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4/13

(4/13)悪いことをしているわけでもないのに

 さて、さてなのである。

 この対照的な中原紗莉菜と花沢光彦。実は付き合っていた。しかも丸2年。社内の誰にも言ってない。


 紗莉菜はミツヒコに聞いたことがある。

「もう2年なんだしさ〜。そろそろみんなに言ってもよくない?」と。


 しかしミツヒコの返事はいつも一緒だ。


「え〜。めんどくさーーい」そのままミツヒコの家のリビングでゴロゴロしてしまう。


「冷やかされたりとかさー。ウワサされたりするでしょー。会社とプライベートは分けた方がよくない?」


「だってさ! 上条とカオリは公表してんじゃん! そろそろアタシたちもさ! もう『日曜日何してんの?』とか聞かれんの面倒臭いんだよ。毎週! ミツヒコの家だよ!」


 だってさー。ミツヒコはコッソリ思う。

『いつ結婚すんの?』って聞かれるじゃーんと。


 現に上条と宮野カオリも同期に年中『いつ結婚すんの? いつ結婚すんの?』と聞かれまくって往生している。最近は宮野もその気になってきているので上条は孤立無縁だ。


『このまま周りに押し切られるんだろうな〜』と思う。


 中原紗莉菜と結婚したくないということではないのだが、そんなことは2人で決めればいいわけで、周りにどうこう言われるのは嫌だった。


 だいたい。まだ付き合って2年だし。


「まださー。オレらは公表とかしなくていいんじゃなーい?」


 と押し切られてしまうのだった。


 @@@@


 だがそうも言っていられないことも起きる。

 花沢光彦はとてもモテる男だった。


 まず親切。気が利いている。紳士。人の心を逆撫でするようなことも言わない。仕事も着実にステップアップしてくる。


 花沢光彦が『お買得商品』などということは入社1ヶ月で中原以外の全員が気づいた。中原は気づかなかった。そういう嗅覚は圧倒的にもってない女だった。


 彼女はただ純粋にミツヒコの温かさや、可愛らしさを好きになったのだった。


『花沢王子様』と陰で女子に馬鹿にされながらも、何人かの女は花沢に対して壮絶な攻勢をかけていた。落とす気満々である。


 ところが、奇妙なことが起きた。


 花沢に『断られた』とも『拒絶された』とも思えないのになぜか誰も花沢とプライベートで会えなかった。


 お茶もお酒も休日に会うことも無理だった。


 彼女たちはわけのわからないうちに花沢から袖にされてしまっていた。


 まさかそれが。178センチの。男子に対して「うるせぇんだコラァ!!」と空手チョップを繰り出す女に花沢が片恋してるからとは誰も思わなかった。


 @@@@@


 2人でドライブに出かける。

 外に行く時は大抵車で、同期が出没しなさそうなところが選ばれた。


 そういうことにも紗莉菜はイライラした。


『別にコソコソする必要もないのに何でそんなことまでしなきゃいけないの?』という訳だ。


『悪いことをしているわけじゃないのに!』


「だってさ〜」ミツヒコに言われてしまう。


「同期に見つかったら絶対写真とかとられるよ。そんでオレら以外のLINEグループとか作られてさ。写真共有されちゃって。月曜日にはみんなニヤニヤしてるとかさ! も〜そーゆーのめんどくさーーーい!」


 だーーーーーっ!!!!

 アンタのそーゆーとこっ!!!

 アンタこそ面倒くさいんだよ!!!!


 常に将棋指しみたいに何百手先まで読んでさ!! 用意周到になんでも計算してさ!!!


 見つかったら見つかったでそん時考えりゃいいだろうが!!


「……じゃあ外でちゅーとかしなきゃいいんじゃないの?」声に怒気をはらんでしまう。


「えーっ! デートじゃんベタベタしたーい! それに紗莉菜にちゅーできなかったら、オレ1週間何を楽しみに仕事すればいいの?」とハグされると、もう何も言えなくなってしまうのだった。

【次回】『じんましんがでそうなほど気が利く』です。


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― 新着の感想 ―
[一言] それぞれに納得の事情。 花沢くんが嫌がるのも分かるし、中原さんがモヤるのも分かりますねー(笑)
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