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山頂へ



「えーと、じゃあソードホーク? ホークでいいかな。妖精、はフェアリー……だから……リリィ? ハーピー……ハッピーで!」

「きゅるる!」

「〜〜♪」

「〜〜!」


 新たに保護した三匹のモンスター。

 ソードホーク、フェアリー、ハーピー。

 全員飛行タイプで、更にホーク以外はなにやら独特な言語に似たものを話している。

 言語は分からないが他のモンスターより表情豊かなので、フェアリーとハーピーが喜んでくれたのは分かった。

 それに安堵する。

 なにしろ、フェアリーとハーピーは見るからに女の子だから。


『あいも変わらずネーミングセンスが雑というかなんというか』

「そ、そんな事ねーし! これでもいっぱいかんがえてる!」

『まあいい、えーと……』

「?」


 なにやら通信先でゴソゴソ音がする。

 ジークも昨日、忠直と夜遅くまで仕事の件であれやこれやと話し合っていたからあまり寝ていない。

 今頃あの綺麗な顔が昨日以上に凶悪なものになっていそうで……震えた。


『……確認が取れた。ジンからそっちの世界に食糧を送るとの事だ。あとでここを経由してそっちに干草ロールを5トンほど送る』

「まじか⁉︎ ……え、5トンン⁉︎」

『ドンの巨体を思えばあっという間だろう。保護したモンスターが今後増える事を思えば尚更だ』

「む、う、うん」

「〜〜?」


 フェアリーのリリィが近付いてきて何やら話しかけてきた。

 しかし、残念ながら言語が違う為何を言われたか分からない。

 そこをシロが前に出て「食べ物があるのか、と聞いてきました」と通訳してくれた。


「ああ、今から生産も行おうと思っているところだ。シロ、悪いんだがこれまでの経緯とかこいつらに説明しておいてくれるか?」

「分かりました」

「あと、このまま付いてくるか、先に拠点へと行くかを確認してくれ」

「了解です、マスター」


 シロが賢い子でとても助かる。

 ふんふん、鼻を鳴らしているようにしか聞こえないがシロは三匹に説明をしてくれているらしい。

 その上で、ハッピーが何かを叫び出す。


「どうした? トラブルか?」

「いえ、頂上には仲間が集結して、残り少ない水を奪い合っているそうです。この三体は頂上の源泉の泉を奪い合い、群から離れて迷っていたところ我々を見付けて、新たな水泥棒だと勘違いしてカッとなって襲いかかった、と言っています」

「うん? 自我……意識があったのか?」

「……ええと、そうですね……コブが付いている時は意識は朦朧としているんですよ。俺の場合は空腹で、とにかく食べ物、食べ物と思って彷徨っていました。彼らも辛うじて意識はあったのです。そして、生きる為に必要な事を実行しようとする。それが過激になるというか」

「……なるほど、そうなのか……」

「なんにしても、数はそれぞれ十体ほど……ソードホークは数が六体ほどですが、マスター……どうなさいますか?」

「…………合計二十六体の相手は——」


 それはさすがに厳しいだろう。

 だが、放っておくわけにもいかない。


「ジーク、何かいい作戦とかないか?」

『……………………』

「……。喋りかけない方がいいか……?」

『あ? いや、何だ?』

「いや、だからな……」


 頂上の状態は一触即発どころか、すでに大乱闘らしい。

 それを説明すると、けろりと『は? じゃあその三体にそれぞれの種族を分けて呼び出してもらえばいいだろう』とあっさり作戦を言い渡されてしまった。


『まあ、それでも一応ステータスは確認しておいた方がいいんじゃねーの』

「そ、そうか。それじゃあ……」



【ホーク】

 種族:ソードホーク

 レベル:19

 HP:320/153

 MP:63/12

 ちから:59

 ぼうぎょ:42

 すばやさ:104

 ヒット:76

 うん:71

[戦闘スキル]

『つつく』

『斬り刻む』

『エアーアタック』

『ソードアタック』

『魅了のダンス』

[特殊スキル]

『素早さ強化』

『飛行』

『巻き上げる』

『砂嵐』

『乱気流無効化』

『遠方観察』

『鷹の目』



【リリィ】

 種族:フェアリー

 レベル:18

 HP:220/126

 MP:320/104

 ちから:31

 ぼうぎょ:30

 すばやさ:42

 ヒット:43

 うん:78

[戦闘スキル]

『サイクロン』

『ウィンドアロー』

『毒の霧』

『ポイズンアロー』

『ヒール』

『リペア』

『ハイヒール』

『魅了のダンス』

[特殊スキル]

『素早さ強化』

『飛行』

『魅了耐性』

『異常状態:魅了効果付加』



【ハッピー】

 種族:ハーピー

 レベル:21

 HP:561/145

 MP:201/83

 ちから:92

 ぼうぎょ:42

 すばやさ:83

 ヒット:65

 うん:63

[戦闘スキル]

『キック』

『ローキック』

『鉤爪』

『魅了のダンス』

[特殊スキル]

『素早さ強化』

『飛行』



「え、なんかみんな強くないか?」

『ほう? 回復系の魔法か?』

「え?」


 ジークが興味を惹かれたのは、リリィ。

 よく見ると、なるほど。

 確かにこれまでのモンスターとは覚えているスキルが違う。

 魔法チックなものが多く、詳細を確認すると『ヒール』は『HP回復』とある。

 これはすごい。


「……、……三人とも、今の戦闘で結構HP削れてるよな……リリィ、その、回復してやれるか?」

「!」


 パァ、と笑顔になるリリィ。

 まるで頼られた事が嬉しい、と言っているかのよう。

 なにやら呪文のようなものを唱え、くるくる回りながら宙へ浮かぶ。

 すると、鱗粉のようなキラキラした光がハッピーとホークを包む。


「ステータス」


 ホークの体力は『320/253』となり、ハッピーの体力は『561/245』となっている。

 それに比例し、リリィのMはP『320/84』


「……結構削れるもなんだなぁ」


 気にした事はなかったが、このあとまた戦うと思うとこの三体は戦闘に参加させられないかもしれない。

 はっとして、ショコラとシロのステータスも確認する。

 シロのHPは変化ないがMPが『153/103』になっているし、ショコラ……は……。


「1520/1220……まだ余裕って感じだなー……」

「うん! ショコラまだまだ平気!」


 これらのみんなのステータスを見て、顎に指をあてがう。

 ショコラとシロは怪我もなく、MPの心配は少ないが……。


(上の奴らは今も戦ってるかもしれない。そして、リリィのスキルを見るとソードホークとハーピーは不利だな。フェアリーはヒールでMPが尽きない限りHPを回復し続けられる。HPとMPは一晩眠れば回復するらしいが……)


 長期戦ともなればやはりこの『ヒール』が大きな意味を持つ。

 一度拠点に帰って、他のメンバーを、とも考えたがいつから山頂の戦いが続いているか分からない。

 時間をかけていればよろしくないと判断して、立ち上がる。


「リリィ、仲間を頂上から五体ずつ引き離して連れてこれないか? ……いくらコブ付きで攻撃的になってても、ソードホークとハーピーが源泉から離れる奴を深追いする理由はないはずだ」

「〜〜〜〜?」

「それはその通りですが、仲間は十体います。五体だけ、という理由を教えてほしいそうです」

「ヒールで体力を回復されると色々大変だから、だな。こっちの味方になってくれると、今みたいに助けてももらえるし」

「「「「「⁉︎」」」」」

「……え、そんなすごい事言ってねーよ?」


 ショコラとシロのみならず、ホークとリリィとハッピーも愕然とした顔をした。

 それこそ五体の背後に衝撃による雷背景が見えたほど。

 この、いかにも『全く思いもしなかった!』的な顔に思わずそう言うと、シロが慌てて「そんな事はありません!」と間髪入れずに否定してきた。


「パパ天才!」

「さすがマスター! なんと思慮深い!」

「〜〜〜〜!」

「きゅるふ、きゅるふ!」

「〜〜〜〜!」

「…………そうか、ありがとよ……」


 とりあえず他の三体にも口々に褒められている気がする。

 褒められて悪い気はしないものの、複雑なものを感じた。

 何はともあれ、リリィに「五体ずつ、仲間を呼んできてくれ」と頼む。

 リリィは頷いて、山頂へと飛んでいく。


「俺たちももう少し登ろう」

「うん!」

「はい」


 出来れば戦いやすいところがいいのだが、と口にすると、ホークとハッピーが山頂付近にまだ草の残る坂道があると教えてくれた。

 しかし、残念ながらそういう事ではなく、足場のいいところ、という意味だ。


「はあ、はあ……おっさんにはきついなぁ」

「マスター、俺の背に乗りますか?」

「え、 乗ってヘーキなのか? 俺重いぞ?」

「〜〜〜〜」

「おあ⁉︎」


 シロは超大型犬二匹分はある体躯。

 確かに人が乗っても大丈夫そうではあるが、大人の男はさすがにいささかきついのではなかろうか。

 そう思って戸惑っていると、ハッピーに肩を掴まれ持ち上げられた。

 鳥のような脚は鋭い爪があるも、上手い具合に引っ掛けて忠直が痛くないように掴んで飛び上がる。

 地上五センチ。

 そんな絶妙な位置を飛ぶハッピー。

 見上げるとケケケ、と笑顔で見下ろされる。

 それがどことなく怖いのだが、きっと彼女なりの優しさだろう。

 そう思ってへにょ、と笑い返した。


「マスター、ハッピーが運ぶのを任せろと……」

「あ、ああ、やっぱそういう感じか。……言葉が通じないのはやっぱ不便だな〜」

「ジークさんに、みんなの言葉が分かるようにしてもらえないの? パパ」

「その辺りは契約内容に色々盛り込まれる予定でなぁ……まだ決まってないんだよ。頼むつもりではいるんだが……」


 五メートルほど登った……いや、運ばれたところで、リリィの声がする。

 見上げると少し広まった場所があり、そこは岩も少ない。

 緑の草が生い茂る、恐らくここがリリィたちが言っていた場所。


「作戦通りリリィが五体のフェアリーを連れてきてくれたな。よっしゃ、気合い入れて保護するぞ。ホーク、ハッピー、お前らも協力してくれるか?」

「きゅぅるくっくっ!」

「〜〜!」

「おっし、ホーク! 『鷹の目』でコブの位置を確認してショコラに教えてやってくれ。シロ、撹乱を頼む。ハッピーは奴らがスキルを使わないように呪文? みてーなのを始めたら阻害してくれ」

「はーい! よろしくね、ホーク!」

「きゅうるっくく!」

「了解だ、マスター!」

「〜〜〜!」

「戦闘開始だ!」




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