第33話 思わぬ再会
ガジマが二番隊隊舎へと向かった後、俺はゆっくりと森の中を進んだ。
和合隊本部からは意外と距離があるようだ。
できるだけ妖力を学ぶべきでない隊員には分かりづらいようにしているのだろう。
からくり人形を置いているのもあるが、妖力はそう簡単には隊員に教えたくはないように思える。
しばらくすると、二番隊隊舎が見えてきた。
二番隊隊舎の周りには、からくり人形が置いてあったり、木の枝が束ねて置いてあったりしていた。
二番隊隊舎の前では、二人の若い男女が会話をしていた。
俺が二番隊隊舎に入ろうとすると、男の方が話しかけてきた。
「君は、新しく和合隊に入った同じ部屋の」
男が途中まで言いかけたその時、女の方が話に割って入った。
「シンさん?シンさんではないですか!」
髪を結んでいた上に後ろ姿だったので分からなかったが、女の方はアカリのようだった。
「ご無事で何よりです!会えてよかった!」
アカリはそう言うと、俺に抱きついてきた。
「アカリの方こそ、無事でよかった。まさか、こんな場所でアカリと会うことになるなんてな」
俺から離れたアカリと俺は、隣にいる赤い髪の男の方を見る。
「実は、彼もアイルス出身なんです」
「初めまして、僕はミョウジョウ・アキラって言うんだ。隊員寮では同じ部屋になっているからよろしく、アマノ・シンくん」
「こちらこそよろしく。アキラもアイルスから来たのか?」
「そうなんだ。突然足元に大穴が開いてね。シンくんも同じようにしてきたのかい?」
「シンさんは、私と同じ穴に落ちたんです。着いた先は別の場所だったようですが……。私とアキラさんはコーリス村の近くに出たんですが、シンさんはどこに出たんですか?」
「俺は、カガン島に着いたんだ。でもこれは、内密に頼むよ」
「カガン島って妖怪だけが住む島ですよね。危険な目には遭わなかったんですか?」
「鬼と戦ったりもしたけど、親切な妖怪がいてね。その妖怪のおかげで無事に王都まで辿り着けたんだ。アカリとアキラは、どうして和合隊に?」
「僕たちが王都で妖怪に絡まれていたところを和合隊の人に救ってもらってね。それこそ、一番隊の」
アキラ言いかけたその時、背後からアキラの肩を手で叩く背の低い老人が現れた。
「話の途中ですまんがそろそろ始めさせてはくれんか。隊舎の中に入っておくれ」
「ガジマ隊長、すみません。話に夢中になってしまって」
アキラがガジマに礼をし、ガジマに続いて建物の中に入った。
俺とアカリも、続いて建物の中に入っていく。
建物の中は、道場のようになっていて広かった。
壁にはいろいろな武器が掛けてある。
部屋には十人くらいの隊員が集まっていた。
俺たちが最後だったようで、もう何人かは稽古を始めていた。




