第二節
「ってなことがあってよ」
ハイトは仕事を終えると決まって教会に来ていた。仕事で客から感謝された事、雑貨屋から褒められた事、三バカがいつものように絡んできたことを楽しそうに話した。
「その人達、本当に懲りないね」
話し相手は教会の庇護の下で慎ましい生活を送る少女マイネ。マイネは赤ん坊の頃から身寄りが無いため教会の外に出たことが無い。そのため教会の外の話をしてくれるハイトが来てくれることを楽しみにしていた。ハイトが褒められるとマイネは自身が褒められたように喜び、三バカの話を聞けばくすくすと笑った。
「マイネは相変わらず今日も教会でお祈りか?」
「うん。だって、お祈りは大事な事だから」
ハイトは難しい事は分からないが、聖騎士や神官といった人達は神々への祈りを力にしているらしい。祈りを捧げる人数が多ければ多い程に強い力を行使できる。故に孤児は教会に引き取られ祈りを捧げる代わりに慎ましくも生活を保障される。逆に言えば、真摯に祈りを捧げない者は教会では暮らせない。あの三バカのような品行方正とは対をなす者達は教会にも居場所はないということだ。
「大事な事と言えばハイトの方はどうなの?」
ハイトは仕事をして金を稼いでいるが、その目的を聞いているマイネはそのことを気にしていた。
「うーん……あともう少しかな」
ハイトはある目的のために金を貯めている。その目的を知っているのはマイネと育ての親だけだ。
「頑張ってね。ハイト」
マイネはハイトがその目的を必ず達成すると信じているし、ハイトはマイネの期待に応えたいと思っている
「絶対叶えてやるやるさ」
マイネが応援してくれるから明日も頑張れる。そうハイトは感じていた。