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【前編】

こんにちは。作者の羽リズムです。

思いつきで書き始めた作品で、全三話を予定しています。

読者の皆様に楽しんでいただくことができれば、嬉しいです。

 俺はシュヴァルツ。

 日本から召喚された勇者だが、この異世界じゃ真名を明かすのが危険だからシュヴァルツを名乗ってる。

 大体の物語じゃ魔王を倒すために呼ばれる勇者だが、俺は人間同士の戦争のために呼ばれた勇者だ。

 今日も、王の命令で敵国の斥候どもを殺すために出陣させられていた。

 敵国の斥候どもは四人。

 どいつもこいつも、上等そうな武具に身を包んだ強そうな現地人どもだ。

 日本にいた頃の、クソゲーのやり込み周回しか取り柄がなかった頃の俺じゃあ、あんな奴等を相手にしていたら一分と経たずにやられてしまっていたことだろう。

 だが、いまの俺には勇者として召喚されたときに授かったチートスキルがある。

 『鑑定』、『ラーニング』、『ニューゲーム』の3つのチートスキルだ。

 まず、『鑑定』を発動して敵国の斥候どものステータスを確かめることにする。

 敵国の斥候どもの平均レベルは35ぐらいだった。雑魚過ぎる。

 だが、隊長らしい男のもっているスキルは面白そうだった。

 他人のスキルを習得する俺のチートスキル『ラーニング』で、覚えてやってもいいスキルだ。

 余裕をもった足取りで敵国の斥候どもの前に現れた俺は、いかにもだるそうに剣を振るって隊長以外の雑魚どもを惨殺する。

 斥候どもがごちゃごちゃとなにか言ってたが、自国以外の異世界語がわからない俺にとっちゃあ負け犬の遠吠え以外の何物でもない。

 仲間を殺された隊長が怒り狂って俺のお目当てのスキル『狼牙三連爪』を使ってきた。

 俺の『鑑定』じゃあ名前までしかわからなかったが、どうやらほぼ同時に三つの斬撃を放つスキルだったようだ。

 すでに圧倒的なステータスをもつ俺には不要だが、なかなか格好良さそうなスキルじゃないか。

 俺はスキルを見せてくれたお礼とばかりに『ラーニング』したばかりの『狼牙三連爪』で隊長を斬って捨てた。

 相手と自分の間に百倍のレベル差があれば実際にスキルを目にしなくても相手のスキルを習得できる『ラーニング』だが、現実にはそんなレベル差は無理なので相手のスキル発動を待つしかないのが『ラーニング』の欠点だな。

 敵国の斥候どもを殺した俺は、剣についた血を振るって落として王城への帰路に着くのだった。

 

「勇者シュヴァルツよ。よくやった」

 俺は、王からのそんな称賛の言葉を適当に聞き流して謁見の間を後にした。

 あんな経験値の足しにもならない雑魚どもを殺しただけで誉められるのだから、この異世界は楽勝過ぎる。

 王城に用意された俺の部屋に戻ると、ロリ美少女が俺を笑顔で出迎えてくれた。

「シュヴァルツ様。お疲れ様です」

 輝かんばかりの笑顔を俺に向けてくるこのロリ美少女は、いつかの戦いで褒美として王から渡されたこの国の王女だった。

 褒美としてロリ美少女を渡してきた辺り、王は俺の性格を少しだけだが理解できているらしい。

 見た目は冴えないおっさんでも、ひとを見る目だけはさすがは一国の王ってところか。

 この俺にいまだ偉ぶった態度なのが気に食わないが、超絶俺好みのロリ美少女王女を褒美にしてきたところだけは誉めてやってもいい。

 ちなみに、褒美だからと言って俺と王女の間に恋愛感情ってやつがまったくないってわけじゃない。

 その証拠に俺が抱き寄せてやると、王女は白く透き通った頬をすぐに真っ赤に染めて潤んだ可愛らしい瞳を俺に向けてくる。

 まあ、俺は異世界人で勇者だからな。

 現地人の女が俺に惚れてしまうのも当然と言えば当然だろう。

 抱き寄せたまま夜の営みをしようと王女をベッドまで連れていくと、王女は蚊の鳴くような小さな声で恥ずかしがりながら囁きかけてきた。

「あの、シュヴァルツ様。実は私、シュヴァルツ様のお子を授かったのです」

 愛しそうに腹を撫でる王女に、俺は最初なにを言われたのかがわからなかった。

 だが、王女の言葉をだんだんと理解するに連れて歓喜の感情に俺の口許が歪む。

 俺の子を王女が孕んだ……!

 嬉しすぎて頬が緩むのを止められない。

 勇者としていきなり連れてこられてしまったこの異世界だったが、俺は王女の言葉でようやく……やっとこの異世界のなかに自分が帰るべき場所―――故郷を見つけられた気がしたのだ。

 あまりの喜びにテンションが上がり過ぎた俺は、王女付きの侍女のアンナもベッドに誘って、その日の夜の営みを三人で心いくまで楽しんだ。

 ちなみに、このアンナも俺に惚れてる俺好みの超絶可愛いロリ美少女だ。

 あの王は、俺の性格ってやつを本当によくわかってるぜ……!

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