第107話 勇者とは
魔王の突然の攻撃に対して、シュウは素早く反応し、魔王の剣を受け止める。
シュウは魔王がシュウの横に現れることを予想していたのか、魔王の攻撃を簡単に止め、そこから一進一退の攻防が始まった。
魔王は俺が介入することを嫌い、後ろに飛んで下がる。
俺はそのまま追撃をするべく魔王に近づいた。
そして、俺のその判断は決定的な成果を上げることに繋がることになる。
魔王の首が、突如として飛んだのだ。
突然の出来事ではあったが、俺の中では想像の範囲内だった。
ところが、そこからさらに、首を失った魔王の体は反転し、後ろに剣を振るう。
すると、そこに短い刀で受けるアキラの姿が現れた。
どうやら魔王は、首を斬られてもなお生きているらしい。
それを証明するかの如く、飛んでいった魔王の首が喋り出した。
「イノムント、話が違うぞ。ここまでの事となれば我は一度退く」
「さすがの魔王ランダギウス様でも、これだけの戦力の相手は難しかったようですね。ですが、負けたのはあなたですよ、魔王ランダギウス様」
イノムントはいつの間にかこちらの近くに来ており、ローブの男も一緒にいた。
「何を言う、我はまだ負けてなどいないぞ。そんなことはどうでもいい、早く我を連れてここから離れるのだ」
魔王の呼びかけに応じたのか、イノムントは杖を振って空間の歪みを発生させた。
「おい、お前は魔王の頭を狙え。体は俺がなんとかする」
魔王とイノムントがやり取りをしている間にシュウはこちらに近づいており、魔王の体に斬りかかった。
俺もシュウの言葉を聞いて急いで魔王の頭の方に向かっていった。
「残念ですがワタクシたちは先に離れることとします。ランダギウス様の健闘を祈ります」
イノムントたちは空間の歪みの中へと入っていく。
「貴様ら!何のつもりだ。我を復活させておきながら死なせるというのか」
「ワタクシたちは知っているのですよ。あなたがカギを持っているということを。そして、あなたがこの世界からいなくなったときに起こることも」
イノムントたちの意図は不明だが、今は魔王に集中しなければならないだろう。
「貴様、最初からそのつもりで我を復活させたのか!誰の入れ知恵だ!」
「勇者を二人潰せただけでも上出来でしたよ、魔王ランダギウス様」
二人の勇者という気になる言葉がイノムントから発される。
「イノムントォォォォ!!」
イノムントたちが入って行った空間の歪みは消えて無くなってしまった。
俺は、魔王の頭部に妖炎斬で斬りかかって止めを刺した。
魔王の頭部青い炎に包まれて燃え上がる。
魔王の体も体中が氷に覆われているが、まだ動いていたため、俺はそちらに向かっていく。
そして、体にも妖炎斬で斬りかかり、全体を燃やし尽くした。
魔王の頭部と体は同時に燃え尽き、灰となって消えていった。