第11話 困難な闘い
敵の変則的な攻撃を食らって動揺していたが、傷はかなり浅かった。
どうやら右手から左手に棍棒を持ち替える能力を使っても、棍棒を振るう勢いは左手で持った時からつくために、威力はかなり落ちるようだ。
ダメージを負ってしまったが、敵の能力を見ることができただけでもありがたい。
敵は棍棒を右手に持ち替え、少しずつ近づいてくる。
俺は冷静に、敵を倒す算段を立てた。
敵がまた棍棒を振るってきたのを、俺は同じように左にかわした。
その時俺が切り込む姿勢をとると、敵は左手を振るい、能力で棍棒を左手に持ち替えた。
俺は半歩下がりながら攻撃をかわし、通り過ぎた左腕を狙って火炎斬を放とうとする。
しかし、炎がつきかけたところで魔力ごと消えてしまった。
魔力切れ。それもあと一歩のところで。
敵の左腕に剣が刺さるが傷は浅く、敵は返しに能力を使わず右腕に持ち替えて棍棒を振るってきた。
俺は少しでもダメージを弱めようと左腕でガードした。
今度の攻撃には威力があり、俺は左腕に激痛を感じながら吹っ飛ばされた。
魔力切れ、左腕の負傷、連戦による疲労、かなり追い詰められてきた。
敵は容赦せず続けて近づいてくる。
魔力なしでこの敵を倒すのは困難なように思えるが、かけてみるしかない。
俺は剣を構え、意識を集中した。
敵は相変わらず右腕で棍棒を振るってきた。
俺は左にかわし、魂の記憶を発動させた。
敵が何も持っていない左腕を振るってきたのを確認すると、俺は左手に持ち替える能力を読んで右に飛んだ。
俺が通り過ぎた後で敵の棍棒が左手に出現し。敵が右手に握っていた棍棒は消えているのでそのまま足を切りつけた。
敵は今度は両手で棍棒を握って振るってきた。
敵は慌てたのか、両手で棍棒を持っているために、能力を使う気はないようだ。
俺は空中にジャンプし、敵の目を狙って突こうとした。
しかし、何かが飛んできて俺の剣が弾かれてしまった。
またもやあと一歩のところでチャンスを逃してしまった。
どうにも思うように事が運ばない。
俺は後退して状況を確認する。
どうやら絶妙なタイミングで斧が飛んできたようだ。
さすがにこの敵の奥の手ではないだろうとは思っていると、ベニカガが口を開いた。
「何のつもりだ、アオカガ」
「何を言う、ベニカガ。今の一撃を食らっていたら致命傷を負っていたところだったぞ」
声のする方を見るとベニカガと同じ背丈に角が一本、口には牙があり、左手に斧を一本持った鬼がいた。
どうやらベニカガの仲間がやってきたようだ。




