第20話 池の妖怪
大柄の男が捕まえた子どもに盗んだ野菜を店主に返させると、その子どもを連れてこちらに戻ってきた。
「見ての通り、状況が変わった。ちょっと場所を移すから、手伝う気があるならついてきてくれ、シン」
「見事な対応でしたね。分かりました、ついていきます」
「おい坊主、名前は?」
大柄の男が捕まえた子どもに名前を聞いた。
「コギシ」
子どもはぽつりと答えた。
「オレはエンデイン・ガルクってんだ。よろしくな、二人とも」
「ガルクさんですか、よろしくお願いします」
「じゃあコギシ案内してくれ」
ガルクの呼びかけに、コギシは小さく頷き、歩き出した。
俺たちは、村から続く小川に沿って歩いた。
しばらく進むと、川とつながった大きな池に到着した。
コギシは小さな崖を飛び降りて、ほら穴に入っていった。
俺が続いてほら穴へ入ろうとすると、ガルクが手で止めた。
「ここで待っていようぜ」
俺たちがほら穴の外で待っていると、しばらくしてほら穴の奥から細身の男が出てきた。
「どうも、コギシの親のタギシです。うちの子が迷惑をかけたみたいで、どうもすみませんでした」
緑色の肌に深緑の目、頭は皿が乗ったような形になっている。
これは話に聞いていた河童の妖怪だろう。
「ああ、オレはガルクだ。妖怪の姿のまま村に出てくるのは危ないぜ。最近は妖怪への風当たりが強くなっているからな」
「妖怪への風当たりが強くなっているとはどういうことなんですか?ガルクさん」
ハクアにも頼まれたように、妖怪と人間との争いの元になっていることについては気になるので聞いてみた。
「ああ、最近妖怪によく似た生物が面倒事をよく起こしていてな。普通の人間には妖怪との見分けがつかないことが多くて妖怪との間に対立が起きてんだ」
ハクアの話と大体一致している。
問題は、魔族が関係しているかどうかだ。
「そうなんです。この池にも最近サメの集団が現れて、魚を食い尽くしてしまっているんです。それでうちも食糧に困っていて……」
「妖怪なのに食べる必要があるんですか?」
「はい、あなたが知っている妖怪は高級な妖怪なのでしょう。我々低級な妖怪は食べないと生きていけないんです」
「そのことについてだが、実はオレからも相談があってな。まあ、コギシの件は水に流してやるからちょっと協力してくれよ」
「はい、何でございましょう」
「その現れたサメの軍団の親玉を退治しようってんだ。あんたにも悪い話じゃないだろ?だから手を貸してくれや」
「ワタシにできることなら」
「そりゃあ助かる。じゃあ池まで移動しようぜ。シンも来てくれ」
俺たちは池の岸まで移動した。