立ち上がることはないだろう。
なぜなら、霊眼解放による効果が消えているのだから。
そして、ハクキューが決勝戦に勝利した。




