第34話 束打ち
「皆の者、新しく二番隊で訓練を受けることになった、アマノ・シンだ」
「アマノ・シンです。よろしくお願いします」
「なお、彼は既に妖力の基礎を身につけているからすぐに稽古に入る。いつも通り二手に分かれて行う。A班は中、B班は外だ」
ガジマの号令と共に、隊員たちは動き出した。
「シン、お主はB班だ。儂について来い」
俺は、ガジマに続いて外に出た。
アカリはA班で、アキラはB班のようだった。
「まずは束打ちからだ。ここにある木の束を、一本の木の棒で打つ。妖力を正しく込めれば、一度で全部折れるはずだ。よく見ていろ」
ガジマはそう言って木の棒を一本取り、横になった木の束に向かって構えた。
俺は霊視してその様子を観察する。
ガジマが勢いよく木の棒を振るうと、木の束が下の方まで綺麗に折れた。
霊視していたのでよく分かったが、ガジマは妖力を木の棒に纏わせ、その端を尖らせるように形作っていた。
「細かいことはアキラに聞くがよい。アキラ、昼飯の後は薪割りをシンに教えろ、あとは任せたぞ」
「了解しました」
ガジマは二番隊隊舎の中へ入っていった。
「シンくん、それじゃあ束打ちをやってみようか」
アキラが木の束と木の棒を用意してくれた。
俺は木の棒を受け取り、木の束の前に立つ。
妖力を慎重に練り、ガジマが使っていたような形を作って纏わせた。
その後、木の棒を木の束に向かって振るう。
ところが、木の棒が一本も折れることなく、俺が持っていた木の棒は止まってしまった。
「妖力の制御に集中しすぎだね。全身の力を使って打たないと、木の棒は折れないよ」
俺はもう一度気を取り直して木の棒を構えた。
そして、今度は大きく振りかぶって木の棒を振るう。
しかし、今度は持っていた木の棒が折れてしまった。
「今度は力任せにしすぎだね。力を入れず、全身の力で打つことだよ。あと、妖力ももう少し接触部分に集中して込めた方がいいかも」
アキラは俺にアドバイスを言うと、今度は自分がやって見せてくれた。
俺は霊視してその様子を観察する。
アキラが木の棒を振るった時、確かに木の束との接触部分に込めた妖力は多かった。
アキラが木の束を打った結果、半分くらいの木の束が折れた。
「すごいなアキラ。とてもこんな風にできる気がしない」
「かれこれ一か月くらいし続けてるからね。シンくんも慣れればすぐだよ」
俺はその後もひたすらに木の束を打った。
しかし、なかなか木の束を折れずに昼食前の稽古の時間が終わってしまった。




