第42話 妖怪と妖術
闘技大会の二回戦目が終わってからさらに三日が経過した。
俺とアキラは、三回戦目があるために闘技場に向かっていた。
「この前三人組と戦った時、アキラは袖の中から刀を取り出したよな、あれは何なんだ?」
「僕の持っている刀の妖刀身隠の能力だよ。ちなみに妖力だけで作り出した刀はすべて妖刀って言うんだ」
「俺の刀は妖火刀って言うんだけど、妖刀とは違うのか?」
妖火刀を命名したのはハクアであるため、詳しいことを俺は知らない。
「シンくんのも妖力を込めたときに形状が変わるよね。つまり妖刀の部類だと思うよ。最初から刀の形状で妖力を込めると強い能力を発揮できる特殊な刀もあるんだ」
「そういうのが欲しいから、闘技大会の優勝賞金を狙ってるんだけどな」
「優勝したいというのを止めはしないけど、妖怪には十分に気を付けた方がいいよ。妖怪は武器なしで妖術を使えるからね」
妖力によって武器なしで使える能力は妖術と称する。
逆に言えば、妖怪でなくとも武器に妖力を込めれば妖術に近い能力を発揮できるということだ。
「闘技大会は妖術も使っていいってことなのか?」
「目立つ妖術はさすがに使っちゃダメなんだろうけど、目立たない妖術を使っているのはこの前見たよ」
「レフェリーも曖昧なものなんだな。何にせよ、妖怪と戦うときは気を付けることにする」
そんな話をしている中、俺たちは闘技場に到着した。
闘技場内の観客は、徐々に増えてきている。
次勝てばベスト8で、行方不明となっているデインと並ぶ。
不測の事態にも備えておかなければならない。
対戦相手は小太りの男のようで、見かけ上は妖怪かどうかは定かではない。
「それでは第三回戦第一試合、レガリオ選手対アマノ・シン選手、始め!」
対戦相手は徐々に距離を詰めてくる。
俺は少しずつ横にずれながら相手の様子を見る。
相手は中途半端な距離からいきなり踏み込んで左手で殴ってきた。
俺は左手でガードしながら右手で殴る準備をする。
ところが、相手の左腕はそのまま曲がり、俺の首の左側に攻撃が当たった。
俺は妖力でガードできなかったために、ダメージを負ってしまった。
今の腕の進行方向の変化は間違いなく妖術だろう。
顔面ではなく首に当たったことから、コントロールはしにくいのだと予想される。
さすがに、ここまで勝ち上がってきただけのことはある。
俺はレフェリーのカウントを止め、立ち上がる。
相手はさっきと同じように距離を詰めてくる。
まずは、相手の能力の分析からだ。
妖怪の使う妖術は妖怪によって異なるために、どんな能力かを把握すれば戦い方が楽になる。
複数の妖術を使えることも多いから注意が必要だが。




