第31話 妖力を使う新人
訓練場での和合隊入隊試験を終えた俺たちは、三番隊隊舎に移動した。
「ではシンくん、通常は新しく入隊した者は私が統括する十番隊に配属されることになっているのだが、今回は特例で、別の隊に所属させることにしたいんだ。どの隊に所属するのか決めなければならない」
「シン、和合隊の隊ごとの専門分野はレルフが説明した通りだが、入りたい隊はあるか?」
「俺はとりあえずもっと戦えるようになりたいので三番隊ですかね。ただ、質問があるんです。妖力に関する訓練は、どうやって受ければいいんですか?」
「実は、妖力に関しては特別に二番隊で教えることになっているんだ。でも、いきなり二番隊に所属させることは、いくら特例でも認められないんだ」
「じゃあこういうのはどうだ、ジェスタ。三番隊に所属しながら、二番隊にも通って妖力の扱いを学ぶっていうのは」
「私もちょうど、そんな提案をしようと思っていたところだよ。実は最近、シンくんの他にも似たような隊員たちがいてね。ちょうどその隊員たちも二番隊で妖力を学んでいるところだよ」
「是非、それでお願いしたいです」
「分かった、それなら、まずは三番隊に配属だね。それと、隊員寮には入るかい?」
「はい、無一文ですから」
「そうなのかい。相部屋になるから、他の隊員とも仲良くするんだよ。ちなみに隊員寮は、二階にあるからね」
「よし、じゃあ今日は解散だ。明日には二番隊隊長に連絡を入れとくから、今日はもう晩飯を食べて休め」
「分かりました。いろいろとお世話になりました、ジェスタさん、ガルクさん」
「シンくん、私たちのことは隊長と呼ぶように」
「はい、分かりました」
俺はその後、レルフの案内で隊員服と隊員証を受け取り、食堂に向かった。
夕飯時の時間帯のようで、食堂には結構な人がいた。
俺がひっそりと食事を摂っていると、金髪で背の高い、若そうな男が話しかけてきた。
「よう、君は新しく三番隊に配属されたんだろ?俺は八番隊のディヴァンって言うんだ、よろしく」
「こちらこそよろしく」
「なあ、偶然見つけたんだけど、訓練場のからくり人形の腕、切ったのは君なんだろ。どうやったんだ?」
「あれはたまたまだよ。ただ、あの人形は手強かった」
「まあそう隠すなって。君、妖力を使えるんだろ?」
「妖力のこと、知ってるのか?」
「ああ、和合隊では一応ある程度の者以外には教えないことになっているんだが、同じ建物内でいつも生活しているんだ。嫌でも目に入るし、耳にも入ってくる」
「どれくらいの人が妖力を使えるんだ?」
「まあ、ざっと三割ってとこかな。でもほとんどの隊員が妖力の存在については知っているはずだぜ」
俺が周りを見回すと、妙に静まり返っている。
俺の会話をみんな聞いているようだ。
「で、どうやって身につけたんだよ、妖力」
「偶然教えてくれる人がいただけなんだ。でもこれからは、和合隊で学ばせてもらうよ」
「そうか、まあそれが無難な道だよな……」
あまりそれ以上会話をしたくなかったので、俺は早々と食堂を後にした。
どうやら、和合隊や妖力については何かと事情があるらしい。
俺は部屋に入ったが、まだ同室の隊員は部屋に戻っていないようだった。
俺は疲れていたために早いうちに眠りについた。