第39話 妖力を使うと……
アキラに聞いたところ、行方不明となっているデインは、ベスト8に進出した後にいなくなったらしい。
だから、俺もベスト8まで進出すれば、何か掴めるかもしれない。
任務の報酬も、ベスト8に進出した時点で発生するらしい。
大会参加者は64人であるため、三回勝てばいいという訳だ。
しかし、優勝すれば賞金が手に入る。
それも、金貨100枚という破格の金額だ。
俺はそのお金で、刀を買おうと思っている。
何やら妖力を込めやすい武器とそうでない武器があるみたいだからだ。
ところがこの話をアキラにすると、浮かれすぎだとしっ責された。
この任務は何が起こるかわからないから油断するなと。
アキラの言うことも一理あるが、勝ち進むことも大事で、そのためには動機もいる。
そんな風にやる気を保ちながら俺は練習をし、一週間が経過した。
そして迎えた一回戦当日――――。
「シンくんならきっと大丈夫だから。頑張ってきて」
「意外と緊張するな。でも、練習してきたことをただしてくるよ」
俺の対戦相手は、大柄のスキンヘッドの男だった。
見たところ妖怪ではないようだから、セオリー通りに行けばいいだろう。
「それでは一回戦第四試合、アマノ・シン選手対ブロウ選手。始め!」
試合開始と同時に、相手は右手で殴り掛かってきた。
大振りで単調な動き、スピードもアキラとあまり変わらないくらいだ。
俺は左に避けると同時に右手の拳に妖力を込め、そのまま相手の腹を殴った。
思った以上に強力で、相手の大きい体が吹っ飛ぶ。
そのまま場外で相手は倒れ、カウントが始まる。
そして、相手は起き上がれないままカウントが終わり、俺は試合に勝った。
レフェリーが俺の勝利を宣言し、俺はアキラの元へ戻った。
「ガジマ隊長が教えてくれた通り、うまくいったね」
「ああ、敵は妖力も使えないみたいだったからな」
レフェリーが霊視していたのは確認したが、俺が去って行く中、何人かの観客も俺を霊視してきた。
霊視は開戦の合図というのは闘技場内では適用されないらしい。
ただ、俺が対戦相手を吹っ飛ばしたのを見れば俺が妖力を使ったのではと思うのも当然かもしれない。
だから、一回戦から妖力を使って目立つ勝ち方をしてしまったのはまずかったかもしれない。
他の出場選手も何人か見たが、やはり妖怪が多い。
妖力が使えることがバレていると、戦いづらいかもしれない。
ともあれ、次の試合は三日後ということだった。