第9話 デクル研究所襲撃事件
時同じくして、帝都アルディムにて。
-アキラ視点-
僕は、デクル教授にとある戦利品を届けに来ていた。
魔鉱石。
魔力を溜めこんだ特殊な石で、使えば普段では扱えない魔法が安定して使えたり、魔道具の材料として用いられたりする。
発生原因は未知のままで、魔鉱石が発生した周辺には決まって魔物が現れる、不気味なアイテムだ。
今回、僕は冒険者としての依頼でビンワ山で手に入ったので、前から欲しがっていたデクル教授にこれを届けようと思ったのだ。
僕は、デクル教授の研究所のドアをノックした。
「アキラくんかね、入りたまえ」
「失礼します。デクル教授、魔鉱石が手に入ったので届けに来ました」
「おお、でかしたぞアキラくん。これで、魔物についての研究がより一層進む」
デクル教授は、魔法や魔物についての研究をしている。
特に最近は、原因不明で出現頻度が高まっている魔物について熱心に研究されているようだ。
「魔物について、何か新しいことが分かるといいですね」
「きっと分かるとも!最近では魔物の出現にはパターンがあることが分かってきた。この魔鉱石を使えば、こいつらがどこから来ているのか突き止められるかもしれん。そもそもこいつらが何でできているか知っているかね、アキラくん
「魔力ですよね。長くなりそうなので、お茶を入れてきますね」
「そう!魔力が使われているのだがそれだけではないのだよ。まあ、後で話すよ」
デクル教授は話し始めると長いので、僕は先を見越して別室にお茶を入れに行った。
魔鉱石は売ると高い値が付くが、デクル教授に渡した方が人々のためになると思って持ってきた。
デクル教授の喜びようからしてかなり役に立ってくれそうだ。
僕がお茶を入れ終えると、デクル教授のいた部屋からガラスの割れる音がした。
僕は慌ててお茶を持って部屋のドアを開けると、信じられない光景に、僕は動揺した。
デクル教授は座ったまま血を流し、背中には何かで刺された跡がある。
「デクル教授!!」
僕は動揺したままお茶の入ったコップを落とすと、コップの割れる音がして、僕はふと我に返った。
窓の方に目をやると、窓が外から割られている。
誰かが侵入してきたことをようやく理解するころにはもう遅かった。
背後から切りかかってくる侵入者に少し遅れて反応すると侵入者の剣先は肩をかすめた。
敵は仮面をしており、黒に金の模様の入ったローブを羽織っている。
僕が教授の方に後退すると、魔鉱石が無いことに気づいた。
敵の目的を考えている余裕なんか今は無いということをすぐに思い知らされることとなる。
敵は剣を左手に持ち替えて右手をこちらにかざし、魔法を発動した。
すると、突如として僕の体から黒い炎が燃え上がった。
「熱い!!」
これは魔鉱石を使った魔法だ。
敵はかなり戦闘能力に長けているし、僕は右肩も負傷していて、勝ち目はない。
炎も消えない中、僕はできることを考え、i一か八か、割れた窓ガラスをめがけて突っこんだ。
すぐ近くには川があって炎を消せそうだが、研究所の外は崖になっている。
だが、思ったよりも高さがあったようで、着地ができるのか不安になった。
その瞬間、地面に大穴が発生し、僕は吸い込まれるようにしてその大穴に入っていくのだった……。




