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しがない保育士なのですが…  作者: Cefiy
第1章ー異世界把握編
7/12

魔法力とは

第7話

 どうもこの世界に来てから子供たちの様子がおかしい、そもそも二人は0歳児クラスといえど1歳5か月と1歳7か月、保育園にはもう慣れているし信頼関係も構築されてきている…と自負してはいるものの、何度も言うが瑞樹は人見知りも場所見知りも激しい性格で、さらに言えば意思がかなり強くちょっとやそっとじゃ妥協しないというのに、こんな見知らぬ場所で見知らぬ人の前でちょっとあやされたからと言って泣き止むのは流石に不自然ではないだろうか。


 眠っている瑞樹はいつも見ている様子と変わりなく、11kgの重みも変わらずこれが夢だとは到底思えないのだが


「桜花様って誰にでもそんなに素直なんですか?」

「私が…?素直…か?」


 無意味なことはわかっていたが一応桜花にも訪ねてみたが不思議蒼に小首をかしげられるだけに終わり、訪ねたことの間違いを悟る


「じゃあ話を少し戻しますね…って蒼士くん!!」


 先ほどのいざこざで少し目を離した隙に、蒼士は扉のパネルに近づいていた。(大丈夫だと思うけど、もし爆発なんかでもしたら!)と慌てて止めに走ったが一歩間に合わず、蒼士はパネルに触れ同時に水色になったパネルからは、まるでよく振った炭酸飲料を開けたように勢いよく水が噴き出された。


「わあああ!?」

「なにっ?!」

「……?!」


 その勢いで蒼士はふっとんで溢れた水に流されて盛大に転び、転んだと同時に瑞樹の横に抱き上げて様子を見る。体をくまなく確認したがどこも打ち身になっていたり切り傷になっていたりすることは無いようで、本人は水に吹き飛ばされていた割にけらけらと笑っていた。


「よかった…!どういうことなんですかこのパネル触っただけでこんなことになるんですか?!」


 蒼士が手を離したことによってか水は止まりパネルは元のぼやけた鏡のような姿に戻っているが床は水浸しになっている。


「いや、水は水道につないだ時しかでないはずだ、触れただけで起動するなど普通はあり得ない…この赤子の能力が水なんじゃないか?」

「…蒼士くんが水の魔法使い?」


 桜花はパネルに手を触れ様子を見ているが先ほどのようなことはおこらずパネルはうんともすんとも言わない。


「まだ赤子だから能力適正検査はしていないだろうが…相当高い能力を秘めていなければパネルが暴走するようなことは無いと佐々木は言っていたぞ。」

「…相当高い能力…(異世界転移ものあるあるですね!!神様からの贈り物ですよね…よりにもよって蒼士くんに!…あ、いや、もしかして蒼士くんが主人公枠なのかな?じゃなくてこんな小さいころから水魔法使い放題なのって大丈夫なのかな…うっかりおぼれたりしないかな…)」


 蒼士のことをじっと見据える桜花に対し、当の本人は桜花にもにこやかに笑みを浮かべている。


「とりあえず部屋をなんとかせねばな…私が部屋を乾かしているうちにせっかくだから兄弟そろって適性検査をしてもらってきたらどうだ?佐々木に連絡をしといてやろう。」


 そんな蒼士に困ったようにへたくそな笑みを返してから水浸しになった部屋を一瞥し、桜花はそういった。


「へ?」


 返答する間もないうちにパネルに手を置き「3-A鈴木だ、いまいるか?」などと尋ね、すぐに「騎士君?どったの?」と可愛らしい女性の声が帰ってくる。


「適性検査を受けられそうな赤子が二人いるんだが今からその母親と行かせてもいいか?」

「おおぉ!大歓迎だよ!待ってる!」


 とんとん拍子で話は決まり口を挟む隙も無い、そもそも二人を抱き上げている時点で体は動けない。


「ということだ、2-Iは下の階の左側のピンクの扉の部屋だから間違うこともないだろう、先に行っておいてくれ。」

「わ、(私に決定権は…ま、まぁいいんですけど…ぜひ魔法について教えてもらいたいですし。)わかりました。」


 急遽決まったことにカバンと蒼士をベビーカーに乗せびしゃびしゃの部屋を後にする。


 外にでて言われた通り階段を下りピンクの両開きの扉の前にたどり着くまで誰とすれ違うこともなかった。


(色がパッションピンクじゃなければ病院とかの手術室の扉っぽいんだけどなぁ)


 この世界のマナーがわからずとりあえず扉を3度たたいてみる。


「あきゃっ!」

「蒼士くんしーよ。」

「…きゃ?」


 なぜかテンションがまだ高い蒼士にあきれながら待っていると急に扉が思い切り開き5歳児くらいの少女が現れた。


「いらっしゃい!騎士くんの紹介の子だよねっ!ささっ入って入って!!」


 ふわふわとした薄いピンクのドレスにこげ茶色のゆるやかな内巻きのボブ、見た目通り幼い顔立ちだがどこか纏う雰囲気は子供らしさのかけらも見当たらない。


「初めまして、私矢代 詞葉って言います!お邪魔します。」

「やあやあ矢代くんよろしくだよ、そのへんすわって~」


 自己紹介をしながら中に入っていく、中にはたくさん木製の机があり謎めいた鉱石や瓶?のようなものに入った液体がたくさん置いてありいかにも学者らしい作りになっている。


「その辺ですか。」


 足の踏み場も無いように見えるが座っても良いとのことなのでベビーカーは入口に置いて、蒼士は座らせたままその横に腰を下ろす。


「そんな入口じゃなくてもいいのにー」


 少女と呼ぶより幼児な彼女は喋りながらも荷物がひしめく机の下にもぐって何かを探しているようで、こちらを見てはいないが、ものの数秒で目当ての物が見つかったのか何か手にもってこちらに戻ってきた。


「適性検査ってことだけどその前に私の偉大な発明であるスマホを使って魔法力の測定をさせてねー」


 彼女が持っていたのは誰もが見たことのある銀板のような手のひらサイズの機械、そうスマートフォンに限りなく類似していた。彼女はそれを私に向かってかざし透かすように全身を眺めている。

詳しいことを訪ねるにも彼女の小さな顔はスマホ(らしい)で隠れて見えない為黙って様子を伺う。

 幼児は唸りながらスマホを見つめていたがしばらくするといぶかしんだ顔をしてスマホを下ろしこちらを見る。そのまま何も言わず座らせたままの蒼士を見てまた目を見開いた。


「矢代くん何者?その子たちは魔人なの?」


 一息ついてから彼女は真剣な眼差しでこちらをにらんでそういった。


(まさか!!チート補正かかってるんですか私たち!?やっぱり蒼士くんは勇者になるんですか?!)


 期待半分恐怖半分で相手の出方を見ながら小さく首を横に振る



(でも魔人ってやっぱり魔族とか敵とかになると問題だよね、人間ではあると伝えておこう、勇者っていう職業があるのかもわからないし。)


「なら理性があると?赤ちゃんじゃわからないし自分の子どもだとそう言いたいのもわかるけど、あきらかにその子達は魔法力量基準値の3倍以上を有してる。それにあなた自身も2倍程度の魔法力があるようだし…一体どうしてそんな状態で普通にすごせているのかわからない。」

「差し支えなければ魔法力が多すぎるとどうなるとか教えてもらえたりしませんか?」


 異世界チート系だったのか、と妙に納得しながらやんわりと尋ねると彼女は表情を柔らかくし頷いてなにやら緑色のパネルを取り出してそこに白いペン(?)で丸を描いた。


「魔法力については学業所で教えてもらってる?」


 首を横に振る


「ならそこから説明しなきゃいけないね!。」


 彼女はそこから絵と言葉で細かく時間を掛けて説明してくれた。かなりわかりずらく基本からして理解できていなかったために相当時間がかかってしまったので割愛して改めてまとめるとこうである。


1、魔法力―この世界の生きている存在がかならず持っているもの。生命力や体力、筋力等もどうやらこれに含まれているらしい、ややこしい。


2、生まれた時に魔法力の基準値は決まっておりその魔法力を使ったり回復することで人は生活をしている。

 例:全力疾走して疲れたら立ち止まって休む、仕事して疲れたら寝て回復するような感じとのこと


3、魔法力が高すぎると自我で魔法力が保てなくなり理性を失い攻撃的な存在になってしまう。

それが獣でおきるとその生き物を魔獣と呼び討伐対象になり、人で起きると魔人と呼び捕縛対象になる。


4、魔人は捕縛し魔法力を一定量まで下げることで時折元に戻ることもあるが可能性は低く、その前に魔法力を失って死することの方が多い、そして、生まれつき魔人の者は人を憎んでしまう性を持ち死するまで普通の人間になることはない。


5、文明発祥の地であるダンジョンの付近はその場所から魔法力を高める磁場のようなものがでている為長くいると魔法力が高まりやすい。(これによりダンジョン探索者が途中で魔人化し捕縛されることがよくある)←これのせいで私の魔法力が高まっているとの見解だった。


上記が手に入った情報から導かれたこととしてメモに記しておいた。


「どう?なんとなくわかったかな?…それで、これを聞いてもなお、矢代くんは子ども達は魔人じゃないと思う?生まれつきこれほど魔法力が高ければ大きくなってからだと捕縛できないほどの魔人になってしまうかもしれないんだよ?」

「それはつまり二人を今から捕縛施設とやらに入れろってことですよね?」

「そうなるね。」


 彼女は静かにうなずいた、それほどこちらの話はしていないが、彼女はどうやら親子の絆の深さをよく知っているようで無理に行動に移してくることは無く、ただこちらの出方を見ているように感じられた。


「そういわれて『はい、お願いします』っていうような人いました?」

「いないね」

「ですよね、私もそう思います。」


 例え二人が魔人化しようとなんだろうと二人の命を預かっているのは自分であり、この世界の人間でない二人がこの世界のルール通りの運命をたどるかはわからない。


(捕まるのなら私も一緒、二人に何かあったら帰れないし離れ離れになっている時に帰れちゃったらそれこそ目も当てられない。)


「佐々木さんでしたっけ。」

「名乗ってなかったっけ、佐々木 萌果が私の名前だよ。」


 お姫様であるといわれても違和感を抱かないような彼女の名前も和名であることに最早驚きもせず記憶に残す


「異世界ってあると思いますか?」


 ようやく出会えたまともに話を聞いてくれそうな人についにこの質問をした。


「別の空間ってことかな?あるんじゃない?まだ私は見たことないけど。」


 突然の話題変更にも関わらず佐々木は真面目に答えを返してくれたことに心の中で感動しながら質問を続ける。


「なら、私たちが別の世界から来たって言って…信じてもらえますか?」


…☆…

ご拝読ありがとうございます

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