第14話 妖射鏡
俺は布団の上で横になっている。
俺の隣には、長い黒髪の女が礼儀正しく正座で座っていた。
俺がその女の方を見ると、その人は優しい笑顔をつくる。
その人が口を開こうとしたときに、俺の口から言葉が漏れた。
「ハクア?」
「起きたようじゃな」
辺りを見回すと、俺はさっきいた部屋より一回り小さい、少し寂びれた部屋の中にいた。
どうやら夢を見ていたようだ。
「どうじゃ、しっかり休めたか?」
「ああ、すっかり眠ってたよ。結構な時間寝てたんじゃないか?」
「もう昼過ぎじゃ。ほら、飯を作ってやったぞ、食え」
囲炉裏には串刺しにされた鮎が数本あった。
俺が串焼きを一本取ると、ハクアが話をし始めた。
「昨日の話の続きをしよう。まず、わしらが今おるのはカガン島という大陸から少し外れた島じゃ。大陸へはナラクの橋という橋で渡ることができるが、その橋には厄介な仕掛けがしてあってな、並大抵の人間では渡ることはできん」
「厄介な仕掛け?」
「お主もいずれ知ることとなる。それで大陸へ渡るとランデリア王国という国の領地へ入る。そこから王都ネスピアを目指せ。そこから……」
どうやらファンディオのときのように振り出しに戻って都を目指すことになるらしい。
踏んだり蹴ったりだが、今度こそ王都までたどり着きたい。
「ランデリア王国には和合隊という組織があるのじゃ。そこが治安の維持、例えば悪い妖怪を退治したりしておるのじゃが、そこにテンミョウ・シュウという人物がおる。彼に掛け合ってほしい」
「そうは言ったってそう簡単に会えるのか?俺の話を聞いてくれるかも分からないし」
「そこについては今から準備するのじゃ。ほれ、剣を持ってこの鏡の前に立て」
ハクアが鞘から剣を抜き取って俺に渡すと、俺は鏡の前に立った。
その後、ハクアが鏡に手を触れる。
すると、鏡に映る俺の剣の形が刀のように変化した。
俺が直接持っている方の剣の形は変わっていない。
「これは妖射鏡という鏡なのじゃが、映し出した者が妖力を宿した場合の姿を映しておる」
ハクアは俺の背後に回り俺の両手を上から握った。
「これからわしが動くように手を動かすんじゃ」
そこから、右手に持つ剣を、左の腰に差すように持っていき、左手で鞘を持つように覆って構えた。
そして、剣を抜くように動くと、左手に鞘が出現し、右手に握った剣は形を変え刀となった。
「これが妖力の力じゃ。どうじゃ、すごいじゃろ?」
「魔法と全く違うな。実戦でどんな変化があるのか楽しみだ」
「ただし、今のはわしの妖力を貸して行ったことじゃ。お主自身の妖力でできるようになるには少し時間がかかるぞ」
俺が刀を鞘にしまうと、刀は鞘ごと剣に戻った。




